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47歳で作家デビュー。ベストセラー作家・青山美智子が描きたかった「見えないつながり」

47歳で念願の作家デビューを果たす

——青山さんが作家になろうと決意したのは14歳のとき。その33年後、ついに作家デビューを果たした。

「よく諦めませんでしたねとか言われたり、すごい根性があるみたいに捉えられるんですけど、どちらかというと諦めるきっかけがなかっただけなんですよね。作家って年齢制限もないし、資格もいらない。お金もかからないので(笑)。ただ、書きたいことだけはずっとあったというか。それが日常に組み込まれていただけなんです」

——作家として活躍する今でも、作品を応募に出す日々と大して変わりはないという。ひとつの作品が完成したら、いったん忘れて次の作品に取りかかる。書くことはまるで歯を磨くのと同じように、ルーティンとなっていたのだとか。

「公募ガイドを買ってきて一覧表を作って壁に貼っていました。それは雑誌の仕事をしていた時も、子育て中でも。締め切りが何日で、どれくらいの作品数が来る賞で、選考委員が誰で、ということをひと目見て分かるようにしてね。今は、それが出版社さん別になったくらいで。黙々と書く、という作業は当時とあまり変わらないんです。だから、まだ夢みてるんじゃないかなと思って(笑)」

「みんなで本を作り上げることが無常の喜び」と話す青山さん

——ひとりで黙々と小説を書いていく、それを30年以上変わらずやってきた青山さん。ただ、プロになってひとつだけ変化したことがあるそう。それは、本をみんなで作り上げていくこと。

「私は、小説を書く係。それをもっと面白くする人がいて、表紙のデザインをしてくれる人がいて、プロモーションしてくれる人がいて。その先には、売ってくださる書店員さんがいて、本を愛してくれる読者さんがいる。みんなで作って、広げていく。私は小説が書きたかったんじゃなくて、本が作りたかったんだ、とプロになって実感しました」

——現在は、本を作り上げることが無上の喜びだと話す青山さん。そして本を通して、まさに“見えない誰か”に支えられていると話す。

「ひとりで書いてると本当に誰か読んでくれるのかな、と自分で自分が信じられない時があるんですが、書店員さんや読者さんはなかなか直接お会いできない方が多いですけど、手渡していただけて、手に取ってもらえるのが本当にありがたくて。見えなくても、私にとって励みになりますし、このまま私書き続けていいんだと思えるんです。まさに、見えない存在に支えられていますね」

photo: Tomoko Hagimoto   interview & text: Akiko Yoshida

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関連情報

  • 『月の立つ林で』(ポプラ社) 定価¥1,760

    自分の生き方に迷いを感じたり、身近な人との関係に悩んだり……つまずいてばかりの日々を送る登場人物たちがそれぞれ共通して耳にしたのは、タケトリ・オキナという男性が月について語るポッドキャスト『ツキない話』だった。
    「月の立つ」というのは、新月を表す言葉。彼ら自身も、彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、似ているようでまったく違う新しい毎日を紡いでいく…。







Profile

青山美智子

1970年生まれ、愛知県出身。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系の新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。『お探し物は図書室まで』『赤と青とエスキース』で2021・2022年本屋大賞ともに第2位を受賞。
Twitter@michicoming

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