生誕 100 年! 今振り返るピエール・カルダンのデザイン コスモコール編
1960 年代に巻き起こったスペースエイジブームを牽引したデザイナーの一人にして既製服やライセンス事業の先駆者でもある希代のデザイナー、ピエール・カルダン。 2020 年 12 月に急逝したものの、今年は生誕 100 年という節目の年。数多くの名作を生 み出したカルダン氏だが、代表的デザインのひとつ、コスモコールは 1966 年に発表 して以来象徴的なスタイルとして、数年にわだり発表された。発表から約 50 年たっ た今も色あせず、何度となく注目されてはオマージュされることも少なくない。 そんなコスモコールを、今年 7 月に発売した「ピエール・カルダン デザイン アーカイ ブ」から抜粋して紹介する。
60年代のファッション界に衝撃を与えたコスモコール
1966 年の秋冬コレクションで初披露となった、宇宙服のようなヘッドウェア、ジャー ジー素材にジッパーを多用したユニセックスなデザインを男女ペアで着せるなど、新しい宇宙時代や未来を予感させるショーは、とてもショッキングだった。この時のコレク ションの冒頭で、カルダン氏は「男性にも女性にも合うような新しいものを、造形の基本として彫刻、建築、絵画をベースに作り出してみたかった」と語っている。
ジェンダーフリースタイルのコレクション
1966 年、秋冬コレクションで発表されたコスモコール。タートルニットに幾何学的な カッティングのジャンパースカートを合わせたスタイルで話題をさらった。
こちらは 1967 年に発表されたコスモコール。胸元をくり抜いたジャンパースカートに ジップ使いのメンズスーツ。紳士服のジャケットにジッパーを使うことは、当時、非常 に画期的なことだった。
1966 年、秋冬コレクションで発表されたコスモコール。タートルニットに幾何学的な カッティングのジャンパースカートを合わせたスタイルで話題をさらった。
新しい素材から生まれた斬新なデザイン
未来的なムードを作るのは、カッティングやシルエットだけでなく、素材選びも重要。 メタル、ビニールなど様々な新素材を取り入れることにも挑戦した。
カルダンのためにアメリカの繊維会社が開発した特殊な素材で作ったエンボスのドレス「ローブ・ムレ」。1着50gほどと非常に軽く、洗濯可能、速乾性が高い上にシワにもならず、温かくて燃えない生地という触れ込みだった。
コロナ時代に再注目したいフェースシールド
コスモコールには宇宙的・未来的なアクセサリーとしてフェースシールド(という名前 がついていたわけではないけれど……)が発表されていた。今の時代こそ、実用を兼ねたおしゃれなフェイスシールドの発売希望!
1972 年西ドイツで開催されたミュンヘンオリンピックのユニホーム。P ロゴマーク 入りの、フェースシールドのような、はたまたサンバイザーのような……大胆な形のサン グラスがかっこいい。後ろに見える会場の建物も相まって、この時代に思い描かれた未来の世界のようだ。
text: Eri Nishimura
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