×
''

Lifestyle

green

小泉環境相インタビュー 「暮らしに身近なファッションこそ、『カーボンニュートラル』の切り札になりうる」

世界的に「脱炭素」の取り組みが進む中、日々の暮らしに身近なファッションでもサステナビリティ(持続可能性)への視点が欠かせなくなっています。アパレル大手が使い終わった衣類の回収・再生に力を入れたり、消費者が環境に配慮した素材や製法を吟味してから服を選んだり。国もそうした取り組みを後押しし始めています。日本のファッションはどこまで環境に優しくなれるのでしょう? その現状と課題について、小泉進次郎環境相に弊誌副編集長の高橋直彦が話を聞きました。

ーー6月のG7サミットでは、2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロに関与することを各国首脳が確認しました。国も「骨太の方針」で、「グリーン化」を投資拡大の重点分野に挙げ、「カーボンニュートラル」は大きな潮流になっています。そうした中、ファッションに何ができるのでしょう。
ファッションという誰にとっても身近な存在を通して、服の作り手も着る側も気候変動の問題に関わることができます。そのためには、国民のみなさんにファッションと環境が無縁ではないということを知ってもらうことが大切になります。国では環境省を中心に、その発信をすでに始めています。そして、「服を着る」という行為を通して、脱炭素へ向けた具体的な行動を始めるきっかけにしてもらいたい。『マリ・クレール』の読者のようなファッションリーダーにまず関心をもってもらい、行動につなげていくことで社会は大きく変わっていくと思っています。

今年4月、40歳になった。「食事も気をつけるようになりましたね。部分的だけど、ビーガンも取り入れているんですよ」という小泉環境相。環境省のホームページ内に新設した「サステナブルファッション」をテーマにしたページ(https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/)は「お役所らしからぬ、おしゃれさ」と話題に

ファッションが環境に与える影響を「見える化」したい

ーー国内で消費する衣類のほとんどを輸入に頼り、大量生産、大量消費、そして大量廃棄という悪循環から、日本のファッション業界が脱するためには、根本的な体質改善が必要なのでは。
そのために2020年9月に環境省内に「ファッションと環境」タスクフォースを設け、勉強会を重ねてきました。21年中に参加企業を中心に連携のプラットフォームとなるアライアンスも設立される予定です。業界の川上から川下までバリューチェーンすべてが入っていて、ここから生まれる対応策に期待しています。例えば、これまでの勉強会では、服を作る過程で排出される二酸化炭素の量なども「見える化」できるのではないかといった具体的な話も出てきています。ファッションには、これからの日本を変えていく大きな潜在力があると、手応えを感じています。

ーー環境省として、今後どのような取り組みを考えていますか。
買おうとしている服がどのぐらい環境に影響を与えているか、指標を設け、具体的な数値で示せないかを検討しています。それを消費者が確認することで、買うかどうかを判断する。デザインや価格だけではない選択肢を提供できないかと考えています。指標は日本だけでなくグローバルに共有できるものにしたい。環境だけでなく、将来的に生産された国での人権への配慮なども指標に盛り込めたらとも思っています。これからの経済は、新たな資源を使わず、廃棄を極力減らしながらビジネスを回していくサーキュラーエコノミー(循環型経済)がカギになっていく。ファッションはその切り札になりうるのです。

服の来歴が装いの選択肢になるような社会に

横須賀出身だけに大臣室には愛用(?)の「スカジャン」も

ーーご自身のファッション観を。おしゃれに関心はありますか。
もちろん、ありますよ。ファッションって決まっていると自信を与えてくれますからね。スーツのサイズがぴったり合っていると、気合も入ります。だから、どんなに忙しくても服は自分で選びます。ただ、それだけではいけないと考えるようにもなりました。今、自分の着ている服にどのような素材が使われ、どこでどう作られたかをもっと知りたいし、知らなければならない。スーパーで食材を選ぶときに、産地や添加物の有無などを確認してから購入する感覚に近いかもしれません。服の来歴が、私たちの装いの選択肢になるような社会に変えていきたい。『マリ・クレール』の読者のみなさんも次世代に向け、環境に優しいファッションを一緒にアップデートさせていきませんか。

「これは手放すことのできなくなったマイボトル」。ほかにも漁網をアップサイクルしたバッグや繰り返し使えるシリコーンバッグなど、環境に優しいグッズが次々と

【ファッションロスが環境に与える影響】

国内で1年間に供給される衣服の製造から廃棄までの工程で排出される二酸化炭素量は推計9500万トン─。こんな結果が、2020年度に環境省の行った調査でわかっています。調査の目的は、新品やまだ着ることのできる衣服が廃棄される「ファッションロス(衣服ロス)」に象徴される衣服の大量生産・大量消費・大量廃棄の環境に及ぼす影響を把握すること。この排出量は、中小国1国分の排出量に匹敵するそうです

この調査によると、国内で1年間に供給される衣類は約35億着。1着当たりの二酸化炭素排出量は27キログラムで、ペットボトル約270本の製造分に相当します。また、衣服の98%が輸入品で、9500万トンのうち9割が海外で排出されています。水を巡る環境にも影響を及ぼしており、原材料となる綿栽培など、衣服の製造に使われる水消費量は83億立方メートルで、1着当たり浴槽11杯分に相当しています。

20年の衣服の年間供給量は約81万トンで、家庭や事業所から手放される衣服は約78万トンと推計。手放される衣服の約65%に当たる約51万トンが廃棄され、リユースやリサイクルされた衣服は計35%にとどまっていることも明らかになっています。※下図【2020年版衣類のマテリアルフロー】参照

2020年版衣類のマテリアルフロー

※日本総合研究所の資料を基にマリ・クレール編集部作成
関連情報

Profile

こいずみ・しんじろう

1981年、神奈川県横須賀市生まれ。2004年、関東学院大学経済学部卒業。06年、米国のコロンビア大学大学院政治学部で修士号取得。米国戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て、09年8月に衆議院議員に初当選。現在、4期目。19年9月より環境大臣兼内閣府特命担当大臣(原子力防災)。21年3月より気候変動担当大臣兼務。尊敬する人物はジョン・F・ケネディ。好きな言葉は「異志統一」。

Recommend

Pick Up

リンクを
コピーしました