【12月19日 marie claire style】今年の6月、アルバムの発売を控えてスペインの3都市をめぐるツアーを終えたあと、バルセロナからパリに移動して、ミュージックビデオの撮影に挑みました。実は、撮影はかなりの思いつきでした。パリに着いた日、日本にいる旧知の間柄である映像作家と電話で話していて、突然「明日パリに行くから、何か撮ろうか」ということになりました。気がつけば2日後、なんと1980~90年代のボロいビデオカメラだけを持ってやってきた彼と、ほぼノープランのまま合流しました。そこはパリの小さなアパートです。その場にいる人だけでできることは何かとアイデアを絞り出し、私たちは残りの3日間で、思いつくまま撮り続けることに決めました。絵コンテも企画書もなく、持ってきていた私物のお気に入りのパジャマとスリッパを衣装に決めて、いざ撮影へ。まさに行き当たりばったり、さまざまな場所に行きました。ただ、伝えたいメッセージ、表現したい空気感だけはイメージにありました。飾らない、なるべく華やかではない場所がいいと思い、祖母が住んでいたパリ郊外のアパート周辺や、車の修理工場、落書きだらけの路上のATMなどで、朝から晩まで撮り続けました。