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エルメスでは一般職はエコノミー、職人はビジネスクラスで移動する

エルメス従業員の3分の1は職人

内覧会にはフランスから「エルメス・インターナショナル」のオリヴィエ・フルニエ エグゼクティブ・バイス・プレジデントが来日。我々取材陣に、今回の展覧会の趣旨、目的などを説明してくれたのですが、そこでなるほどと思った職人にまつわる話をお伝えしたいと思います。

「エルメス」の全従業員数は約18,000人。そのうち職人は約6,000人、なんと約3分の1が職人なのです。そして今回のように海外で展覧会が開催されるときは、一般職には飛行機のエコノミー席がわりあてられますが、職人はビジネスクラスで移動するのだそうです。

つまりいかに職人たちを大事にしているかということが、このエピソードからだけでもわかるというものです。

2023年春にフランスのルーヴィエに新しくオープン予定の革製品のアトリエ模型

「エルメス」が、いかに長く人々から支持され、その名声と価値を維持しながら、さらに高みを目指しているブランドであるか、その真髄を見た思いがしました。また展覧会で実際に働くその姿を見ることで、彼らの矜持、プライドもひしひしと感じられました。実際の作業を見せるというイベントで、職人たちはさらに腕を上げ、仕事に誇りを持つことになるのだろうと想像できたのです。

彼らはただ高い技術を持っているだけではなく、アーティスティックな部分でも非常に優れた能力を持っています。そんな職人たちが作り上げるからこそ、高い品質の、アート作品のような商品が生まれてくるのだということを改めて実感しました。

日本では、特に伝統工芸の世界では後継者不足が大きな問題になっています。もちろんフランスでも同様のことが問題になっています。またこれからの時代はAIが職人に取って代わるのではないかとも言われたりしています。しかしフランスのラグジュアリーファッション産業は国の経済の重要な部分を占めているので、何とか職人の持つ技術やアーティスティックな部分を継承していくために、いろいろな手を打ち始めています。職人を育てる学校の設立や、雇用の確保、雇用形態の改善などがそれです。「エルメス」はその先頭を走る企業の一つだと改めて思わされた展覧会でした。

2023年1月26日

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