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「AIは仕事を奪う?」 女性にとって敵か、味方か

効率の名のもとに失われる人間関係

自動化の進展には別のリスクもある。セルフチェックアウトやオンライン診療は便利だが、人間同士の接触を静かに断ち切る。虐待や支配的な関係にある女性にとって、レジ係や受付、医療従事者とのなにげない対面は、助けを求めたり苦痛を伝えたりする貴重な機会だ。こうした接点が失われれば、誰かに気づいてもらい、支えてもらう可能性も同様に失われる。AIは効率の名のもとに、人間的なつながりを最も必要とする人々を孤立させる可能性がある。マリッサさんが言うように「AIは人と人のつながりに防火壁を作り出した」のだ。

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AI 2027は、OpenAIの元研究者で同社の無謀な行動を懸念して離職したDaniel Kokotajlo(ダニエル・ココタイロ)氏と新型コロナの急速な拡大を正確に予測したAI研究者Eli Lifland(イーライ・リフランド)氏が主導する先見的なプロジェクトだ。AIがますます強力になる中で、世界がどう変貌(へんぼう)するかを探求している。楽観的なビジョンと警戒すべきビジョンの二つの対照的なシナリオを通じて、AIが人間の知能をどれほど速く凌駕(りょうが)しうるか、またAIが急ピッチで開発されたり、不適切に管理されたりした場合に生じうる社会的影響を検証している。主な警告事項には、制御不能化、競争圧力、広範な社会的混乱が含まれる。

「AIとSNSが我々を支配する中、人々は現実でのコミュニティを切望しています」とエルムガッセン氏は説明する。「交流の場が失われると、社会は分断される。異なる背景や意見を持つ人々がもはや出会わなくなり、すでに分極化した時代にさらなる分断を助長する可能性があるのです」

影響は社会的なものだけではない。職業的な側面もある。ヒューマンスキル研修機関「Let’s Talk Human Skills」の創設者兼ディレクター、Hayley Dawson(ヘイリー・ドーソン)氏はジェンダーに起因する緊急の懸念を強調している。ルーチン業務の自動化が進む中で、残された人間的スキル、たとえば直接的なコミュニケーション、自己アピール、目に見えるリーダーシップなどがキャリアアップにはますます重要になる。しかし、こうした行動を示す女性は「偉そう」「攻撃的」とレッテルを貼られ、不利益を被ることが多い。自動化された職場では、忙しさを演出して逃げ場となるような「単純作業」が減るため、こうした人間同士のやりとりがより厳しく監視されるようになり、結果として職場に、どんな行動をしても安全策がない状況が生まれると彼女は言う。

AIの台頭は職場の女性にとって課題と機会の両方をもたらす。調査は懸念すべきジェンダー格差を裏付けており、最近発表された報告書では、職場でAIツールを使用する男性は81.3%であるのに対し、女性はわずか58.8%であることが明らかになった。同様に、生成AIを活用した職種に就く女性の割合も男性より低い。

ドーソン氏は「女性が男性と同等の割合でAIを導入することが、公平な利益を確保するために最も重要な方法だ」と警告し、AI活用度の格差がこれからのキャリア機会・昇進・影響力の波において女性を置き去りにするリスクがあると指摘している。

AI時代に向けたスキルアップ

同時に、AIはキャリア加速の強力なツールとなり得る。多様で一直線ではないキャリアを歩んできた女性は、AI経済という環境で力を発揮できる独自の立場にある。『世界男女格差報告書』によれば、こうした経験が女性にAIを活用した職場を乗り切るスキルを与え、英国だけで4000億ポンド(2023年GDPの16%に相当)の生産能力を解き放つ可能性がある。

ディーシー・ワインスタイン氏はこうまとめる。「将来的には、AIやイノベーション、あらゆる新技術が台頭する世界で存在意義を示すために、誰もが継続的な学習を証明する必要があるかもしれません」。しかし、スキルの急速な陳腐化は依然として課題だ。ディーシー・ワインスタイン氏は指摘する。「40歳で身につけたスキルは、5年後には通用しなくなる。42歳の時に私が手にしたスキルも、世界が急速に変化しているため、いまや無意味なものになっています」

LinkedInのデータもこれを裏付けており、AIリテラシーが最も需要の高いスキルの一つであるにもかかわらず、自社で十分なトレーニングが提供されていると回答した従業員はわずか41%だった。LinkedIn EMEAのチーフエコノミスト、Tamara Basic Vasiljev(タマラ・ベーシック・ヴァシリエフ)氏によれば、こうだ。「英国の専門家は極めて競争の激しい雇用市場に直面しています(中略)AIエージェントと連携する能力は2025年に最も急成長するスキルであり、コラボレーションやコミュニケーションなど人間的なスキルの需要も高まっています」

テッポエワ氏はこう指摘する。「機械は数字のパターンを見つけるのが得意です。しかし会議中の間や、かみしめた顎の緊張、心からの笑いの温もりといった意味は感じ取れません」。こうした対人関係や人間関係のスキルはリーダーシップやキャリア形成に不可欠であり、日常業務が自動化されるにつれ、さらに価値が高まる可能性がある。

AIはワークライフバランスにおける長年のジェンダー格差解消の可能性も秘めている。エルムガッセン氏は、AIが長時間労働のプレッシャーを軽減し、よりフレキシブルな働き方や家族との時間に余裕をもたらすことで、「AIが女性のホスピタリティ業界での長期就業を支える未来が来るかもしれない」と期待する。ディーシー・ワインスタイン氏もこれに同調し、女性のAI分野への参画拡大が、テクノロジーそのものの形成の助けになりうると強調する。「女性がAIに関わるほど、女性がデータを生成するほど、女性がAI研究を行うほど、AIは女性のニーズに寄り添うようになります。それが平等を生み出すでしょう」と語った。

AI時代は女性にとって両刃の剣だ。アクセスと普及の不平等が既存のジェンダー格差を拡大する可能性もある一方で、この技術は学習の加速、人間のスキルの強化、柔軟で意義ある仕事の設計という、前例のない機会を提供するものでもある。依然として未知の部分が既知の部分を上回っているのは事実だが、一つ確かなことがある。AIは仕事のルールを再定義しているのだ。AIを受け入れ、形作り、教える女性たちが、そのルールが私たち全員にどう役立つかを決定することになるだろう。結局のところ、職場におけるAIの物語は、女性がその中で自らの立場をどう確立するかという物語でもあるのだ。

※(  )内編集部注

translation & adaptation: Akiko Eguchi

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  • This article was originally published Mischa Anouk Smith by on Marie Claire UK

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