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折り畳み椅子「ニーチェアエックス」日本が誇る名品モノガタリ

時流には流されないが、時をしなやかに受けとめ、そして時代を超えて愛される。暮らしを彩るそんな名品の数々を紹介する連載。今回は日本で生まれ、世界で愛される折り畳み椅子「ニーチェアエックス」をピックアップ。

季節や気分に応じて自由にくつろぎの居場所づくり

ニーチェアエックスの重さは約6.5kg。折り畳んで気軽に持ち運べるから、どこでも好きに自分の居場所をつくれるのがいい。窓辺でゆったり読書もよし、ベランダに持ち出して心地よい風に吹かれるもよし。時にはキャンプに連れ出すなんていうのも悪くない。

余分な装飾が一切ない、とことんシンプルで美しいデザインはどんな空間にもすっとなじみ、自分だけのくつろぎを自由につくりだせるのが最大の魅力だ。

約6.5kgと軽量だから小柄な人でも楽に持ち運べる。折り畳んだ状態で自立し、厚みも約15cmとコンパクトなので収納にも便利

生みの親・新居 猛が生涯をかけて取り組んだ折り畳み椅子づくり

誕生したのは1970年。デザインを手がけた新居 猛(にい たけし)は1956年に発表した初作「木製折り畳み小椅子」を皮切りに、終生折り畳み椅子の開発に取り組む。初作から変わらず大切にした椅子づくりの基本は「座りやすく丈夫で安いこと」。

デザイナーの新居 猛(にい たけし)1920-2007
徳島県の剣道具製造販売業を営む店の3代目として誕生し、1952年より家具の製造販売を開始。折り畳み椅子を終生のテーマにし、国内外を問わず広く評価される

折り畳みにこだわったのも、椅子の価格を抑えるために梱包・輸送・保管コストを意識してのことだった。通常の椅子を荷造りして送るのは「かさばって空気を送るようなもの」だからと、荷姿を小さくするために考え出したという。

1956年に発表された初作の「木製折り畳み小椅子」。三越で開催された「第9回中小企業輸出振興展」で振興賞を受賞した

しかも快適性にも妥協を許さなかった。「座り心地を落とさず、とにかく安く、道具のように役に立ってこそ椅子」との信念を生涯貫き通した。ニーチェアエックスは座ると体の重みでX状の脚が左右に広がり、座面のシート生地が引っ張られる。その張力がクッション効果を生み、快適な座り心地をかなえるという仕組みだ。

さらに頭までしっかりホールドしてくれるハイバック仕様をはじめ、リラックス姿勢に適したシートの傾斜角や座面高、肘かけの角度など、すべてのデザインは人間工学がまだ一般的ではなかった時代に新居 猛が試行錯誤の末に生み出した快適性への答えだ。

お問い合わせ先

藤栄https://www.nychairx.jp

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