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<LIFE WITH MUSIC>第12回 そして未来へ

(c)Maika Loubté

【7月31日 marie claire style】12回にわたって音楽コラムの連載をさせていただいたこのコーナーですが、今回で最終回となります。約一年間、文才がないのに自由に書かせていただいて本当にありがとうございました。あっという間でした。この特異な2020年が半分過ぎたところで、良いことも悪いことも、今起きていることをありのまま受け入れながら、ここでは自由に、私が空想する未来の話をしてみたいと思います。

 これは「音楽は快楽だ」という個人的な考えに基づいた、わたしの空想です。

 それは未来の音楽との出会い方について。数十年後を想像してみてください(SF風に)。人工知能が急激に進歩して、人々が新たなウイルスの感染防止の意味も込めて、心身共に膨大な情報データをそれぞれのスマホに、もしくはそれに替わる何かに預けているとします。そこだけ考えると私は気分が暗くなりますが、もしも、ストリーミングサービスのオススメ機能のアルゴリズムも、その精度が今とは比べものにならないくらい研ぎ澄まされているとしたら。SpotifyのようなプラットフォームのAIが、個人の心の音楽のツボを究極に把握するようになったら、どんなことが起こるのでしょう??有名無名を問わず、リリースの年代を問わず、国籍も問わず、そのときその人の心や身体にばっちり、雷のように響く音楽がただ再生されるという、シンプルでダイレクトな音楽デリバリーサービスが難なく実現するかもしれません。出先で感動して涙が止まらなくなったり、仕事が捗らなくなったら困るので、ハードモード、ソフトモード、眠くなるモード、とMyエモ設定を選べるとか・・・。なぜこんなことを想像しているかと言うと、私が音楽の鳥肌マニアだということ。だけど最高に刺さる新しい音楽は毎日のようには見つからないこと、そして、個人の内面の感覚が重要視される社会は、きっとそうでない社会よりも幸せなんじゃないかと思うからです。数値化が不可能な個人の心の動きを、AIは把握するようになるかどうか?これは1つ、恐ろしくも面白いテーマで今に身近な話題になるような予感がします。

■PICK UP !/8種類の気分 1曲ずつ

「何か捨てたり手放したいとき」
・Rainbow Kitten Surprise「It’s Called: Freefall」

「ひとりで目的なく散歩するとき(初夏)」
・CocoRosie「By Your Side」

「家をきれいにゆっくり掃除したいとき」
・Vagabon「Water Me Down」

「友達に会いたくなったとき」
・Girrafage「Do U Want Me」

「ひとりでいたいとき」
・Ghost Piss「Beats in Bed」

「難しいことでもポジティブなきもちで取り組みたいとき」
・Blood Orange「Best to You」

「自転車でどこかへ出かけたいとき」
・Maika Loubté「Ride My Bike」(手前味噌ですが・・・・・)

「どんな気分でもないとき」
・Mort Garson「Music to Soothe the Savage Snake Plant」

■プロフィール
マイカ・ルブテ(Maika Loubté)
SSW、トラックメーカー、DJ。日本人の母とフランス人の父の間に生まれ、10代まで日本・パリ・香港で過ごす。ポップスとエレクトロニクスを融合させたスタイルで、国内外で音楽活動を行う。2019年7月、アルバム『Closer』をリリース。今年6月12日には新曲「Ride My Bike」をSNSで募った写真をもとにしたアートワークとともに発表し、話題を集める。agnès b.、Mercedes-Benz、STÜSSY WOMEN、Gapなどのブランドとのコラボレーションも行う。

■関連情報
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(c)marie claire style/selection, text, photo: Maika Loubté

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