「AIは仕事を奪う?」 女性にとって敵か、味方か
2025.12.4

style-photography / iStock.com
AIに仕事を奪われていると感じている女性が多い一方で、AIを味方につけてスキルアップを図り、実際にキャリア向上を実現している女性もいるという。これから女性はAIとどう付き合っていくべきなのか。マリ・クレール インターナショナルのUK版デジタル記事よりお届け。
2025.12.4

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AIに仕事を奪われていると感じている女性が多い一方で、AIを味方につけてスキルアップを図り、実際にキャリア向上を実現している女性もいるという。これから女性はAIとどう付き合っていくべきなのか。マリ・クレール インターナショナルのUK版デジタル記事よりお届け。
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AIがより多くのルーチン業務を引き継ぐにつれ、女性は職場で新たな機会と隠れたリスクの両方に直面している。今、どう対応するかがあなたのキャリアを左右するかもしれない。
「求職活動がこれほど完全な沈黙に包まれたことはかつてなかった」とLinkledInユーザーのMarissa Castrigno(マリッサ・カストリーニョ)さんは記す。AIと自動化が求職活動をさらに地獄のような状況に変えているというこの意見は、明らかに共感を呼んでいる。LinkedInの投稿には何百もの「いいね!」と無数のコメントが寄せられている。別の場所では、「AIは私の仕事を奪うのか」というGoogle検索が212%増加し、TikTokの検索ワード「AIが私の仕事を奪うと言っている人々」には5890万件もの投稿がある。
マリッサさんの主張はこうだ。私たちは自動化された雇用ループに陥っている。採用プロセスの双方でAIが活用され、人間の手が恐ろしいほど介在しない閉じたフィードバックサイクルが生み出されているのだ。その結果、私たちは完全に自動化された採用の茶番劇の傍観者として取り残されている。この理論は現実と合致する。英国では現在、雇用主の61%が採用プロセスにAIを導入している。さらにAIとデータ専門職のうち女性はわずか22%にとどまり、採用の専門家たちの間では「AIブームで女性が取り残される」と懸念を強めている。雇用パフォーマンス評価会社ホーガン・アセスメンツのチーフサイエンスオフィサー、Ryne Sherman(ライン・シャーマン)博士はこう指摘する。「AIが仕事のルールを書き換えているが、誰がそのペンを握っているのか?」
Iris(アイリス)さんは8年間フルタイムのフリーランスライター兼コピーライターとして活動してきたが、2025年はこれまでで最も厳しい年だったと語る。かつて定期的に仕事をしていた編集者たちからの依頼がなくなり、なかには編集者自身が解雇されたケースもいくつかあったという。「AIだけを責めるのは甘い考えといえます。メディア業界は少なくとも10年前から変革期にありました」と彼女は話す。「しかし、AIがこうした状況に大きく関与していることに気づかないのも同様に愚かだといえるでしょう」。アイリスさんの友人のひとりは会社がChatGPTを採用したため、正社員のコピーライター職を失った。「会社が彼女にそう告げたのです」と付け加えた。
マリッサさんとアイリスさんは決して例外ではない。「Orgvue」の調査によれば、英国企業の39%がAI導入を理由に人員削減を実施した。少しばかり他人の不幸を喜びたいなら、今や半数以上がそうした決定は誤りだったと考えているという。しかし、その事実に安堵(あんど)しすぎる前に、トニー・ブレア地球変動研究所(トニー・ブレア元英首相が設立したシンクタンク)の推計をみてほしい。AIは長期的に英国で100万から300万の雇用を奪う可能性があり、ピーク時には年間最大6万から27万5000もの職が失われることとなる。
2025年1月、予測型AI分野の米国特許を持つ博士号取得者Tatiana Teppoeva(タチアナ・テッポエワ)氏が、マイクロソフトで14年間勤めた後、解雇された。「皮肉だと感じ、同時にほとんど滑稽(こっけい)に思えました」と彼女は語る。「まさに私が構築を手伝ったツールやシステムそのものが、労働力の変革の一因となったのだから」
Wanjiku Kamau(ワンジク・カマウ)氏もグーグルで同様の経験を味わった。解雇後、彼女はあらゆる求人に何らかのAI研修が必須となっていることに気づいた。「自分でも笑いました。私はGoogle Cloudで働いていたというのに、AIとはほとんど関わっていなかったのです」と彼女は言う。多くの人が共感できるだろう。人工知能の概念は少なくとも2001年のスティーブン・スピルバーグ監督の映画『A.I.』以来主流だったが、特にOpenAIのツールによる、ここ3年の変化のスピードは目まぐるしい。
OpenAIが2022年11月30日(現地時間)にChatGPTをリリースすると、わずか5日で100万ユーザーを突破した。現在、週あたりのアクティブユーザーは約7億に達し、昨年の4倍だ。このうち500万が有料のビジネスユーザーだが、これは単にひとつのプラットフォームの数値にすぎない。米国だけでも、フォーチュン500(米経済誌『FORTUNE』が毎年発表する米国総収益上位500社のリスト)企業の60%以上が少なくとも一つのAIプラットフォームを利用している。その数は増え続けており、執筆時点で世界には推定7万のプラットフォーム、1万以上の異なるAIツールが存在している。
国際労働機関とポーランド国立研究所の共同調査によると、世界で4分の1の職が生成AIによって脅威にさらされる可能性がある。そして、往々にしてそうであるように、女性が最も深刻な影響を受けると推定されている。世界的に見て、女性の職の4.7%が最もリスクが高いカテゴリーに分類されるのに対し、男性は2.4%である。高所得国ではこの差が大幅に拡大し、女性の職の9.6%がリスクにさらされている。これは男性の割合のほぼ3倍に相当する。
AIによって女性のキャリアがより高いリスクにさらされる理由は複雑だが、専門家はいくつかの点で意見が一致している。女性は一般事務や管理補助業務に過度に集中しており、これらの仕事はAIがすでに効率的に遂行できるような反復作業を伴うことが多い。こうした職種が完全に消滅するわけではないが、部分的な自動化は仕事の質を低下させ、責任を奪い、賃金を停滞させ、不安定さを増大させる可能性がある。
同時に、技術の開発・導入・規制の分野に参加する大人の女性も少女も依然として少ない。私たちは技術関連のキャリアを追求する可能性もデジタルサービスを利用する頻度も低い。一方でオンラインハラスメントの被害に遭う確率は不釣り合いに高い。AIリーダーシップにおけるジェンダー不均衡がこれらの問題を悪化させている。ビッグデータ(人間では把握できないほど膨大な量のデータ群)とAIを管理するプラットフォームClouderaの調査によれば、英国在住の女性IT意思決定者の68%がAIの上級管理職で女性が不足していることを懸念しており、特にAIリーダーシップが圧倒的に男性中心である現状では、AIのアウトプットの偏りを助長すると半数以上が考えている。
偏見はすでに現実にも表れている。米国で133のAIシステムを分析した結果、44%が女性に対する性差バイアスを示した。AIの思想的リーダーであり労働力戦略家であるTamsin Deasey-Weinstein(タムシン・ディーシー・ワインスタイン)氏は、AIに「イングランドにおける成功」を定義させたところ、ビジネススーツを着た40代の男性の画像が返ってきた事例でこれを実証した。彼女はさらに自身の家族写真(同性カップルと2人の子ども)でテストしたところ、AIは一貫して彼女を男性として描いたことがわかった。「何度入力しても同じ結果でした」と彼女はZoomで語る。「私はショートヘアだから、男性扱いされるのです」
こうした偏見があるにもかかわらず、彼女はAI楽観主義者だ。ケイマン諸島を拠点とする彼女は、AI技術を早期導入した経験を活かして同国の首相の顧問という上級職に就き、AIは平等化の可能性を秘めているとみている。「AIは真のテクノロジーではないテクノロジーです」と彼女は言う。「技術的なスキルは必要ありません。民主化をもたらすものであり、むしろ芸術に近いものなのです」
ディーシー・ワインスタイン氏だけではない。LinkedInの英国労働力信頼度指数によれば、多くの労働者はAIを脅威ではなく、能力を高めるツールと見なしている。過半数(53%)はAIによって単調な作業から解放され、より価値の高い創造的または戦略的業務に集中できると信じている。41%はすでにタスクの迅速化と生産性向上に寄与していると答えている。
ディーシー・ワインスタイン氏は楽観的だ。「仮にAIが私たちの仕事の多く、あるいはその一部を奪い、週に1日か2日しか働く必要がなくなったとしましょう。もしそれが本来あるべき姿だとしたら? もし未来が労働時間を短縮し、その時間を家族と過ごしたり、自然に触れたり、スキルアップに充てたり、つまりは私たちが生きる本質的なことに費やすものだとすれば?」。これは魅力的な考えだ。テクノロジーがついに私たちを「ブルシット・ジョブ(くだらない仕事)」という日々の苦役から解放してくれるかもしれないというのだから。この「ブルシット・ジョブ」は人類学者David Graeber(デイヴィッド・グレーバー)氏が、無意味または満たされない、それを実際に行っている人さえ存在すべきでないと思うような仕事を指した用語だ。
すでにこの変化を経験している女性もいる。カマウ氏は生成AIツールの活用がキャリア変革をいかに加速させたかについて語っている。「以前は数週間かかっていた作業が、このようなツールを使い始めてからは数時間で済むようになりました」と彼女は言う。AIとの関わりを「見習いから達人へ」と表現した彼女の経験は、著書『Out of the Loop, Into the Algorithm: How I Finally Made Friends with AI(ループから抜け出し、アルゴリズムの中へ:ついにAIと友達になった方法)』のインスピレーションの源となり、彼女はこれが急速な技術変化に適応する人々の助けになることを願っている。
人工知能と採用の専門家であるKhyati Sundaram(キャティ・サンダラム)氏はカマウ氏の楽観論に同調する。「AIは労働者がより意義深く、より高い付加価値のある仕事へ移行するのを支援するべく、反復的な業務を自動化するために使われるべきです」と彼女は説明する。
おそらくそうだ。しかし状況は決してバラ色ではない。すでにキャリアを確立した女性にとって、煩わしい業務から解放されるのは歓迎すべきことかもしれない。しかし新入社員の場合、その役割はしばしばルーチン的で、容易に自動化できるような業務を含むため、AIがスキルとキャリアアップへの道を構築する重要な初級レベルの経験を脅かす可能性がある。
マリッサさんは、AIとのやりとりが必要になるケースが増えていることを懸念している。「私はキャリア10年目で、美術の修士号を持っていますが、これから30年間は生き残るためにAIシステムとやらとやり合っていくことになるのです」と彼女は言う。「AIとの接点が増えれば増えるほど、満足度は悪化していくでしょう。求職者と採用担当者、医師と患者、運転手と乗客、あらゆる場面でそうです」
Botivoの共同創業者イメ・エルムガッセン(Imme Ermgassen)氏は、彼女がホスピタリティ業界における「文化的緊急事態」と呼ぶ事態について警告している。ロボット技術がフロント業務(ホテルの自動チェックインから給仕ロボットまで)に進出するにつれ、即座にエントリーレベルの仕事の機会が消滅する。「ホスピタリティ業界は上層部の仕事ではなく、初級の仕事をAIに置き換えようとしているように感じます」と彼女は言う。雇用の喪失以上に、もっと深刻な影響がある。「多くの人にとって、ホスピタリティ業界は大学卒業後、社会で今後必要となっていく生活スキルを身につける最初の職場です。そうした仕事がなくなれば、若い世代全体が実社会への第一歩を踏み出せなくなります」。さらに、ホスピタリティ業界では女性が長期的に残るケースがほとんどない現状を踏まえ、自動化によって女性や若者が仕事に初めて足掛かりとなる役割そのものが奪われることで、不平等が深まるリスクがあると彼女は説明する。
This article was originally published Mischa Anouk Smith by on Marie Claire UK
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