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世界に3本だけ!真ちゅうの「モエ・エ・シャンドン」を制作した、ジュエリー職人カルル・マズロにインタビュー

──デザインの観点から、注目してほしいポイントは?

今回は彫刻のように、光り輝く金属のなかにシャンパンボトルを入れるような、非日常的なものを作りたかった。
ボトル全体は、モエ アンペリアルのゴールドの輝きを思わせる色合いで統一。これにより、「モエ・エ・シャンドン」のレッドシールの赤が引き立ちます。

一方、大小のメダリオンをダイナミックに配置することで、シャンパーニュのやわらかい泡を表現しました。側面のアシンメトリーな2枚の扉は、舞台の幕のように開き、芸術作品のようにボトルをのぞき込めるように仕立てています。

「モエ・エ・シャンドン」のシャンパンが持つ価値、すなわち発泡性、軽さ、輝き、やわらかさ、生々しさ、そしてミネラル。それらを伝える新しいテクスチャーを想像し制作しました。

──先ほど、「移ろい」というキーワードが出てきました。とても日本的な言葉だと思います。カルルさんは以前、日本に滞在されていましたが、そのときの体験がクリエイティブに影響をもたらしましたか?

日本には、5年前に半年ほど滞在していました。俳句、書道、友禅、漆塗りなど、様々な日本文化を学びましたよ。造詣の深い素晴らしい方々との交流のなかで、「わびさび」、「移ろい」といった、日本ならではの精神文化をいろいろな形で学ぶことができました。作品に作るときの心構えとして、今も影響を受けています。

物事にじっくりと時間をかけて向き合い、完璧に仕上げるという姿勢を学んだのも大きかったです。不完全さや移ろっていくものを受け入れるという考えも学びました。あるとき、ジュエリーを作っていたら、金の一部が欠けてしまいました。それを最初から作り直すのではなく、欠けた部分に合わせてデザインをして形にしたのです。

自分の予想を超えたところで、オリジナリティーのある宝飾品が誕生することを楽しめたんです。そんな具合に、日本での滞在経験で得た心構えが、私の作品の至るところに反映されています。

だから、今回、「モエ・エ・シャンドン」の作品を日本で展示・販売することは、私にとってとても意味のあることなのです。

──カルルさんにとって、アート作品とは?

私は、自分の創作を誰かが楽しんでくれたり感謝されたりするとうれしいという思いがあるから、作品を創作するとき、自分のバランスが保てます。一方、私の作品に出合った人が、作品を通してパワーを受け取り感謝してくれる。そんな作り手と受け手の感謝の行き来があるかどうかが、私にとっての、アート作品への思いであり、在り方です。

text:Seira Yoshimura、edit:Miyuki Kikuchi

お問い合わせ先

MHD モエ ヘネシー ディアジオ
公式サイト https://www.moet.com/ja-jp

Profile

カルル・マズロ

パリ在住の宝飾デザイナー。ジュエリー職人の父とピアニストの母の間に生まれ、クリエイティブな環境で育つ。卓越した専門技術を持つクラフトマン・ジュエラーであり、伝統的なジュエリー製作と斬新なテクニックをハイブリッドしたスタイルがトレードマーク。機械ではなく手を使った伝統的な技法が特徴。2021年にベッタンコート・シューラー賞「Talent d’Exception」部門、2020年にロータリークラブ賞「Artisanat d’Art」など、長年にわたって多くの賞を獲得している。

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