悲しみを急いで乗り越えなくていい。 映画『エレノアってグレイト。』が教えてくれること

Culture

2026.05.26

悲しみを急いで乗り越えなくていい。 映画『エレノアってグレイト。』が教えてくれること
スカーレット・ヨハンソンが初めてメガホンを握った映画『エレノアってグレイト。』(6月12日公開)。94歳でニューヨークへ渡った女性を主人公に、喪失との向き合い方を描いた作品だ。劇中の「悲しみの中で人は利己的になる」「悲しみをスルーしてはいけない」というセリフが象徴するように、本作が映し出すのは、大切な人を失ったあとに訪れる“ぽっかりと空いた時間”だ。そんなとき、無理に前向きにならなくてもいい――。包み込むようなやさしさが、全編に流れている。

満ち足りた二人暮らしが、あっけなく終わった

© 2025 ELEANOR INVISIBLE FILM, LLC AND TRISTAR PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.© 2025 ELEANOR INVISIBLE FILM, LLC AND TRISTAR PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

エレノア(ジューン・スキッブ)とベッシー(リタ・ゾーハー)の親友歴は、半世紀超。その間に子どもを育て上げ、夫を見送り、それぞれの人生の荒波を乗り越えてきた。そうして一人になった彼女たちは、フロリダで共同生活を送っている。とりとめのないおしゃべりで笑い転げ、無愛想なスーパーマーケットの店員には喝を入れる。劇的なドラマはなくても、二人でいれば楽しかった。ところがある金曜日、ベッシーが急逝。穏やかな日常は突然幕を閉じる。

友達づくりのお茶会で人生が動き出す

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ベッシーがいない寂しさに耐えられなくなったエレノアは、娘のリサ(ジェシカ・ヘクト)と孫のいるNYへ引っ越す。3人で仲睦まじい日々を送れるかと思いきや、家族は各々の生活に追われ、ここでもひとりぼっちだった。そんな母を見かねたリサは、同年代のユダヤ人が集まるJCC(ユダヤ・コミュニティ・センター)で開かれるお茶会へ行くよう促す。施設の廊下で知り合った女性に勧められるままに輪に加わったエレノアだったが、そこは、ホロコースト生存者が体験を語り合う自助グループだった。後に引けなくなった彼女は、とっさにある辛い記憶を話し始める。しかしそれは、自身が経験したできごとではなく、親友のベッシーがエレノアだけに打ち明けた物語だった。

孤独にさいなまれる学生・ニナとの出会い

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エレノアの臨場感あふれる体験談に、その場にいた人々は涙を流し、温かく迎え入れる。そんな彼女に強く惹かれたのは、ジャーナリスト志望の学生ニナ(エリン・ケリーマン)だ。大学の課題として、半生を取材させてほしいと願い出るも、エレノアは拒否。それでもめげずに距離を縮めようとする。彼女もまた、最愛の母を失ったばかりだった。疎外感を抱える二人は、少しずつ心を通わせていくのだが、エレノアはニナに対し、「ホロコースト生存者」として振る舞い続ける。

悲しみも味わいながら生きていく

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傷心を紛らわすための嘘が思わぬ方向に進み、戸惑いを隠せないエレノア。彼女のしたことは、決して褒められたものではない。だが、人は押しつぶされそうな感情のなかで、突拍子もない行動を取ることがある。そして、そこで出会えたものもまた、“本物”だった。何歳になっても揺れる人間の心と、不完全さを愛おしくユーモラスに描いた本作。「人は悲しみのなかで利己的になる。でも、それはわるいことではない」。この言葉は、きっと誰かの支えになる。

text: Mako Matsuoka 


映画エレノアってグレイト。
監督:スカーレット・ヨハンソン 脚本:トリー・ケイメン
出演:ジューン・スキッブ、エリン・ケリーマン、ジェシカ・ヘクト、リタ・ゾーハー、キウェテル・イジョフォー
【2025年|アメリカ|ビスタ|カラー|98分】 配給:東映ビデオ
6月12日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開
https://eleanor2026.com/

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