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<LIFE WITH MUSIC>第10回 過去を紡ぎ未来へ

(c)Maika Loubté

【5月28日 marie claire style】私は昔から、自転車に乗ることが大好きでした。外出制限に休業要請、休校、ライブイベントの自粛。体験したことのない、暗さを潜めた静かな世界に入ってみると、自転車に乗って近所を少し走ることは、いつも以上に解放感を与えてくれるものでした。

 6月にリリース予定の新曲のタイトルは、「Ride My Bike」と名付けました。この楽曲のジャケットやビデオを作るにあたって、1つ、やりたいことがありました。当たり前だった毎日が遠ざかる中で、いつか戻ってくるであろうその日をイメージするために、かつて当たり前にあった日常の写真を世界中の人に送ってもらって、それを何枚もずらして重ねて、コラージュのようにしたアートワークを制作することです。壮大すぎる実験でしたが、私の投稿を見つけてくれた方々が、たくさんの写真を「#RMB2020」のハッシュタグとメールで寄せてくれました。やってみると、写真の1枚1枚に想像以上の重みがありました。メキシコのピンクがかった空、ロンドンの家の庭に佇む2歳になったばかりの男の子、東京の街、夏のお祭りの風景、握手をする隣人、顔を寄せて笑う少年少女、いつかの朝ごはん、犬の散歩、川遊び、etc・・・。見ず知らずの人の人生が、確かに存在していることをひしひしと感じました。新しい世界に突入しつつあるかもしれない私たちにとって、過去の美しい出来事が、新しい未来を創造するエネルギーになればいいと思います。

■PICK UP !/新しい未来を感じる曲
・Flume feat. Toro y Moi 「The Difference」
声のサンプリングを生かした楽曲はこれまでも多く聴いてきたような気がしていましたが、この曲は新鮮に感じられました。声のサンプリングであること以前に、旋律としてのメロディの強さが勝っているからかもしれません。ドラムンベースっぽいビートもいい。

・Ryan Hemsworth 「Sun Up」
可愛さと切なさが同居する、すてきなダンスミュージック・・・。こちらも声のサンプリングを多用していますが、そのリフに特徴がある気がします。子供の声にも似たその音色に、なんとなく、新芽が生えてくるような様子を連想し、未来を感じます。

■プロフィール
マイカ・ルブテ(Maika Loubté)
SSW、トラックメーカー、DJ。日本人の母とフランス人の父の間に生まれ、10代まで日本・パリ・香港で過ごす。ポップスとエレクトロニクスを融合させたスタイルで、国内外で音楽活動を行う。2019年7月、アルバム『Closer』をリリース。agnès b.、Mercedes-Benz、STÜSSY WOMEN、Gapなどのブランドとのコラボレーションも行う。

■関連情報
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(c)marie claire style/selection, text, photo: Maika Loubté

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