めまぐるしいデザイナー交代劇を経て、モード界に新たなクリエイティブの風が吹き込むなか、2026-27年秋冬シーズンに向けて、現代女性の多面的なフェミニニティを讃えるワードローブが提案されている。ファッションの新潮流を映す6つのトレンドをピックアップ。
パーソナルな価値を祝福する新時代のエレガンス
数シーズンに及ぶ大規模なデザイナーシャッフルによって、ファッションシーンは新たなフェーズへと突入。主要ブランドの多くが新体制を始動し、それぞれの未来図を描くなかで、共通のキーワードとして浮上しているのが、「アイデンティティの再構築」である。自らのルーツやヘリテージを見つめ直し、それを揺るぎない軸としながら現代のリアルクローズへと昇華させる姿勢が、多彩なアプローチで具現化されている。
普遍的なテーラリングへの回帰はその象徴であり、大胆にメリハリを利かせたフォルムやペプラムなど、プロポーションに変化をもたせることで、オーセンティックな品格はそのまま、はっとするほど新鮮な表情に。凜とした緊張感と軽やかな躍動感が共存する仕上がりは、現代女性の多面的な魅力と力強く響き合う。
一方で、ファッションのエモーショナルな喚起力が強く志向されているのも今季の大きな特徴。デジタル化や効率主義が加速化する時代にあって、人の手のぬくもりや物語性を宿す装いが、特別な輝きを放っている。ヴィンテージ調の柄や風合い、手の込んだディテールなど、時の積み重なりとともに育まれる愛着やパーソナルな記憶を呼び覚ますようなデザインに注目。各ブランドに培われた固有のクラフトマンシップが、時間や手仕事が服に刻む価値に説得力をもたらす。
さらに、不確実な情勢下で「安心感」や「確かなリアル」を求める心理を反映し、情緒的な要素と並んで、親密な身体感覚を生むテクスチャーやシルエットにフォーカスしたデザインも際立つ。ファーを筆頭に、目にも肌にも暖かな素材がボディをふんわりと心地よく包む。空気をはらんだパフィなボリューム感も鍵だ。
他方で、ミニマリズムの潮流とシルエット再考の動きが合わさり、ボディコンシャスなデザインや大胆な肌見せも台頭。センシュアルとヘルシーを絶妙なさじ加減で同時に描き出し、ありのままの身体美を個性として祝福するかのようだ。
各ブランドが自らのレガシーを見つめ、現代のライフスタイルに寄り添うワードローブを多彩に再定義した今季、時間に育まれたクラシックの価値を宿しつつ、纏う人の多様なパーソナリティと共鳴する服が、現代女性の多様なアイデンティティを優しくも力強く讃えている。
Proportion Play
自由な遊びから生まれるダイナミックなプロポーション緩急の利いた新しいプロポーションによって、クラシックを刷新。テーラードアイテムを中心に、強調されたラウンドショルダーや絞り込んだウエストラインが、シャープな構築性と曲線美のコントラストを織りなす。華やかさと動きを演出するペプラムも旬のディテールとして注目だ。また、1920年代を彷彿とさせるドロップウエストは、極端な低重心で再解釈されて登場。計算されたアンバランスさが今季の美学を伝える。
バレンシアガ

シャネル
©CHANELディオール

Embrace Nostalgia
服に刻まれた時間や人の手の「痕跡」とストーリーを纏う装う人のアイデンティティを映すストーリー性のある服が希求されるなかで、時代を超えて愛されてきたデザインや手仕事の価値が浮上。経年変化を模した加工、伝統的なチェック柄やアンティーク調の花柄、素朴なグラニーニット、フォークロアのクラフトを通じて、時間の蓄積やそこから生まれる愛着がデザインに落とし込まれている。色やシルエットなどどこか一カ所をクリーンに仕上げることで、モダンな日常着へと昇華。
クロエ

ルイ・ヴィトン
©Louis Vuittonドリス ヴァン ノッテン
GoRunway