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ケイト・ブランシェットが驚異の役作りで女性指揮者を熱演!話題作に込めた思いを語る

『エリザベス』(1998年)のエリザベス1世から、『ロード・オブ・ザ・リング』(2001年)のガラドリエル、『アビエイター』(04年)のキャサリン・ヘプバーン、『ブルージャスミン』(13年)のジャスミンなど、時代に翻弄される様々な女性像を銀幕に刻み続けてきたケイト・ブランシェット。俳優として演技力も人気も世界のトップに立つ彼女が、新作『TAR/ター』で演じるのはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者リディア・ターだ。その切迫した演技に、この架空人物を実在の人物と信じた観客もいたほど。ベルリン映画祭で現地を再訪した彼女に話をきいた。

ケイト・ブランシェット

現実的に、世界を見渡しても女性の首席指揮者というのは数少ない。だからこそこの芸術界の男性権威を象徴する役柄が女性である、ということで、まず観客は好奇心を掻き立てられる。「映画の世界に入ったころ、女優が演じる人物像の幅は非常に狭かった。人に好かれるような美しい女性などが圧倒的で。演技を音符に例えたら、鳴らせる音というのは二つ三つしかなかった。ターという役は、それを画期的に変えるような役。これからの時代の女性像のお手本になるような役だと思う。女性だって人間だし、様々な面があり間違ったこともやる。きまぐれでもある。本作はそのあたりを描くドラマがあり面白い。例えばシェイクスピアのマクベス夫人がキャラクターとして面白いのは、驚くほど創造的に描かれているから。彼女の存在なしに、『マクベス』という演劇は成り立たないから」

ケイトが演じた米国人ターは、ハーバードをはじめ名門大学を首席で卒業しアメリカの5大オーケストラに参加した後、現在はベルリン・フィルの首席指揮者を務めながら作曲家としても活動する。エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞をすべて受賞している、という設定だ。今まさにクラシック音楽界の最高峰に立ち、多大なる権力を手にしている。「主人公が女性であることで、様々なニュアンスも作り出せると思った。いったん手にした権力を手放すことがいかに難しいことであるか。苦労して権威と影響力を行使できる位置に達した時、次にできることというのは、それを手放すことしかないから。権力を手にすることで、人は変わってしまう」

ケイト・ブランシェット

役作りのため9 ヵ月をかけ、スクリーンでベルリン・フィルを演じるドレスデン・フィルのメンバーについて指揮を学んだ。彼女の入魂のパフォーマンスは圧倒的だ。

「指揮できたのは喜びだった。役作りのために、例えば指揮者が指揮について語るのを聞いたけれど、それだけでも驚きだった。また指揮についての記事を読んだり、指揮者のパフォーマンスやリハーサル映像を見たり。例えばリハーサルの場合は考察しながら試行錯誤しているわけで、本番のパフォーマンスとはエナジーも異なる。個人によってスタイルや方法も全く異なっていた。また時代とともに指揮のスタイルも変化したし、ゲスト指揮者と首席指揮者をやっている人では大きく異なる。大勢いる指揮者をかいつまんでいろいろ学習した。興味の尽きないテーマだった。指揮者の世界に飛び込んだの」

ケイト・ブランシェット
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