【米国ローカルのお気に入り都市】美術館からグルメまで、ミルウォーキーはなぜ人気?

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2026.07.24

【米国ローカルのお気に入り都市】美術館からグルメまで、ミルウォーキーはなぜ人気?

2. 世界各地のアートが集積した美術館

Photo by John Magnoski Photography courtesy of the Milwaukee Art Museum

アート好きの必見スポットとして欠かせないのは「ミルウォーキー美術館」、通称「MAM」だ。五大湖の一つ、ミシガン湖畔に鳥が翼を広げて飛んで行こうとしているように見える建物は、遠くからでも目につき、この街のシンボルになっている。

翼の部分を中から見ると、こうなっている

2001年にサンティアゴ・カラトラバが設計したこの白い建物「カドラッチ・パビリオン」は、イタリアから運んだ大理石が使われている。バチカンのシスティーナ礼拝堂と同じ大理石とのことで、中に入ると確かに教会を訪れたような厳かな雰囲気が漂う。翼のように見えたのは間違いなかったようで、この建物には“ウイング”という愛称がついていた。しかも、“翼”は開閉し、時間によって建物が異なる表情を見せるのも魅力である。

教会の回廊のような廊下

ここはウィスコンシン州最大の美術館であり、ハーレー・ダビッドソン博物館と同じく東京ドーム約2つ分の広さ。館内には、アメリカのアーティストが制作した絵画、彫刻、装飾品、写真、コンセプチュアルアート、ミニマリズムの作品が充実している。ルネッサンス時代から19世紀までのヨーロッパの絵画や写真、家具、フォークロア、20世紀のハイチのアート作品にもフォーカスしていて、とにかくジャンルが幅広い。しかも、他にはない視点の作品があるので、じっくりと鑑賞すれば、あっという間に3時間ほど経ってしまう。

階段にもさりげなく作品が展示されている

家具のコーナー

とくにコンセプチュアルアートが多く、観るものに考えさせる展示が豊富なので、一緒に訪れた人と鑑賞後に話が弾みそうだ。日本では、あまり自由にアートの感想を話し合う習慣がないが、普段からこんなアート作品に触れる機会があれば友人の意外な一面も知れて楽しいだろうなと羨ましくなった。

個人的に、必見作品ベスト10はこちら。

1. 《墓の中の聖フランチェスコ》サンフランシスコ・デ・スルバラン(1630-34)

《Saint Francis of Assisi in His Tomb, 1630/34》Francisco de Zurbarán(Spanish, 1598-1664), Oil on canvas, 204.79×113.35cm, Milwaukee Art Museum

17世紀前半のスペイン、バロック期を代表する画家で、スペイン絵画黄金時代に活躍。スカル(頭蓋骨)を手に持ってたたずむ聖人が墓から出てきたことが、汚れた手足で表現されている。“死”について考えさせる作品。作家が織物工房の生まれのため、服のテクスチャーが緻密(ちみつ)に描かれている点にも注目を。

2. 《メソッド・マン》マーク・ブラッドフォード(2004)

《Method Man, 2004》Mark Bradford(American, 1961-), Paper on canvas, 317.5×317.5cm, Milwaukee Art Museum

寄るとさまざまな素材がレイヤードされているのがわかる

若者世代のアイコン的存在となっている現代作家の作品。紙を重ねて削り出すという彼独自の手法で都市の記憶や地図を表した抽象画。素材は、ロサンゼルスの街中で集めたポスターや新聞紙、雑誌を使用している。ロサンゼルスの夜の街路を空からみた様子を表現したもので、彼の初期活動に大きな影響を与えたヒップホップとラップ音楽に触発されたもの。作品名も、ラッパーのメソッド・マンにちなんだもの。

3. 《タイプライター消しゴム》クレース・オールデンバーグ、コーシャ・ヴァン・ブリュッゲン

《Typewriter Eraser, Scale X, 1999》Claes Oldenburg(American, born Sweden, 1929-2022) and Coosje van Bruggen(American, born Holland, 1942 – 2009), Painted stainless steel and fiberglass, 602.6x387.4x345.4cm, Milwaukee Art Museum

日常的なオフィス用品をスケールアップして再解釈したポップアートの代表作となる彫刻。リアリズムについて考えさせる作品として作られた。現代では使用しなくなった、かつての身近なアイテムは、今見ると喪失していく文化をたたえた記念碑のようにも感じられた。

4. 《掃除人》デュアン・ハンソン

〉《Janitor, 1973》Duane Hanson(American, 1925-1996), Polyester, fiberglass, and mixed-media, 166.37×71.12×55.88cm, © Estate of Duane Hanson/Artist Rights Society (ARS), New York, Milwaukee Art Museum 〈〉《Xmas in Gilroy, 1971》Robert Alan Bechtle(American, 1932–2020), Oil on canvas, 121.92×175.26cm, Gift of Joel ,and Carole Bernstein Family Collection M2000.14, Milwaukee Art Museum

等身大のスーパーリアリズム彫刻。本物の人間かと見紛うほどの精巧さ。ポリエステル樹脂やファイバーグラスを使い、手描きのオイルペイントで肌の質感をリアルに表現しているそうだ。ちょっと疲れて放心状態になったような虚ろな目など、とても彫刻とは思えない。美術館のスタッフも、閉館後に近くを通ると幽霊に出会った気分になるというほど。一緒に記念撮影する人が後を絶たない人気のコレクションにもなっている。

5. 《白亜の断崖》コーネリア・パーカー

《Edge of England, 1999》Cornelia Parker(English, b. 1956), Chalk, wire, and wire mesh Variable, Gift of Friends of Art M2000.89, Milwaukee Art Museum

イギリスの白亜の断崖「ホワイト・クリフ」から崩れ落ちた岩石のかけら(チョーク)を細いワイヤーで空中に吊り上げたインスタレーション。崩落の瞬間をダイナミックかつ繊細に表現したもので、チョークが空中に浮かんでいることで時間が止まったような錯覚を覚える。断崖は美しい自然であるとともに、多くの人が命を断つ場所でもあることから、生と死の象徴としても意味も込められているそうだ。

6. 《無題》ローラ・オーエンス

《Untitled, 2003》Laura Owens(American, b. 1970), Acrylic and oil on linen, Three panels each: 195.58×96.84cm, Lent by a private collection L2.2004, Milwaukee Art Museum

大きな3枚のパネルで構成された作品で、麻布にアクリルと油彩で描かれている。自然の風景や動植物などの具象的なモチーフと、抽象的な色彩を融合させた独特の作風が魅力。日本や中国の伝統的な風景画、ヨーロッパのモダンアートなど東西の美術史的な要素から着想を得ているそうで、夢幻的で幸せな気分になる作品だった。

7. 《若い女の肖像》ガブリエレ・ミュンター

《Portrait of a Young Woman (Bildnis einer Jungen Dame), 1909》Gabriele Münter(German, 1877-1962), Oil on canvas, 70.17 × 48.26 cm, Gift of Mrs. Harry Lynde Bradley M1966.164, Milwaukee Art Museum

ドイツ表現主義を代表する、前衛的モダニストの女性画家ミュンターの作品。ミュンターは、抽象画の先駆者であるワシリー・カンディンスキーと公私にわたるパートナーだったことで知られている。力強い黒い輪郭と鮮やかな配色、意志の強そうな女性の表情などが記憶に残る作品だった。

8. 《解放された雄鶏》パブロ・ピカソ

《The Cock of the Liberation (Le Coq de la Liberation), 1944》Pablo Picasso (Spanish, 1881-1973), Oil on canvas, 100.33 × 80.65 cm, Gift of Mrs. Harry Lynde Bradley M1959.372, Milwaukee Art Museum

1944年、第2次世界大戦のパリ解放を記念して描かれた抽象画。中央で誇らしげに胸を張る雄鶏は、フランスの非公式な国鳥で、古くから強さや抵抗のシンボルとされてきた「ガリアの雄鶏」。右の白い鳩は平和の象徴で、ナチスの占領下が終わり、自由と平和の新しい時代の幕開けを告げるメッセージになっている。明るい色調でお祝いムードが伝わってきた。

9. 《サニーNo.4》アレックス・カッツ

《Sunny #4, 1971》Alex Katz(American, b. 1927), Oil on canvas, 244.48×182.88cm, Gift of Mrs. Harry Lynde Bradley M1975.143, Milwaukee Art Museum

人物のポートレート作品でなじみ深い画家だが、これは自身の家族の犬がモデルになった代表作の一つ。特徴的な長いグレーの毛並みが、背景の自然と一体となって滝のように見える。「目の前にあるものを描く」というシンプルな考えで創作活動を行うカッツだが、他の人とは違う目線で切り取っているため、身近なものも新鮮に映る。

10.《ポピー》ジョージア・オキーフ

《Poppies, 1950》Georgia O'Keeffe(American, 1887-1986), Oil on canvas, 91.44×76.2 cm, Gift of Mrs. Harry Lynde Bradley M1977.133, Milwaukee Art Museum

女性で最初に認められたモダニズムを代表する画家といわれているオキーフ。ニューメキシコの砂漠地帯を描いた死生観を感じる作風で有名だが、花びらを画面いっぱいに描いた大胆な構図の作風も多い。ニューメキシコに移り住む前に暮らしていた、ニューヨーク近郊の風景からとられたそうだ。生命力あふれる力強い花は眺めているだけで勇気をもらって、スカッとした気分になった。


プリミティブな表現に和むハイチの彫刻のコーナーも見どころの一つ。日本ではあまり触れる機会はないが、ハイチの美術作品を購入することはフェアトレードにつながるとして世界的に注目を集めている。鮮やかな色彩で描かれた絵画も好評だ。

美術館からの湖の眺めも、まさに絶景なので、アートに浸り、ときには自然の風景で目を休めるというぜいたくな時間を過ごすことができる。

廊下の窓からも湖が見える。手前は、ハイメ・アジョンのガラス作品

Information
Milwaukee Art Museum(ミルウォーキー アート ミュージアム)
700 N Art Museum Dr, Milwaukee, WI 53202
https://mam.org
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