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【2023年 国際女性デー】社会起業家・白木夏子さんをジレンマから救った「世界の女性たち」

社会に出て初めて感じた「ジェンダーの壁」

とはいえ、白木さん自身が日本やイギリスで「女性であること」のジェンダーギャップを感じたことはそれまでなかった。ところがイギリスから帰国後、金融の会社で働きはじめた時に、目には見えない壁のようなものを感じたという。

「不動産投資ファンドの会社だったというのもあるとは思うのですが、女性の比率が圧倒的に低かったんです。100人社員がいたら、女性は5人以下という世界。仕事の話が喫煙ルームで進んでいたりとか、飲み会に出るとよく評価されたりとか、いわゆるオールド・ボーイズ・ネットワークで体力勝負なところがありました」

そして、男女のキャリア形成において大きな差が生じてしまうのが、やはり女性の「妊娠・出産」であることも実感したそう。

「妊娠・出産のタイミングで、キャリアを諦める女性をたくさん見てきました。男性は階段を上っていく一方、産後に復帰したとしても女性のキャリアはいったん階段の踊り場に出てしまう。踊り場どころか、少し階が下がるのが当然という風潮が感じられたんです」

お祖母様から受け継いだというオパールの指輪(右手中指)に、HASUNAのリングを合わせて

社会起業家として踏み出した第一歩

その後リーマン・ショックのあおりもあって、白木さんは27歳で起業の道を選ぶ。子どもの頃からジュエリーを作ることが好きだったこと、そして学生時代に衝撃を受けた鉱山労働者の生活──今までの経験すべてが2009年に設立するエシカルジュエリーブランド『HASUNA』へとつながっていった。

『HASUNA』を設立した2009年当時は、“エシカル”や“サステナビリティー”という言葉もまだ耳慣れなかったころ。
取材後に「エシカルは耳慣れない言葉なので別の言葉で記事にさせてください」と何度も言われたそう

「鉱山から直接フェアトレードで仕入れてジュエリーとして販売する。そうすればジュエリー業界も流れも変わっていき、世の中がよりサステナビリティーに配慮したモノづくりをしていくようになるんじゃないかと考えました」

ブランドを立ち上げた当初、ペルーやコロンビア、パキスタン、ルワンダなど、できる限り採掘の現場に足を運んだ。さまざまな国と文化、そしてそこで出会う女性たちに大きく影響を受けたと話す。

2009年、ルワンダにて(写真:白木さん提供)
南米ペルー金鉱山にて(写真:白木さん提供)

「たくさんの国を訪れる中で、女性がとても活躍している国とそうではない国、両方を見てきました。日本もジェンダーギャップ指数で言えばそのうちのひとつかもしれないんですけど、ジェンダーギャップが下の方の国、例えばパキスタンやインドなど、女性には結婚の自由がないとか、結婚したらこう家の中で過ごさなきゃいけないとか。本当に自由が奪われているような国とかもいっぱいあって。

一方、創業して間もない時に金の買い付けをしに南米コロンビアに行ったんです。コロンビアはフリーランスの人がとても多くて、働き方がとても自由なんですよ。そのとき一緒に国内を回ってくれたコロンビア人の女性がPR会社を起業していたんですが、自立した女性という感じでとてもかっこよくて。日本との違いを大きく感じました」

日本は146か国中116位(世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」より)

関連情報
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    会場:LIFORK原宿(東京都渋谷区神宮前1-14-30 WITH HARAJUKU3階)
    公式サイト:https://wehealth.co.jp/

Profile

白木夏子

ジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」創業者・CEO、ブランドプロデューサー・ディレクター。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教員・研究所客員研究員。英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て2009年に株式会社HASUNAを設立。HASUNAでは、ペルー、パキスタン、ルワンダほか世界約10か国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、エシカル(=道徳的、倫理的)なものづくりを実践。2011年日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞、2013年ダボス会議に参加。Voicyにて「起業&ブランドゆる話」チャンネル音声配信中。

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