石川県の山代温泉にある「界 加賀」は、前身の老舗旅館「白銀屋(しろがねや)」の歴史を受け継ぎ、国の有形文化財である伝統建築棟を有する温泉旅館。2024年3月には、「九谷焼」や「山中塗」などの器を用いて、夕食後に北陸のお酒やおつまみを楽しめる「べんがらラウンジ」がオープンした。また温泉旅館として初めて、スタッフ自ら器の劣化や破損を金継ぎで修復する「金継ぎ工房」を設置。修復作業に参加できる体験プログラム「金継ぎいろは」の利用者は、工房オープンから約10か月で1800人を超える人気ぶりだ。
北大路魯山人をはじめ、多くの文化人に愛されてきた山代温泉。その文化や歩みに思いをはせ、ぜいたくなひとときを味わってほしいという願いのもと、紅殻格子(べんがらごうし)が印象的な伝統建築棟に「べんがらラウンジ」が新設された。

紅殻格子とは、細かな木を縦横に組み合わせ、中からは見えても外からは容易に見えない特殊な構造。防腐も兼ねた着色に、酸化鉄を成分とする赤色顔料である紅殻が使われている。

本旅館は、北大路魯山人の「器は料理の着物」という言葉にならい、器を宝物として大切に扱っている。ラウンジ利用者は、約100種類以上ある器の展示スペースからお気に入りの1枚を選び、その器を使用して、お酒とおつまみのセットを楽しむことができる。

お酒は、日本酒3種、ウイスキー、焼酎、ジン、梅酒の中から1種類をチョイス。おつまみは、香の物、ナッツ盛り合わせ、甘味から一つ選ぶことができ、北陸の食材を組み合わせたピンチョスも付いた3点セットだ。

内装は、外観と同じ紅殻色の壁を基調とし、家具の色とあわせて、赤、紺⻘、緑、⻩、紫の「九谷五彩」を表現。座席の目の前に配された紅殻格子越しには、開湯1300年の歴史を持つ山代温泉の共同浴場を中心とした街並みである「湯の曲輪(がわ)」を望むことができる。

また、座席ごとに水引のカーテンを下げることで、プライベートな空間を演出。1日4組限定の特等席で過ごす時間は、特別な思い出になるはずだ。

「界 加賀」は、日本で初めて温泉旅館内に「金継ぎ工房」を構えたことで知られる。金継ぎとは、漆を使い、壊れた器を修理する日本独自の伝統技法のこと。

本旅館では、2015年の開業当初より「九谷焼」や「山中塗」などの器を使用しているが、どうしても劣化や破損が生じてしまう。それらの器を破棄するのはもったいないと感じた元蒔絵師のスタッフは、自分たちの手で大切な器を守っていくことを目的に、金継ぎの技術を他のスタッフへと伝授。

宿泊者を対象とした金継ぎを解説する「金継ぎ語り」や、金継ぎでアクセサリーを作るワークショップは好評を博し、より本格的に金継ぎの活動に取り組んでいくため、2023年4月に「金継ぎ工房」がオープンした。

工房では、天然漆と自然の材料を用いた本格的な技法で、スタッフ自らが修復作業を行うほか、宿泊者が修復作業の見学、作業への参加ができる体験プログラム「金継ぎいろは」をスタート。器の新たな美しさや、モノを大切にすることの良さを感じられる。

「べんがらラウンジ」の利用や「金継ぎいろは」の体験がセットになった期間限定の滞在プラン「加賀の文化づくしプラン」の用意もあるので、どちらも楽しみたい人にオススメ。