――エルメさんのクリエーションは、常に美味と美が両立しています。インスタグラムが一般的になり、日本の食のシーンにおいて、見た目重視で味は二の次、という風潮がある気がして、私は危惧することがあります。どう思われますか?
PH:私はインスタグラムを気にしたことはありません。私は食べるためのものを作っているのですから。見た目は、食べるためにあるものです。まずは美味しくなければいけない。目にも美味しいということがあって、美しさになるわけです。インスタグラムに取り上げられれば、それはよいことだと思いますが、私はそれを念頭においているわけではありません。

――これまでに、80回以上来日され、多くの日本素材をお菓子に使われてきました。日本の素材はエルメさんにとって魅力があるものでしょうか?
PH:私は美味しければどこの国のものでも使います。イタリアのものもスペインのものも同じです。日本にはたまたま何度も訪れているので、たくさん日本のものを使うことになっていますが、日本のものだから使うのではなく、私は美味しいものなら何でも使うのです。20世紀の美術界におけるムーブメント「ジャポニスム」にインスパイアされた「ジャポニスム」というコレクションについては、もちろん日本を意識しました。

――近年注目されている日本の素材を教えてください。
PH:(しばらく考えて)海苔を使ったブラックチョコレートのタブレットとボンボンショコラを考えています。チョコレートに海苔を入れると面白いのは、まずチョコレートの味がして、次に海苔の味がきて、次にまたチョコレートの味がすることです。とても美しい味のシナリオだと思います。あとは、大豆と生醤油と組み合わせて何かできないかと考えています。シリアルなどです。

――25年前に初めて東京で「イスパハン」に出会い、未体験の美味と美しさに心を震わせました。その後、ケーキやショコラなど、多くの別の形が生まれましたね。
PH:イスパハンだけで80以上のレシピがあります。イスパハンの本もフランスで作りました。今年、イギリスの国王チャールズ3世がベルサイユ宮殿を訪れたときは、晩餐会でイスパハンのデザートを作りました。これもまた、イスパハンのひとつの翻訳となりました。
――冷凍配送ケーキ「ノマド」になった「イスパハン」も美味しかったです。
PH:「ノマド」の販売はフランスで始まりました。ロックダウンの時期に、ケーキを日持ちさせて、フランス中に届けるための方法を考え、実現したものです。もちろん、日本のあらゆる家庭に対してもあてはまります。