日本の旬が刺激する、正統派イタリアンの美しき開花【イル･リストランテ ルカ･ファンティン】

自然を慈しむ日本の美意識に共感し、食材と季節への尊敬をイタリア料理に昇華させる。生まれ故郷の伝統料理の精神を忘れない。そのために、決して譲らないポリシーがある。

「就任時から、イタリアで手に入らない食材は使いません。日本特有の食材の影響を強く受ければ、レストランの方向性を見失うことになりかねません。私が追求するのはイタリア料理で使われる日本産の素晴らしい素材です。

新しい食材を探して日本全国を駆け回るのも、イタリアンという制限の中でも無限に広がるクリエイティビティを求めてのこと。生産者や新しい食材に出会うことでインスピレーションを得ています。次はこんな一皿を創ってみたいと意欲が湧くのです」

これほどまでの情熱は、家族との思い出から来ていると語る。「伝統的な家庭に生まれ、家族で食事を分け合った経験が食に関する価値観に大きな影響を与えました。料理への情熱は、素晴らしい料理人だった祖母譲り。祖母は亡くなり、彼女のレシピノートも行方不明ですが、味は記憶に残っています。それこそ私が目指すゴールです」

今年7月からディナー営業のみに絞ったのも、ゆとりある特別な食体験を提供するため。「特別な時間」を追求し続けた13年を振り返り、「これまでも今も、幸せ」と笑顔を見せる。「仲間や生産者、ゲストの方々と繫がっていると感じられるせいでしょうね」

LUCA FANTIN
ブルガリ イル･リストランテ ルカ･ファンティン
ルカ･ファンティン／エグゼクティブ シェフ
1979年生まれ。イタリア･トレヴィーゾ出身。イタリア各地でその土地の伝統料理を、スペインでモダン･スパニッシュを、日本で和食を学び、2009年より現職。「ブルガリ イル･リストランテ ルカ･ファンティン」を、2011年以降12年連続でミシュランガイドの星獲得へ、アジアのベストレストランでは、最高ランキング17位へも導いた。