多彩な表情で世界を魅了するスペイン。多様な食材が生み出す、美食の旅へ

世界中の旅人を惹きつけてやまないスペインの魅力を、多彩な風土、文化、歴史からひもときながら、その多様性が生み出す食にフィーチャー。スペインでしか味わえない、ガストロノミー体験の旅に出よう。

世界中の旅人を惹きつけてやまないスペインの魅力を、多彩な風土、文化、歴史からひもときながら、その多様性が生み出す食にフィーチャー。スペインでしか味わえない、ガストロノミー体験の旅に出よう。
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観光立国として名高いスペイン。2025年には、人口の約2倍の観光客が訪れているというデータからも、人気の高さがうかがわれる。世界中の人々を惹きつけるスペインの魅力とは?

まず挙げられるのが、文化や風土の多様さだろう。北はカンタブリア海、西は大西洋、そして東と南は地中海と四方を海に囲まれ、内陸には複数の山脈が横断。海流や地形の影響により、地域ごとに気候が異なるスペインは、大きく4つのエリアに分けられる。海洋性気候で雨や霧も多く緑が豊かな北部には、美食の都サン・セバスティアンでおなじみのバスク州や、キリスト教巡礼の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂で有名なガリシア州などが含まれる。首都マドリードを中心とした中央部は、標高が高く昼夜の寒暖差が大きいため、良質なブドウが採れる世界有数のワインの生産地でもある。強い日差しが照りつける南部は、フラメンコの本場アンダルシア州の州都セビージャや、イスラム建築の粋を集めたアルハンブラ宮殿を擁するグラナダなどが代表的。温暖で乾燥した地中海沿岸の東部には、ガウディ建築で有名なバルセロナや、パエリア発祥の地とされるバレンシアなど人気の観光地が揃う。


他のヨーロッパ諸国では見られないイスラム文化とキリスト教文化が共存する独特な文化には、8世紀初頭から15世紀のグラナダ陥落まで約700年にわたるイスラム支配と反イスラムによる国土回復運動(レコンキスタ)といった歴史的背景が影響を与えている。このような地理的多様性がスペインを食材の宝庫たらしめ、文化・風土の多様性がガストロノミーにも奥深さをもたらしているのだ。

スペイン大使館観光部と『マリ・クレール』共催のイベント「Gastronomy of Spain ~食と旅のクロストーク~」で特別ゲストとして登壇した世界No.1フーディーの浜田岳文さんに、スペインの食の魅力を語ってもらった。




スペインは、年に2~3回は行くほど好きな国の一つという浜田さん。
「何度訪れても、新しいお店がどんどんできているので追いつかないという状況です。スペインは、世界のガストロノミーにおいて先進国の1つであると思っています。その理由は大きく3つあると僕は考えていて、1つは価格帯。本当の高級店から、1000円ぐらいでも美味しいものをつまめるカジュアルなバルまで、価格帯の幅広さと質が担保されている国って、世界ではあまり多くないんですよ。もう1つは食材の多様さです。海に囲まれたスペインは、海水温や地形によって獲れる魚介も異なります。魚種も豊富で、タコ、貝、海老など多種多様な魚介を国内で集めることができるのはすばらしいことです。また、陸の食材も充実しています。地域や季節ごとに瑞々しく力強い野菜が楽しめますし、イベリコ豚やガリシア牛などは世界的にも有名。残念ながら今はスペイン産の豚肉の輸入が日本では停止されているため、あの美味しいスペインの生ハムも、現地に行かないと食べられません」


そして、最後の1つとして浜田さんが挙げたのは、食材をシンプルに活かして調理する店から、徹底的に技巧を極めた店まである、スペインのガストロノミーの幅の広さだとか。
「食材に恵まれているからこそ、フォーカスして調理するレストランのジャンルがあります。例えばアサドールというのはバスク地方に昔からある薪焼きの調理法。カジュアルな店が多いのですが、『アサドール・エチェバリ』は、この技術を突き詰めて『世界のベストレストラン50』にも選ばれています。同じく選出されている『ディベルショ』は、対極にあるレストラン。科学技術を料理に応用する分子ガストロノミーという調理法を実践した有名店『エル・ブジ』の流れをくみ、さらに自由で独創的な料理を生み出しています。また、若い料理人の間では、野菜を主役にした料理が新しいトレンドとなっているのにも注目しています。このようなスペインのイノベーティブな料理が、世界のガストロノミーを牽引(けんいん)しているのです。僕の母は、いくら美味しくても同じものをいっぱいは食べられないって言うんですけど、スペインは、バルでもこうしたイノベーティブな店でも少量ずつ小皿で出してくれるから、いろんな料理が食べられる。それが可能な国って、世界でもあまり多くないですよ。食ってやっぱり行かないと味わえないもの。食材も水も違うし、空気、湿度も違う。いくらAIが進展しようが、現地の人に囲まれて食べるという体験は、そこへ行かなければできないですよね」

「スペインは時間がすごくゆったりと流れている」と、『マリ・クレール』の田居克人エグゼクティブ・アドバイザーも語った。「アートや建築などを見ていても余裕を感じます。成熟した大人のライフスタイルが、食文化にもつながっているのでしょう」
美食の最先端にあるスペインを、観光とともに楽しんで。
・ガウディのメモリアル・イヤーに訪れたい。歴史、文化、芸術の国スペイン
・豊かな自然と文化、美食に魅せられて。旅したくなるスペイン
スペイン大使館観光部
mail: info.tokio@tourspain.es
web: www.spain.info

【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】
©︎marie claire/photos: Toru Kometani(event) / illustration: Chika Miyata / text: Satsuki Tadokoro
浜田岳文
美食家・フーディー。米国イェール大学(政治学専攻)卒業後、外資系投資銀行などで約10年勤務し、その後世界一周の旅で食文化を探究。現在は食と旅の情報を発信し、世界約128の国と地域で食べ歩くほか、『世界のベストレストラン50』日本評議委員長も務める。
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