デミ・ムーア主演のホラー映画にみる、ミレニアル世代の「エイジング」の捉え方
映画『The Substance』LAプレミアでのマーガレット・クアリーとデミ・ムーア Photo: Jon Kopaloff / Getty Images
「ボディボジティブ」という価値観が浸透している一方、SNSに蔓延(まんえん)する“有害な美の基準”を追い求める人も多いというミレニアム世代は、加齢をどのように受け止めているのか。62歳の俳優デミ・ムーアが「美と若さ」に執着する元ハリウッドスターを演じたボディホラー映画『The Substance(原題)』が世界中で話題を呼ぶなか、豪版『マリ・クレール』が現代の若者たちの、美との向き合い方を考察した。マリ・クレール インターナショナルのオーストラリア版デジタル記事より、映画のネタバレありでお届け。
ミレニアル世代の女性たちの「美への偏執症」が増えていることについて、映画『The Substance』が正しく描いている点
ボディポジティブ世代は加齢とどう向き合っているのか?
※この記事には『The Substance』のネタバレが含まれている。
コラリー・ファルジャ監督のすさまじいボディホラー映画『The Substance』が現在、あらゆるところで、女性と加齢に対する私たちの先入観(あるいは先入観のなさ)について、多くの議論を巻き起こしている。
この映画でデミ・ムーアが演じる、かつてのハリウッドのトップスター、エリザベス・スパークルは自身の誕生日に昼間のエアロビクス番組をクビになり、加齢に対するハリウッドの残酷な現実を突きつけられる。その後間もなく、一連の不運な出来事がきっかけとなり、エリザベスは「ザ・サブスタンス」と呼ばれる霊薬と偶然出会う。この薬を飲むと、7日間だけ若かりし頃の自分(マーガレット・クアリーが演じる「スー」)をこの世に送り出すことができるのだ。
デミ・ムーア演じるエリザベス・スパークルについては多くのことが描かれており、彼女のキャラクターの血なまぐさい旅路は、2024年における高齢女性の老化と年齢差別に関する経験を物語っている。しかし、自分自身の危機に直面している、マーガレット・クアリーが演じる29歳の「スー」についてはあまり語られていない。
「スー」が若さと美しさを楽しむことができる時間は、極端に短い。7日ごとに、彼女はエリザベスと交代しなければならず、その間、男性モデルとのセックスやパーティー、大金を稼ぎ、脚光を浴びていることを実感するといった若さの特権を諦めなければならない。そして「スー」自身もエリザベスと同じように、誰かが決めた時計の針に合わせて働いていることに気づく。「交代」を恐れる彼女は、エリザベスを嫌悪し、若さを手にしている間のチャンスを逃さないようにとますます不安になる。そして、彼女は「若い」時間帯を引き延ばすために時間を借りるという危険なゲームに走るのだ。
ミレニアル世代は、加齢についてどう感じているのか?
マーガレット・クアリーはこの10月に30歳になり、25歳から40歳までを指す「ミレニアル世代」に確実に属している。彼女は「スー」役を演じる上で感じたプレッシャーについて率直に語っている。
元バレリーナでシャネル・ガールの彼女は、完璧にカーヴィーな小柄で引き締まった、インスタ映えするビキニボディを手に入れるために、何か月もの過酷なトレーニングが必要だったと、英紙『The Sunday Times』のインタビューで認めた。そんな彼女の努力にもかかわらず、最終的には「ジェシカ・ラビット」(アニメ映画『ロジャー・ラビット』に登場するキャラクター)のような究極のボディを手に入れるために、人工乳房が必要だったという。映画で実年齢よりも若い役を演じている、完璧なマーガレット・クオリーでさえ、「スー」を演じるには完璧ではなかったのだ。
「スー」とその役を演じるマーガレット・クオリーの苦境を考えると、若い女性たちの加齢に関する経験について、この映画が何を描いているのかを問う価値はある。
20代から30代半ばの若いミレニアル世代は、2000年代半ばの有害な美の基準とともに育ったが、同時に美しさ、加齢、ボディイメージにまつわるポジティブなレトリックに満ちたSNS環境にも身を置いている。しかしこうしたレトリックは、私たちが加齢という現実を受け入れるのに十分なものだろうか?
美容医療の専門家は、ミレニアル世代の患者についてどう考えているのか?
9月、英誌『Dazed』は「目立たない」美容施術の増加について取り上げた。きっかけはクリスティーナ・アギレラが最近TikTokなどに登場し、話題を呼んだことだった。視聴者たちは、43歳のアギレラがとても「自然に」年齢を感じさせないほど若々しく見えるため、「2002年に戻ったような気分だ」とコメントした。
『Dazed』は、Prem Tripathi(プレム・トリパシ)医師の「来年、人々が自分の顔に施す美容整形は、あなたを驚かせるでしょう」という発言を引用し、目立った介入なしで、患者を完璧な状態にするであろう、美容医療の進歩をほのめかしている。
『The Substance』では、シリコンのように滑らかな「スー」の身体が数多く紹介されている。彼女の太ももやお尻には、セルライトがまったく見られない。クリスティーナ・アギレラの動画でも、彼女のボディは明らかに加工されているようだ。
The Manse Clinics(ザ・マンス・クリニック)のオーナーであり創設者であるNaomi McCullum(ナオミ・マカラム)博士も、目に見えない施術と滑らかなボディは「人々の頭を混乱させる」ことに同意している。彼女は、26歳を超えると誰でも加齢の兆候が現れ始めると指摘している。また、米ミステリードラマ『ビッグ・リトル・ライズ』やリアリティ番組『カーダシアン家のセレブな日常』のような番組を例に挙げ、スクリーンで見るフィルター処理された映像は、SNSよりも、完全に目立たない「施術」に対する顧客の期待を高める可能性があると述べている。
「私は美容関係者であることが嫌いです。なぜなら、それが期待を非現実的なものにするからです」。ミレニアル世代は彼女の顧客の大部分を占めており、彼女たちは不自然に見えることを恐れているという。「顔の形を変えるようなものよりも、肌質を改善する治療法を選んでいます」と説明する。彼女は、一般的に患者は28歳頃から加齢について話し始め、38歳頃にはより切実な懸念を表明すると話している。「一般的に若年層の患者は、老化を否定する時期があります」と彼女は説明する。
Complete Skin Specialists(コンプリート・スキン・スペシャリスト)の皮膚科医で美容施術医のCara McDonald(カーラ・マクドナルド)医師は、これはミレニアル世代の顧客を診察する中で見てきたことと一致しているという。
彼女の見解では、ミレニアル世代は整形手術を受けたように見られたくないそうだ。「私はこの年代の人たちのフィラー溶解に多くの時間を費やしています」と彼女は指摘する。その代わり、30代半ばの女性たちは顔の形を変えるよりも、「プレジュビネーション(プレ若返り)」、つまりスキンブースター(肌質改善の治療)や若さを維持するために最高のチャンスとなる完璧なバランスを整えるスキンケア療法に重点を置いているようだという。
「人々は、加齢を『受け入れるつもり』で、自分自身をケアしながら、それを遅らせようとし、自然体でいることを試みます」と彼女は語る。「そして30代になって、実際に加齢の兆候が見え始めると、『もう最悪』という感じになります」。実際に加齢の兆候が現れた最初の段階では、一般的に「人々は少しおびえます。そして、何らかの対策を講じようとし始めます」と彼女は話している。
彼女によると、ミレニアル世代の顧客は修正を求めることは少なく、代わりに「時間を止める」というような表現を使うことが多いそうだ。「通常、患者は必ずしも物事を変えたり、修正したりしたいわけではなく、『これを防ぐにはどうすればいいですか?』『これを止めるにはどうすればいいですか?』『これを遅らせるにはどうすればいいですか?』と尋ねます」
マクドナルド医師が目にした大きな変化は、ミレニアル世代の間で「取り残されることへの恐怖」といった感覚が見られることだ。マクドナルド医師は、プレム・トリパシ医師が話したようなTikTokユーザーが共有する「検出不可能な」治療法をほのめかすSNSが、可能な治療や手術についての患者の認識を高めていると話す。彼女は、それが「陰険」と表現されるような被害妄想の状態を作り出していると感じている。
「彼女たちは、同世代の人たちが何をしているかを知っており、友人や同僚が秘密の増強剤や万能薬を摂取して、ひそかにアンチエイジングの競争に勝っているのではないかと心配しているのです」
「彼女たちは『みんなは老化のスピードを遅らせて、40歳になっても素晴らしい外見を保っている。もし自分もみんなと同じことをしなければ、取り残されてしまう』と考えています。彼女たちが心配しているのは、自分の顔に何が現れるかということではなく、他の人々が、40歳になっても若々しく見えるようにと何かの治療を受けているのに、自分は老けて見えるようになるのではないかという恐れです」。これは治療に来る女性の、パートナーである男性にも当てはまるという。
「彼らは彼女が何を受けようとしているかを知っており、40代になったときに彼女の父親のような外見にはなりたくないと思っています。興味深いことですね」。マクドナルド医師は取り残されることへの不安と「気づかれない」美容治療への認識が組み合わさったものを「非常に陰湿」だと表現している。「文字通り、加齢への恐怖があります」と語り、こう続けた。「友人たちが30代で顔にお金をかけているため、自分だけ取り残されてしまうのではないかという恐怖です」