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森星が自分と向き合うために大切にしていること

もりひかり/1992年生まれ。モデルとして国内外の広告や雑誌などで活躍中。2021年に設立された「tefutefu」では、創業者の一人としてクリエイティブ・ディレクターを務める。途上国の女子を支援する公益財団法人「プラン・インターナショナル・ジャパン」のアンバサダーでもある。

新しいフィールドに飛び出し、日々発見の連続で充実した毎日を送る森星。30歳を目前にして語ってもらった自分のルーツを知る大切さ、そして自分との調和を図りながら伝えていきたい未来へのメッセージとは?

モデル業のかたわら、クリエイティブ・ディレクターとして、「tefutefu(てふてふ)」を昨年ローンチ。日本文化の魅力を再編集し、世界に向けて発信するプロジェクトを立ち上げた森星の、新しいフィールドでの活躍に注目が集まっている。

「モデルとして海外を飛びまわっていると、撮影やショー、パーティなどで、さまざまな国の方とコミュニケートする機会が多くあります。ただ、日本のことを聞かれると、この国の魅力をしっかり伝えきれていない自分に歯がゆさを感じていました。そして、コロナによる渡航制限をきっかけに、可能な範囲で日本国内の地域を訪れるようになり、出会った日本の素晴らしさをもっといろいろな人に知ってもらいたいと思うように。それがこのプロジェクトを立ち上げたきっかけです」

プロジェクトのスタートは能登から。森星自身が実際に、能登の自然や農業、伝統工芸に触れることによって、彼女のフィルターを通した土地の魅力や文化を発信している。その手段は、地域の紹介にとどまらず、地元野菜や発酵食品をテーマにしたフードボックスのプロデュースなどにも及ぶ。さらに、目下取り組んでいるのは伝統工芸の輪島塗とのコラボレーションだ。「能登の名産である漆は、とてもサステナブルな植物。人肌と同じ水分量でできている漆の器は口当たりがとても心地いいんです。漆器というと、赤や黒の厳かで格式の高い器をイメージしますが、この幸せな感触をもっと多くの人に体験してもらえたらなと、私のフィルターを通した漆のタンブラーを作成中です。お茶やコーヒーを飲むひと時がもっと五感に響く、今を感じられる時間として過ごせるといいですよね」

ドレス¥504,900(エルメス/エルメスジャポン)西武池袋本店

同世代の職人とのディスカッションも楽しみの一つという。話題の中心は、伝統をリスペクトしながらも、先人の知恵をどうやって今の形にエディットしていけるか。「時代は常に変化しているから、日本で脈々と受け継がれてきた素晴らしい和の文化を、今を生きている人たちに伝えるには、違う角度で見せることも大切。それによって興味を持った人が出てきたら、もっと深掘りするかもしれないし、自分のルーツに誇りを持てるようになるかもしれない。それを強みに、次世代が世界に羽ばたいていけるお手伝いがしたいです」

彼女が最近目を向けていることは、マインドフルネス。座禅を何度か体験して、自分と調和することの大切さをより感じるようになったそうだが、マインドフルネスについて考えると、思い浮かぶのは母親だという。

「今思うと、母は昔からマインドフルネスに生きていたんだということに気づきました。例えば自分で蒔いた植物の芽が出るだけで幸せを感じられるような、身近なところにHappinessを見つけられる人。私が小さい頃から、どんなシャビーなホテルに家族で泊まろうが、持参したキャンドルとその辺で調達した手頃なワインとチーズで気持ちをアップデート。まるで我が家のように心地いい空間として楽しんでしまうのです。そんな感性は、モデルとして世界中を旅してきた私にも脈々と受け継がれています。どんな状況でもその時々の幸せを感じられる、そういう心の豊かさこそ、生きていくうえで必要なことだと、最近さらに実感するようになりました」

4月でいよいよ30歳。自分を整え、内面の調和が取れるようになってきたという今は、どんな30代を迎えられるのかが楽しみだという。心の豊かな母に育てられた森星が、今は、母なる大地との対話を楽しんでいる。自然のパワーを吸収した彼女を通して、我々にどんなメッセージを伝えてくれるか楽しみだ。

関連情報
  • ©︎marie claire/photos: Yusuke Miyazaki〈SEPT〉 / styling: Shino Suganuma / hair: ASASHI〈ota office〉/ make-up: fusako〈ota office〉/ model: Hikari Mori〈IMAGE〉/ text: Atsuko Kobayashi / direction & edit: Naoko Kikuchi

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