丁寧に選ばれた食材や土地の叡智に根ざした料理は、私たちの内側に潜む本来の美しさを静かに呼び覚ましてくれる。韓国南部には、そんな“美を育む食”と出会える場所がある。今回は、身体に寄り添う食文化を備えた3つの都市を紹介する。

韓国を代表する美しいビーチリゾートで、広大な白砂のビーチが有名な釜山・海雲台の高台に佇(たたず)む「BibibiDang」は、海と街並みを一望する特別なティーハウス。中心地からタクシーを利用すると20分ほどで着く。店に入り、大きな窓から広がるのは、青い海とゆるやかに弧を描く海雲台ビーチ。その絶景を前にいただく伝統茶や発酵茶。深い旨みとすっきりとした香りが特徴で癖がなく飲みやすいものが多い。ナツメ茶や抹茶などもいただくことができる。店員が一杯一杯丁寧に時間をかけて釜のお湯を使って、抽出するお茶は、心身の緊張をそっとほぐしてくれる。
店内で楽しめるのはお茶だけではない。韓国の若手アーティストによる作品がセンス良く飾られ、まるでギャラリーのよう。海の青さとアートの色彩が響き合う中で、日常を離れた、静かなひとときを過ごせる場所。釜山で内なる感性を刺激してくれる場所として、ぜひ訪れたい一軒。




小高い山・王山(ワンサン)と筆峰山(ピルボンサン)の麓に広がる、世界的な薬草の里として名高い慶尚南道山清郡(サンチョングン)には韓方をテーマにした癒やしの観光スポット・東医宝鑑村がある。この村にある東医薬膳館では、身体の陰陽・気血水のバランスを整える薬膳の考え方を学び、季節や体質に合わせた料理を体験できる。村で採られた薬草や野菜を使った、薬膳スープやご飯は、滋味深く、ボリュームたっぷりの食事なのに胃にもたれることがなく、食べ進めるほど身体の内側が温まっていくよう。日本ではあまり見られないキノコなどが使われていて、目にも鮮やか。現代の忙しさの中で乱れがちな心身のリズムを、自然と調和した食で静かに整えてくれる。韓医学の知恵に触れる時間は、自分の体と向き合うきっかけにもなる。
村内には、その他、韓医学博物館・韓方気体験場などをはじめレストラン東医薬膳館・韓医院・薬草販売場など各種施設があり、様々な韓方体験プログラムも楽しめる。




韓国の古都・全州は、伝統と食文化が息づく“韓国”を体感できる街だ。韓屋が立ち並ぶ「全州韓屋村」では、瓦屋根と木の温もりがつくる静かな時間が流れ、工芸や伝統茶など暮らしの美に触れられる。全国的に名高い全州ビビンバをはじめとする食文化も豊かで、韓国内の観光客にも人気の高いスポット。歴史散策、アート、食の楽しみがバランスよくそろう。
そんな全州にある伝統酒博物館は、昔から受け継がれてきた母酒(モジュ)や梨花酒などの多様な伝統酒の製造過程や文化・歴史などを展示している。伝統酒を造る道具の展示、製造過程を見ることができるほか、試飲や濾過(ろか)体験なども楽しめる(要予約)。もちろん試飲などもできる。独特なスパイスの香りに、どこか優しい甘みのある母酒は二日酔いにもよいと言われる低アルコールのお酒で、飲むと身体が癒やされるような感覚に。
味わった一杯、ひと皿が体にも心にも優しく、旅が終わる頃には“本来の自分”がもどってくる──。韓国南部での心身を癒やす食の旅。ぜひゆっくりと訪れてほしい。



text: Eriko Ryushi
・韓国「咸安落火ノリ」息をのむ幻想的な火祭りで、忘れられない夜を
取材協力:韓国観光公社 https://japanese.visitkorea.or.kr/svc/main/index.do