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「ウエスト・サイド物語」をスティーブン・スピルバーグがリメイク!

『ウエスト・サイド・ストーリー』2022年2月11日(金)全国公開配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。 1961年に公開された名作映画がよみがえると聞き、心は一気に中学生だったあの頃へ──。11月25日発行号の巻頭言よりお届けします


ファッション、音楽、映像……今も鮮烈な記憶

スティーブン・スピルバーグが、あの「ウエスト・サイド物語」をリメイクしたというニュースを知ったのは、毎朝聞いているJ-WAVE でした。スピルバーグの手掛ける『ウエスト・サイド・ストーリー』とは一体どんな映画になるのでしょうか?

ウィリアム・シェイクスピアが、中世イタリアのヴェローナを舞台に、互いに対立する名門貴族に生まれた若い男女の恋と、その悲劇的な結末を描いた戯曲「ロミオとジュリエット」。この戯曲をベースに、ニューヨークのバレエ・ダンス振付師、演出家、映画監督でもあるジェローム・ロビンスがブロードウェイミュージカルとして原案を作ったのが1957年初演の「ウエスト・サイド物語」です。ニューヨークで暮らすポーランド系アメリカ人とプエルトリコ系アメリカ人という人種の違う若い男女の恋と悲劇を、当時の社会背景をバックに描き、ジェローム・ロビンスはロバート・ワイズ監督とともにそれを1961年に映画化しました。音楽はニューヨーク・フィルハーモニック指揮者のレナード・バーンスタインです。

全く何も映っていない黒いスクリーンに白い直線が幾何学模様のようにいくつも現れ、それがマンハッタンのビル街に変わっていく、ソール・バスによるタイトルデザインは斬新で、冒頭から観る人をドキドキさせたものです。映画は、空前の大ヒット。アカデミー賞では11部門中、10部門を受賞しました。

『ウエスト・サイド・ストーリー』2022年2月11日(金)全国公開配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

日本で公開された時、中学生だった私は、この映画をきっかけに同級生と「映画研究会」を立ち上げ、中学高校のOBであり『キネマ旬報』の編集長であった荻昌弘さんに、顧問を無理矢理引き受けてもらいました。文化祭では『ウエスト・サイド物語』の時代背景を説明した展示を作ったり、映画の中で流れた音楽や台詞を会場の教室で3時間余りずっと流し続けたりしたものです。

ファッションの分野でも、プエルトリコ系の非行少年グループ「シャーク団」の首領を演じるジョージ・チャキリスが履いていた黒い「コンバース」のハイカットのバスケットシューズや紫色のシャツ、対するポーランド系の非行少年グループ「ジェット団」の首領を演じたラス・タンブリンの黄色のスイングトップに私はもちろん、当時の若者たちは憧れました。またダンスパーティーに参加する女性たちがミシンを使って自分のドレスを作るシーンからは、当時のニューヨークのファッション事情を垣間見られます。

私が初めてニューヨークを訪れたのは1978年の秋、ロサンゼルスからの国内便でした。ラガーディア空港に近づくにつれて飛行機の窓に額をくっつけ、食い入るように眼下に広がるマンハッタンの街並みに見入ったものです。いたるところに鉄のネットフェンスで囲まれたコンクリートのバスケットコートがあり、まさに『ウエスト・サイド物語』の冒頭のシーンが思い出されました。

それ以来、何度も訪れて、ニューヨークという街の持つ圧倒的なスピード感、夏のアスファルトの焦げる匂い、冬の凍えるような冷たさ、マンホールから立ち上る湯気、雑多な人の群れを素早く泳いでいくことなどに、私もなじんでいきました。

『ウエスト・サイド・ストーリー』2022年2月11日(金)全国公開配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

そんなニューヨークを舞台に、スピルバーグはどんな『ウエスト・サイド・ストーリー』を見せてくれるのでしょうか? 旧作から60年たった現在は、以前にもまして人種間の争いや断絶が強くなったのではないでしょうか? スピルバーグがいま『ウエスト・サイド物語』をリメイクした意図はどこにあるのでしょうか? そんなことを考えると興味が尽きません。なにしろ、この映画(旧作)、私はゆうに100回は観ているのですから。

旧作『ウエスト・サイド物語』にも出演し、ジョージ・チャキリスの恋人役でアカデミー賞助演女優賞を受賞したリタ・モレノが、製作総指揮に名を連ね、また新作にも登場するそうです。挑むような瞳が印象的だった彼女の姿を見るのも楽しみの一つです。

2021年11月25日

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