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【界を唎く】温泉、伝統文化、そして日本海の育んだ食材。それらすべてを堪能できる「界 加賀」で心と身体を養生する

北陸の冬の味覚、ズワイガニを味わい尽くす

もっとも、冬場に北陸を訪れる醍醐味の一つは活ズワイガニを味わうことだろう。ズワイガニの漁期は11月から翌年3月にかけてで、その時でなければ水揚げされたばかりの活蟹を楽しめないからだ。そのために、全国各地、いや世界中の美食家が北陸を目指す。当然、「界 加賀」でも漁期に合わせて11月7日から翌年3月4日まで(年末年始を除く)、活ズワイガニをダイニングで楽しめる。

右下が「活蟹のしめ縄蒸し」。活蟹尽くしに写真を見ているだけでもよだれが……

例えば、「活蟹づくしのタグ付き蟹会席『極み』」は、蟹の刺し身から始まって活蟹雑炊まで、8品に活蟹を使った文字通りの「極み」のコース。その中でもハイライトが、「活蟹のしめ縄蒸し」だろう。産地や漁を行った船のタグが付いた大ぶりなズワイガニ1杯を丸ごと、塩水につけた縄で結わいて蒸し上げたダイナミックで贅沢な一品だ。古い文献に記されていた蟹の調理法をヒントにし、蟹に縄を巻き付けることで間接的に熱が伝わるため、よりジューシーに蒸し上がるのだという。そのユニークな調理法はかつて、ミシュランガイドでも称賛された。

北陸を愛した批評家の吉田健一は「金沢の蟹」と題したエッセーで、「海で取れるもので本当に旨いものは必ず海の匂いがする」と書いた。実際、「界 加賀」でいただいた会席は、甘く香ばしい蟹を食しているというより、日本海の滋味、そのものをいただいているような感覚。コースを食べ終えると、「海の匂い」にどっぷりと浸かっている気がする。

「器は着物」と唱えた美食家の魯山人がかつて白銀屋に長逗留していたこともあって、蟹を盛りつける大皿などは地元の九谷焼作家に依頼して特注。活蟹のシーズンが終わっても、ノドグロやアワビといった旬の食材を使った料理と器のマリアージュも楽しめる。空腹を満たし、命を繋ぐための食事というよりは、地元の食材が調理法によって皿の上で見せる異なる表情を、五感を駆使して唎き分ける文化体験の趣に近いのだ。

お問い合わせ先

蟹漁解禁期間限定 界の活蟹会席


■期間: ~2023年3月4日*除外日:年末年始
■料金: 活ずわい蟹会席48,000円〜(2名1室利用時1名あたり、税・サービス料込)
    活蟹づくしのタグ付き蟹会席61,000円〜(同上)
    ひとり蟹会席72,000円〜(1名1 室利用時1 名あたり、税・サービス料込)
■予約: 公式サイト(https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikaga/)より5日前までに要予約


界 加賀
■所在地: 〒922-0242 石川県加賀市山代温泉18-47
■電話: 050-3134-8092 (界予約センター)
■客室数: 48室・チェックイン15時チェックアウト12時
■アクセス: 【電車】JR加賀温泉駅より車で約10分/【車】北陸自動車道加賀ICより約15分
■料金: 1泊31,000円~(2名1室利用時1名あたり、サービス料込・税込、夕朝食付)
■URL: https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikaga/

Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。実は幼い頃、祖父母に連れられて白銀屋に泊まったことがある。どうして祖父母とだったのか? 理由は忘れてしまった。もう、半世紀以上前のこと。それでも当時、「温泉なんて、つまらない」とだだをこねた記憶が朧気にあり、夕食に出された蟹にもそれほど感動しなかった気がする。それが当時の祖父母に近い年齢になって、祖父母たちが逗留を楽しみにしていた心持ちが分かるようになった。実際、今回の滞在で温泉に癒やされ、活蟹に生気を与えられた。久方ぶりの加賀再訪で、加齢にもいくらか効用があることを実感することができた。

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