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石田ゆり子さん、山田あかね監督らが登壇 映画「犬と戦争 私がウクライナで見たこと」トークイベント

ウクライナで戦火に巻き込まれた犬や、その小さな命を救う人々を追ったドキュメンタリー映画「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」の上映が2月21日から始まった。劇場公開を記念し、本作の監督を務めた山田あかねさん、俳優の石田ゆり子さん、弁護士の四宮隆史さんによるトークイベントを開催。イベントの模様とともに、映画の見どころ、保護犬・保護猫の支援活動「ハナコプロジェクト」の取り組みについて紹介する。

「祈り」のような映画

犬と戦争

新宿ピカデリーで開催されたトークイベントには、映像作家である山田あかねさん、俳優の石田ゆり子さん、弁護士の四宮隆史さんが登壇。3人とも飼い主のいない犬と猫の医療費を支援する「ハナコプロジェクト」に携わっており、山田さんが代表理事、石田さんと四宮さんが理事を務めている。今回のイベントでは四宮さんが司会進行をし、それぞれが映画への想いや、戦争が動物たちに及ぼす影響について語り合った。

自身も動物愛好家で、山田さんのかつての作品ではナレーションを担当するなど、親交も深い石田さんは、最初は「この映画を見るのが怖かった」と明かした。ウクライナで撮影された映像のリアルさに圧倒されるのではないかと恐れていたという。

しかし、「見る前と見た後では、世界の見え方がまったく変わった」と述べ、「人間の醜さと美しさが同居する作品」と表現した。また、戦争の中で人々が動物たちと共に生き、「動物たちは人間の心の一番柔らかいところを支えてくれていた」と語り、胸がいっぱいになったと涙ぐむ場面もあった。

2022年2月から始まったウクライナ侵攻の現場へ赴き取材をしてきた山田さんは、本作を制作した経緯について語った。「戦争が始まった直後、爆撃の中で犬を抱えて避難する人の映像を見たとき、これは記録しなければならないと強く思った」と振り返る。実際に現地へ足を運び、取材を重ねるうちに、戦火の中で動物を守ろうと奮闘する人々の存在に感銘を受けたという。「多くの人が、人間の命を優先するべきだと考えるが、戦場では動物たちもまた、人々の心の支えになっていた」と強調した。

犬と戦争

また、山田さんは、映画を見終えた石田さんが「祈りのような映画だ」と言ったのが印象的だったと続ける。

「私は反戦の意図を込め、最後に『レジスタンス』という言葉を使いました。戦争の中で犬や猫の存在は軽視されがちですが、彼らの犠牲を伝えることが重要だと考えています。映画の主題歌『犬と戦争 〜平和への祈り〜』を歌ったのはウクライナのナターシャ・グジー。そのタイトル通り、祈りの気持ちが込められています。亡くなった命を取り戻すことはできませんが、その想いを伝え、忘れないでほしい。犬猫たちのいるシェルターで、『あなたたちの悲しみを遠い国の私が伝えるから、忘れないよ』と誓いました。その思いがこの作品の原動力です」

動物のために行動を起こす人々

本作には、多くの心に残るシーンがある。山田さんが特に印象に残っていると語ったのは、ごく普通の20代の女性、オレーナとアナスタシアとの出会いだ。彼女たちは戦争が始まる前、客室乗務員と会社員として働きながら、週に何度か首都キーウ近郊のボロディアンカのシェルターでボランティア活動を行っていた。

しかし、戦争の勃発により、キーウ市内とシェルターのあるボロディアンカをつなぐ橋が爆破され、さらにロシア軍がシェルターの入り口に検問所を設置したことで状況は一変。さまざまな困難が重なった中、シェルターにいた485匹の犬のうち222匹の命が失われるという悲劇が起こった。

その現実を目の当たりにしたオレーナとアナスタシアは、「私たちがやらなければ、誰が助けるの?」と行動を起こし、数々の犬や猫を救い続けている。「普通の人たちが、動物を守るためにこれほどの行動を起こせるのだということに胸を打たれた」と山田さんは語った。

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©「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」

また、石田さんが特に印象的だったと語るのは、元イギリス軍兵士であり、退役後に戦地で動物の救出活動を行っているトムのエピソードだ。

トムは過去の戦争による影響でPTSDを抱えていたが、1匹の犬「ジプシー」を引き取ったことで笑顔を取り戻した。その経験をきっかけに、今度は戦場から帰還した兵士たちをドッグセラピーを通じて支援する活動を開始。さらに、今回のウクライナ戦争でも、激戦区にいち早く入り、動物たちの救助に尽力している。「戦うことから、救う側になった一人」として映画のポスターのモデルにもなったトムは、「自分にしかできないことだから」と、今はガザへ行き犬や猫たちを救うために奮闘しているという。

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© BREAKING THE CHAINS

NHKの番組でイギリスにて実際に彼を取材した石田さんは、「トムの目は常に悲しみをこらえていたけれど、『ジプシー』の話をするときだけは、心からの笑顔を見せたんです。トムの気持ちがわかるだけに、その姿に胸が熱くなりました」と言う。そして「動物たちは偉大だと実感した」と振り返った。

現在も、ウクライナではボランティア団体が懸命に救護活動を行っているものの、戦争の長期化に伴い、支援が減少しているのが現状だ。「戦争が始まって3年が経ち、人間への支援さえも厳しくなっている。そんな状況では、動物たちにまで手が回らないことが多い」と山田さんは現地の厳しい状況を説明する。

「それでも、動物たちに生きてほしいと願い、助け続けている人々がいる。それが、この映画で伝えたかったことのひとつ」と話した。

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©「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」

ハナコプロジェクトの取り組み

本イベントでは、登壇者3人が関わる「ハナコプロジェクト」についても紹介された。このプロジェクトは、飼い主のいない犬や猫の医療費を支援する団体である。石田さんと暮らす動物たちの様子をつづった著書『ハニオ日記』の印税をもとに設立され、これまでの約3年間で4000匹以上の動物たちに医療を提供してきた。

「シェルターを運営するのは難しい。でも何かできることはないかと考え、医療費の支援にたどり着いた」と山田さんは語る。「治療が必要な動物たちに適切な医療を受けさせることができれば、多くの命を救える」とし、石田さんも「本当に始めてよかった」と述べた。

また、2024年の能登半島地震の際には、被災した犬猫の医療費をハナコプロジェクトで負担できたと具体的な活動内容を紹介。四宮さんも「このプロジェクトは、石田さんと山田さんの行動力と情熱によって動いている」と言い、今後も支援を続ける意義を強調した。

石田ゆり子

希望のドキュメンタリー

映画「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」は、戦場にいる犬たちと、戦争の中でも小さな命を救う人々を追った希望のドキュメンタリーだ。

石田さんは「私と同じように映画を見るのをためらっている方もいるかもしれませんが、最後まで見ることで、必ず何か心に残るものがあるはずです。ぜひ多くの人に見ていただき、お知り合いの方にもこの映画を届けてほしいです」と語る。

山田さんは「戦争がもたらす悲しみと、それでもなお動物を守ろうとする人々の姿を知ることで、多くの方の意識が変わるのではないか。動物の命を守ることは、結局は人間の心を守ることにもつながる」と述べ、「怖いと感じるかもしれないが、ぜひ見てほしい」と呼びかけた。

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©「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」

text: Tomoko Komiyama photo: Tomoko Hagimoto

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関連情報
  • 「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」
    2025年2月21日(金)より全国ロードショー
    監督・プロデューサー:山田あかね
    ナレーション:東出昌大
    音楽:渡邊崇
    配給:スターサンズ
    製作:『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』製作委員会
    公式サイト:https://inu-sensou.jp/ ©『犬と戦争』製作委員会
    ハナコプロジェクト https://hana-pro.com/

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