「シャネル」の2026年秋冬 オートクチュール コレクション。その舞台裏ではショーの直前まで職人たちの手による緻密な作業が続く。メゾンに受け継がれるサヴォアフェールとともに、マチュー・ブレイジーのクリエイションを支える、カンボン通り31番地のアトリエ。その創造の裏側を「マリ・クレール ジャポン」が独占リポート。
2026年秋冬 オートクチュール コレクションが7月、パリで発表された。「シャネル」のアーティスティックディレクター、マチュー・ブレイジーにとって2度目となるオートクチュール。「おとぎ話」を着想源に、花々や自然のモチーフを随所にちりばめながら、現代を生きる女性の姿を描き出した。その一着一着を形にしているのが、熟練した職人たちが働くオートクチュールのアトリエだ。
「シャネル」の創造の中心であり続けているパリのカンボン通り31番地。ブティックやオートクチュールのサロンを擁するこの歴史的な場所には、メゾンのクリエイションを形にするアトリエも構える。ジャケットやスーツなど構築的な服を仕立てる「タイユール」、ドレスを中心に柔らかな素材を扱う「フルー」、「シャネル」を象徴するブレードを専門に手掛ける「ガロン」だ。マチューのアイデアを起点に、職人たちはトワルを組み、素材を選び、縫い上げながら、シルエットや布の動き、ボリュームを細かく調整。糸を組み合わせてテキスタイルに表情を生み出し、ブレードをつくり、表からは見えない裏地にまで趣向を凝らす。マチューも定期的にチームと時間を共有し、各アトリエのプリミエールたちと対話を重ねながら完成形をつくり上げていく。メゾンのコードを受け継ぎながら、新たな表現へとつなげていく、いわば“ラボラトリー”のような場所だ。
職人たちは長年培った技術や経験を生かし、ときに専門性を持ち寄りながら制作を進める。その仕事はショー直前まで続き、最後の瞬間まで細かな調整が重ねられる。そして、アトリエでの仕事はショーで終わらない。発表されたクリエイションは世界各国の顧客のもとへ。フィッティングを重ね、個性や願いを反映しながらその人だけの一着が仕立てられていく。
想像力を惜しみなく注ぎ、ひとつの夢を一着の服に。受け継がれてきた「シャネル」のDNAは、職人たちの手を通して、新たな創造へとつながっていく。そこには、人の手から生まれるオートクチュールならではの豊かさが静かに息づいている。

オートクチュールは、伝統的な手仕事を大切にする、いわば工芸の世界です。その根幹にあるのは職人の手による技術ですが、私が学んだ3Dの設計技術も、お客様の体型を立体的に捉え、どのようなボリュームやプロポーションが美しいかを見極める上で、大切な土台になっています。一方、「シャネル」の仕立てで何より重視するのは、生地本来の表情やモチーフを生かしながら、どこにラインを置き、どのようにカットするかを見極めること。マチューが描く世界観に深く共感することで、細かなディテールまで表現することができました。次世代に受け継ぎたいのは、こうした手仕事の技術と、どれほどドラマティックな表現であっても、服は人が身につけ、動くためのものだという考え方。それこそが、「シャネル」のオートクチュールに息づくDNAだと思います。









