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【2023年 国際女性デー】社会起業家・白木夏子さんをジレンマから救った「世界の女性たち」

“良き母”からの呪縛を解いた世界のお母さん

経済的にも精神的にも自立する女性たちと出会いながら、白木さん自身も社会起業家としてジェンダーにとらわれず邁進していった。ところが第1子を出産後、「女であること、母であることの呪縛」に自らとらわれてしまう。

「約10年前、第1子を出産した後すぐに保育園に預けて働き始めたのですが、『3歳になるまではお母さんが一緒にいてあげないとかわいそう』とか、『母乳で育てられないなんてひどい母親だ』とか。いわゆる“3歳児神話”ですね。誰かから直接言われたことではなく、どこからか見聞きして刷り込まれていったのだと思うのですが、この言葉に私自身苦しみました」

産後2、3年はできない自分に罪悪感を抱えることが本当に多かった、と振り返る。ところがお子さんが4歳になるころに母子二人で挑んだ世界一周の旅が、大きくその価値観を変えることとなった。

「友達やその友達など、とにかく世界のいろんなお母さんに会ったんです。シンガポールや香港、マレーシアの友人の家に遊びに行くとナニーさんが家の中にいるのは当たり前だし、母親だけでなくみんなひとつのチームとなって子育てをしていたんですよね。そこでようやく、母親だからこう、女だからこう、とがんじがらめになっていた心が解きほぐされていきました」

現在は2児の母となった白木さん。当時の経験があるからこそ、今は心の余裕が全く違うとほほえむ。

仕事と育児の間で罪悪感を抱え続けた産後。「“理想の母親なんてどこにもいないよ”と当時の自分に教えてあげたい」と話す白木さん

伸びていくためには「下駄を履いてもいい」

現在は『HASUNA』の運営のみならず、女性の働き方や起業をテーマに国内外で講演活動も行っている白木さん。最後に、男性は“男性起業家”と呼ばれることはなくても、“女性起業家”という言葉が一般化している件について聞いた。

「数が圧倒的に少ないというのはありますよね。小売業やメーカーでは、せいぜい15%くらいなんですよ、女性の経営者って。ダボス会議のような国際会議へ行っても女性が2割もいないので、これはグローバルな問題だと捉えています」

2012年 APEC(ロシア)日本代表団としてWomen and Economy会議に参加(写真:白木さん提供)

世界的に女性起業家が少ない──それはコロナ禍で受講した大学の授業の中でも感じていたそう。

「オックスフォードやスタンフォードのような大学で、“ウーマンリーダーシップ”というコースが用意されていたんです。どの大学でも女性に特化したプログラムがあるのを見ると、やはり女性でリーダーシップを取ったり、マネジメント層に行ったりするのは、まだどこの国も大変なんだなと実感しました」

そして、そのためには社会全体の認識が変わっていく必要がある、と続ける。

「“女性起業家”や“女医”のように、あえて “女性であること”をつけないほうがいいのでは?という議論もありますが、私はつけていいと考えています。今まで男性が下駄を履かしてもらっていた社会だったわけだから、じゃあ次は女性に下駄をちゃんと履かせてあげないと。 違和感を覚えることはあったけれど、今はこうやって“女性”起業家というものにちゃんとフラグを立てて、エンパワーメントしていくことが大事なのではないでしょうか」

photo: Tomoko Hagimoto interview & text: Akiko Yoshida

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関連情報
  • 3月8日の国際女性デーに向けて、女性のヘルスケアイベント「WEHealth 2023」を開催。最新のフェムテック商品に触れられる体験型コーナーのほか豪華ゲストによるトークショーも。どうぞお見逃しなく!


    WEHealth 2023
    会期:2023年3月11日(土)〜3月12日(日)11:00〜19:00
    会場:LIFORK原宿(東京都渋谷区神宮前1-14-30 WITH HARAJUKU3階)
    公式サイト:https://wehealth.co.jp/

Profile

白木夏子

ジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」創業者・CEO、ブランドプロデューサー・ディレクター。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教員・研究所客員研究員。英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て2009年に株式会社HASUNAを設立。HASUNAでは、ペルー、パキスタン、ルワンダほか世界約10か国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、エシカル(=道徳的、倫理的)なものづくりを実践。2011年日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞、2013年ダボス会議に参加。Voicyにて「起業&ブランドゆる話」チャンネル音声配信中。

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