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'「エルメス」2022年春夏コレクションから 画像提供: エルメスジャポン © Filippo Fior'

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「エルメス」2022年春夏コレクションから 画像提供: エルメスジャポン © Filippo Fior

エルメス2022年春夏コレクションで考えたファッションの意味

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。10月28日発行号の巻頭言では、2022年春夏コレクションのライブビューイングの席で改めて考えたファッションが持つ意味について──

久しぶりに同業者が集った逗子の夜

コレクション取材がコロナ禍のため叶わなくなり久しい。9月から始まった2022年春夏コレクションは、まだまだON LINEで発表するブランドが多いのですが、ヨーロッパ、アメリカのジャーナリストや編集者、バイヤーを招いて、フィジカルで開催するブランドやデザイナーも増えてきました。

そんな状況の中で、コレクション取材に行けない日本の編集者やジャーナリストのために、各ブランド、デザイナーはいろいろ趣向を凝らしたイベントを企画し、フィジカルなコレクションの熱気を伝えようとしています。

10月2日、逗子マリーナにある「MALIBU HOTEL」で「エルメス」の2022年春夏コレクションのクローズドなライブビューイングが開催されました。招かれたのはファッション・ジャーナリストや編集者40名と顧客。またライブによるパリとの時差(7時間)を埋めるため、開始前にクルージングやディナーも用意され、久しぶりに同業者たちが集合する場となりました。

「エルメス」2022年春夏コレクションから 画像提供: エルメスジャポン © Filippo Fior

コレクションのキーワードは「地平線・水平線」。長い間続いたパンデミックによる閉塞感からの解放と自由をテーマにしたもの。太陽の輝きを表現した黄色の背景をバックに、上質なレザーで縁取られたキャンバス地のワンピースやショーツ、ハイウエストのドローストリングのパンツ、またシルクガーゼにレザーを編み込んだワンピースなど、いかにも「エルメス」らしい手の込んだ作品をまとったモデルたちが登場し、最後にコレクションショーのバックにあった大きな扉が開き、そこが飛行場の格納庫だったとわかる演出(会場はル・ブルジェ空港)。またちょうどタイミングよく滑走路に飛行機が着陸するという大掛かりなものでした。定刻より30分遅れで始まり終了したのは午後10時30分。しかし出席者全員、この夜を堪能した様子で帰途につきました。

逗子マリーナのホテルでのイベントということもあり、ドレスコードはスマートカジュアル。出席者もファッション関係者なのでリラックスした中にも華やかさが感じられた夜でした。またクルージングの後にディナーが設定されていたので、着替えのための部屋や、履物についての注意など、いろいろ細かい点にも配慮されていたのはさすがにラグジュアリーブランドならではでした。

「エルメス」2022年春夏コレクションから 画像提供: エルメスジャポン © Filippo Fior

逗子からの帰途に思ったのは、先日の、軽井沢の有名レストランのディナーの席での体験です。歴史もありそれなりの評価も受けているお店なのですが、お客さまのファッションがあまりにもカジュアル化していました。確かに服装のカジュアル化は世界的な流れであるのは間違いありません。またいつでも自分が着たいものを着ればいいという考えが世の中の大きな風潮としてあるのも認めます。ただそこに垣間見えるのは、自分さえ楽しければいいといった雰囲気で、他者に対しての気遣いや、料理人に対するリスペクトが、あまり感じられないことでした。

避暑地やリゾートなのだから楽なファッションで、というのはわかるのですが、それにも限度があるのでは? いったん楽に慣れてしまうと、元に戻ることは難しくなると思います。ファッションは変則的なものなのです。

ファッションは今やありふれたものとして日常生活の中に溶け込んでいますが、着ることはコミュニケーションの一つです。自分と社会との接点としての役目があると言えるのではないでしょうか。

逗子のディナーの席での会話でも、百貨店の靴売り場では、フラットでカジュアルな靴やスニーカーが大きな面積を占めるようになり、パンプス、ヒールのあるシューズのスペースが、どんどん狭まっているということが話題になりました。

アメリカ合衆国下院議長で民主党の重鎮ナンシー・ペロシ  AP/Aflo

アメリカ議会で下院議長を長く務めている民主党の有力議員ナンシー・ペロシさんが、インフラ法案の採決先送りを説明している映像が流れているのを先日CNNで見ました。彼女のファッションはプルシャンブルーのスーツの下に同系色のカットソー、首には大ぶりのイミテーションパールのネックレス。質問する記者たちに、優雅でチャーミングに、そして自信に満ちた様子で対応していました。終了後、TVカメラが後方からとらえたのは、高さが10cmはあるブルーのピンヒールを履いて壇上から下りていく彼女の姿でした。ハイヒールは身体のバランスを変え、身体を伸ばすといいます。高齢になってもピンヒールを履いている姿に、とても納得がいき、また彼女の矜持を感じ、少し幸せな気持ちにもなれたのです。

2021年10月28日

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