パリ・カンボン通りのシャネル 本店 iStock.com/AndreaAstes
世界的にも100年以上の歴史を誇る企業が一番多いのは日本です。歴史や信用を意味する「暖簾」という言葉がよく使われるのも日本です。ラグジュアリーブランドが世界的な規模になったのも、日本人の購買力が大きな影響を与えました。もともと日本人はラグジュアリーなものに対しての興味が高く、また意識も高いのです。
しかし、日本でそのようなブランドがなかなか生まれてこない。それは、どうしてなのでしょう? 私は上質な素材で職人技を駆使して作り、高額な価格設定をしても、それだけではラグジュアリーにはならないからだと思います。
必要なのは「物語」なのではないでしょうか。
例えば1837年創業の「エルメス」は、馬具を丁寧に作る一人の優秀な職人の物語から始まり、19世紀末フランスの激動の時代やパリ万国博覧会、2度にわたる世界大戦など、多難な時代をどのように切り抜けてきたか、またどのように有名なバッグが生まれたか、カレと呼ばれるスカーフがどのように誕生したかについて、興味の尽きない物語が数多くあります。

「シャネル」は創立者のガブリエル・シャネルの生い立ちや、修道院での少女時代、また数多くの恋や交友関係など、映画にもなるほど魅力的な物語が満載です。

1978年創業というラグジュアリーブランドの中ではとても新しいと言える「ブルネロ クチネリ」も、創業者クチネリ氏の経営に対する考え方やものづくりの方針は、とてもエモーショナルなものです。
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ブランドの底流に人を惹きつける美しい物語がなければ、それが人々の琴線に触れなければ、ブランドへの関心を持っていただけないと思います。そのブランドの製品を手に取ってみたいと思わせる、誘惑できる物語。それが重要なのではないでしょうか。
人間はとてもエモーショナルな存在です。その部分を刺激することができなければ、いかに上質のものでも、ただのよくできたもので終わってしまうのではと思います。
「物語」をどう作るか、その点を日本はもっと重視していくべきだと思います。
2023年3月30日
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