香り高きハーブの世界【三澤彩奈のワインのある暮らし】

Lifestyle

2025.06.19

香り高きハーブの世界【三澤彩奈のワインのある暮らし】

山梨県の中央葡萄酒の醸造責任者として、豊かな自然の中で日々ブドウの栽培と醸造に向き合い、「甲州」の名を世界に広める三澤彩奈さん。今回は、共に香りが重要なワインとハーブについてつづります。

ブドウ畑では、開花の季節を迎えました。ブドウの花はとても小さく可憐(かれん)に見えますが、はじけるように咲きます。

ブドウの開花

今回は、ワインとハーブのお話を少し書かせていただきたいと思います。3月に香港を訪れた際に宿泊したホテルでは、ウェルカムワインの代わりに、ライム、シソ、ミントを使ったスパークリングティーが提供されていました。ホテルのソムリエに話をうかがったところ、近年高まるノンアルコールドリンクへの需要に応えたい、また、香港産の材料を少しでも使いたいとの思いで、ホテルのオリジナルラベルとして生産しているそうです。飲食業界で進むヘルシー志向に準じた、新しい形のおもてなしに感じられました。

ハーブは、私たちワインの世界でもなじみの深いものです。例えば、醸造家は、ワインの香りを表現する際、ハーブや花、スパイスの香りを挙げます。山梨県を代表する品種で作られている「甲州」では、クローブ、白コショウなどのスパイスに加え、ジャスミン、スイカズラ、サンダルウッド、ライラック、カモミールなどの花香を取ることがあります。

ブドウ畑でも、ハーブを植えて、土壌の窒素を固定させたり窒素を吸収させたり、 また防虫の目的などでも活用されています。特定のハーブを調合し土壌にまいたり、ブドウの木に散布したりする農法も存在します。

今でも思い出すのが、フランス留学中のブドウ栽培の授業の一つです。50種類ほどのハーブを覚えなければならなかったのですが、中には日本に存在しないのか、ピンとこないものも多く、絵を描きながら覚えた記憶があります。

甲州とハーブ
甲州をイメージしたバスソルト

また、フランスでは、フランス料理のコースを食べた後、食後の飲み物として、コーヒー、紅茶の他、ハーブティーも選ぶことができます。西洋では、医薬品として扱われるハーブも存在すると聞きますが、フランスに住んでいるとき、ハーブが生活の一部に取り入れられていることを実感することは多々ありました。

千葉県の勝浦市白木に2022年にオープンした、エディブルフラワー・ハーブ園「#勝浦herbe」では現在、200種類以上のハーブと、食べられる花「エディブルフラワー」を、化学合成農薬を使用せず、植物や微生物由来の資材を使い栽培しています。

「#勝浦herbe」 を運営する株式会社doerの荒井早基社長によると、エディブルフラワーは、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富で栄養価が高く、ハーブの花はハーブの風味、野菜の花は野菜の風味がするものが多く、何よりも香りが魅力的だと話します。ハーブもエディブルフラワーも、何でも食べられるというものではないため、安心安全に美味(おい)しく 食べていただく ために、園づくりには時間をかけたそうです。

ハーブとエディブルフラワー
ハーブとエディブルフラワー

肥沃 (ひよく)な土地であることを前提として、気候や日当たり、水はけ、水、土壌とすべてに納得できる土地探しは2年近くかかったと言います。ようやく見つけた勝浦市は、気象庁が1906年に観測を開始して以降 、100年以上一度も35℃を超える猛暑日になったことがないのだそうです。海洋性気候の影響で、夏が 涼しいだけでなく、冬場も暖かく、ハーブやエディブルフラワーを育てるうえで最適な気候だと感じたそうです。朝日がさんさんとあ たる位置に面し、地下30メートルからくみ上げた良質な真水が 、ハーブや花を美味しく、香り豊かに育てています。

園で収穫されたエディブルフラワーやハーブを使ったハーブティーやジャム、お菓子は、#勝浦herbe公式オンラインショップでも購入できます。私のおすすめは、ホワイトバルサミコとローズマリーのチーズケーキ。フレッシュな白ワインとよく合います。

チーズケーキ
チーズケーキ

荒井早基さんは、20代で起業し、都内でも飲食店を2店舗経営しています。その経験を生かし、初めて東京都以外で開業した#勝浦herbeには、地元の食材にこだわったカフェも併設しており、地域の特色を生かした美味しいものを提供したいという心意気が感じられます。

カフェ
カフェ

また、私の地元である山梨県でも、草木の魅力を伝えるお茶屋「kinoca」が、6月に富士吉田市でグランドオープンしました。お店を切り盛りする田川貴章さん・美雪さんご夫妻は、前職のホテル勤務をきっかけに河口湖へ移住。お茶を通して森の魅力を伝えながら、人も森も健やかになるようなことをテーマに様々な活動をしていきたいと話しています。

カウンター4席の店内で、富士北麓の樹木や草木を用いた草木茶をゆっくりと味わうことができます。お二人からどのような森の物語が生まれてくるのか、今後の展開も楽しみなお店です。

食といのちを考える、大阪・関西万博のEARTH MARTへ
進化を続けるアルゼンチンワイン


#勝浦herbe
住所:千葉県勝浦市白木 426-1
電話:0470-64-4995
URL:https://katsuura-herbe.jp/


kinoca
住所:山梨県富士吉田市下吉田3丁目12-80

Profile

三澤彩奈(みさわ・あやな)

中央葡萄酒株式会社 栽培醸造責任者 山梨県の中央葡萄酒4代目オーナーの長女として生まれる。ボルドー大学ワイン醸造学部を卒業し「フランス栽培醸造上級技術者」の資格を取得。2007年に中央葡萄酒の醸造責任者に就任。栽培と醸造に取り組む。 2014年に世界的ワインコンクール「デキャンター・ワールドワイン・アワード」の金賞を日本で初めて受賞。甲州ワインの名を世界に。「グレイスワイン」は海外で最も飲まれる日本ワインに成長。2021年11月、「甲州」の新たな魅力を引き出した「三澤甲州2020」を発売。
「グレイスワイン」のウェブサイトはこちら

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