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世界が夢中になるバリ発レストラン「アルケミー」。創設者に聞くプラントベースフードという選択が何を変えるのか

アルケミー創業者のジェームズ・セバスティアーノ

東京都港区に新たに誕生した新しい街「麻布台ヒルズ」。テーマに「Green&Wellness」を掲げる話題の施設に、バリ島で熱狂的な人気を誇るレストラン「アルケミー」が初の海外店をオープンした。日本にはまだなじみみのないプラントベースフード専門店だが、アルケミーの創設者で現CEOのジェームズ・セバスティアーノは「アルケミーは一部のビーガンやナチュラリストだけが満足する店ではない」と言う。自身の経験を通して編み出したアルケミー独自の哲学と食における選択の意味を聞いた。

世界が認める自然派レストランが生まれるまで

インドネシアのバリ島は健康とウェルネスのメッカといわれるほど、世界中のナチュラリストが集まる有数の場所だ。そこで緑豊かな自然と共存するようにたたずむ「アルケミー」は、“世界のベストビーガンレストラン”としても選出され、ナチュラルフードにこだわるなら誰もが知る名所だ。

始まりは、旅好きのセバスティアーノが初めてバリに訪れたこと。のちに「アルケミー」を共同創立するシャンティ・アレンが講師を務めていた料理のワークショップでプラントベースフードを知り、その味だけではなく、地球のことを考慮した革新的な食のあり方に感銘を受け、2011年に“錬金術”を意味する「アルケミー」をオープンさせた。

アルケミーバリ
“世界のベストローフードレストラン”としても選ばれる、「アルケミー・バリ」。ウェルネスとホリステックを融合させた空間づくりが特徴だ。

「バリの神秘的でエネルギーあふれる自然の力、地元の人々のウェルネスに対する精神や親切であたたかな心にとても惹かれました。当時ビーガンだったわたしにとって、その地の新鮮な食材を使ったプラントベースという画期的で健康的な食べ物は大きな出合いとなり、食に対する新たな世界観を持ち始めました」

ビーガンとは異なるプラントベースとは

プラントベースフードは植物由来原料を使い、食感や味なども含めて、肉や魚の料理などを再現した食の選択肢の一つ。野菜や果物、全粒穀物、植物油、ナッツなどで“より多くの植物性食品を摂取する”というプラントベースの観点に比べると、ビーガンは“動物性食品を可能な限り摂取しない”ことを重視している。

プラントベースフードはこれまで宗教上・健康上の理由で食事が制限される場合の代替品として選ばれることが多かったが、健康志向が高まる近年では、疾病予防や健康増進のために取り入れる人が増えている。日本でも大豆で作られた大豆ミートやオーツ麦から精製されたオーツミルクなどが広く認知されるようになった。

また、温室効果ガスの削減や水資源の保護など環境負荷軽減も考えられており、サステナブルな社会を作る方法の一つとしても注目を集めている。

アルケミーバリ
「アルケミーバリ」では動物性食品、化学薬品、精製白砂糖、人工香料、保存料は一切使わず、純粋なプラントベースの自然原料のみで作られた食事を楽しめる。

「牛や豚などの飼育では多くの水を用し、食用肉をつくるためにも膨大な水量が必要とされています。牛や豚を保護するためにも、人間も動物と同じ植物由来の食べ物を取り入れることは大きなメリットになります」

「アルケミー」では、すべての料理に肉や魚、卵、乳製品、白砂糖、うま味調味料、化学調味料を使用しない完全プラントベースでグルテンフリーの料理を提供。素材本来の味を生かすため、オーガニックおよび再生可能を実践する地元のサプライヤーを通し、農薬の量もチェックするなどの基準を設けながら、農場から新鮮な食材を調達している。さらに、ビタミンや酵素など植物の栄養価を最大限に生かすため、43度以上の加熱調理をしていない非加熱のローフードも用意。加工品はなく、素材そのもののリアルフードを探求することで、「健康や癒やし、喜びを見いだす今までにない体験を届けたい」と考えている。

13年間、ビーガンとして学んだ食の大切さ

実は、セバスティアーノはファストフード発祥の地であるといわれるアメリカ出身。ジャンクフードの食文化の中、人生の大半を過ごしてきたのだという。そんな中、15年前にビーガンである当時の交際相手に差し出されたダイエット本を参考に、30日間ビーガンになることにチャレンジ。動物性食品を断つことに成功し、その後もビーガン生活を13年間続けた。

「当時のわたしは自分のこと、周りのことに全く関心がありませんでした。とても利己的で他人を助けるということさえも知らなかった。でも、自分が何を口にしているかを意識し始めたことで、体にいいものを食べたいと思うようになり、ヨガをしたり、瞑想したり、自然の中で過ごしたりして、自分自身に問いかけ、周囲からさまざまな気づきを得るようになりました」

アルケミー創業者のジェームズ・セバスティアーノ

しかし、2年前のこと。「ハワイ滞在中に3夜続けて魚を食べる夢を見たんです。ビーガンだった私には、とても苦しい体験で毎日涙が止まりませんでした。悩んだ末に、約10年ぶりに白身魚を食べることに。どうしてその夢を見たのかはいまだにわからないけれど、きっと誰にでも起こり得る経験なんだと思います。ビーガンをやめた自分の決断に後悔はしていません」

突然起こった不思議な出来事に身を捧げるように食生活をあらため、その選択と決断が自分にどのような影響を与えるかを意識するようになったという。「私は食べ物を自主的に制限することは推奨しないし、ビーガンがベストだとは思っていません。けれど、プラントベースフードという選択肢は、誰にとっても食べやすく、人も地球も健康と幸せを保てる選択だと信じています」

プラントベースをすべての人にとっての選択肢に

初進出の地に選んだのは、自然豊かなバリ島とは対照的な東京だ。都心部でサステナブルな街づくりを目指した麻布台ヒルズの4階に構える店内は、色鮮やかな食材や観葉植物のグリーンを引き立てる白を基調にした空間。大窓から望む近代的な高層ビルとのコントラストから「アルケミー」の新たな挑戦をうかがえる。

東京店でも出来る限り日本各地のオーガニック野菜を用いながら、季節に応じたオリジナルメニューを考案。メインは、葉物野菜か穀物を主食にした約30種類のトッピングから選ぶことができるサラダバーや、主食とスープがついた日本ならではの“TEISHOKU(定食)”バーで、中には、鮭の味わいを再現した薫製豆腐や東南アジアなどで栽培されるジャックフルーツをチキンのように仕上げたプラントベースミートなど、食べ応えあるラインアップも豊富にそろえる。

創設からの看板メニューである、新鮮野菜のデトックスジュースと植物由来の“Raw”チョコレートに加え、和名で“万年茸”とも呼ばれる霊芝(れいし)というキノコを使ったアイスクリームなども取りそろえる。メニューはすべて店内のキッチンで手作りする。

オープニングに合わせて来日したアルケミーバリのチーム

「東京は世界一の食の街ですが、プラントベースフードという選択肢はそう多くありません。きっと自然の中で暮らす人々よりも健康的な料理を必要としているはずです。『アルケミー』はビーガンやナチュラリストの人のためだけのレストランではありません。わたしたちはより良い身体、そして精神へと導くことを掲げ、プラントベースという食がもたらす幸せが一つの選択肢となることを掲げています。『アルケミー』という言葉には、トランスフォームするという意味も込められています。錬金術師が銅を溶かして金にするように、プラントベースフードはあなたを良い方向へと導いてくれるでしょう。変わりたいのであれば、まずは食の選択から。ストレスのある現代社会の中で、身体や精神がどのように変化するのかぜひご自身で体感してみてください」

text: Rie Kamoi, edit: Mio Koumura

■店舗情報
店名:アルケミー
住所:106-0041 東京都港区麻布台1-3-1麻布台ヒルズ タワープラザ4階
TEL:03-6230-9668
営業時間:11:00-22:00

Profile

ジェームズ・セバスティアーノ

アメリカ出身。シャンティ・アレンとともに2011年にウブドの西にあるサヤン村に共同創設者のアルケミー・バリをオープン。ツリーオブライフセンターでビーガンライブフード栄養学の修士号を取得したマーケティングの専門家で、起業家として倫理的で環境保護に配慮した持続可能なビジネスに情熱を注ぐ。

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