フランスのライフスタイルブランド「AIGLE(エーグル)」が、気鋭のブランド「SETCHU(セッチュウ)」の桑田悟史さんとコラボ。9月16日に発売予定のカプセルコレクションは、熱心な太公望で、アウトドアカルチャーに精通する桑田さんの視点で再解釈。控えめでありながら「エーグル」の伝統と機能性を踏まえ、洗練されたスタイルだ。
アウトドアウェアを新たな視点で再解釈
1853年創業の「エーグル」は、フランスで製造されているアイコニックなブーツをはじめとするアウトドアウエアなどで有名なライフスタイルブランド。その「エーグル」が限定カプセルコレクションに選んだ相手は、桑田悟史さん。2020年に自身のブランド「SETCHU」をスタートさせ、2023年にはLVMHプライズのグランプリを受賞。ブランド名の由来である「和洋折衷」を独自の解釈で随所に盛り込んだスタイルで注目を集めている。

今回のカプセルコレクションは、桑田さんの得意とするテーラリングの要素を取り入れながら、パーソナルな世界観も反映。クラシックなスタイルに現代的なニュアンスを盛り込み、機能性とエレガンスが共存するものとなっている。
メンズ、レディースがあり、コートやジャケットの一部はジェンダーレス。色は、ブラック、ベージュ、カーキを基調に、自然の中に溶け込んでいく色調を採用。桑田さんの持ち味である「折り紙」の発想から、折り畳み、広げ、変化するボリュームや、開閉によって新たなシルエットと着心地の良さを生み出すトレンチコート、サファリジャケットなど、体の動きや体形にやさしくなじみ、着たときの快適さを追求した。

またブランドを象徴するコードを再構築し、A字形のプリーツ、シグネチャーとなるダブルストライプ、そして桑田さんの世界観をさりげなく折り紙の要素を入れて表現した新たなロゴなども登場。Aラインはコレクション全体を通して、力強く構造的なグラフィックシグネチャーとなっている。
「日仏の文化が交差する中でのさじ加減」
桑田さんに、今回のカプセルコレクションに込めた思いやこだわりについて聞いた。
──コラボの話が来たときはどう思いましたか。
「エーグル」は自分のブランドである「SETCHU」と使用する生地も価格帯も違います。ふだん自分のブランドではしないことなど、まったく違う観点から服作りと向き合えるワクワク感がありました。一方、どこまで着る人を満足させられるかという不安と期待も交錯しました。
──「エーグル」というブランドのイメージは?フランス人なら誰でも知っている由緒あるブーツのブランドで、フランスで作られているという知識はありました。
──今回のコラボで、桑田さんにまかされた役割とはどんなものでしょう。とにかくフランス人にとってなじみがあり、いろんな人に話を聞いても「家にブーツがある」というようなブランドですから、今の「エーグル」のお客さまを大事にしつつ、さらに新しいお客さまもついたらいいなと思って、取り組みました。
──「SETCHU」とはかなり異なりますね。自分のブランドは自分のアイデンティティーがストレートにでます。ブランドを始めたときから、芸術的なものを目指しました。かなりコンセプチュアルなものに近いと思います。最高級の素材を楽しんでもらい、ラグジュアリーな旅に特化した服。顧客には建築家やギャラリーのオーナーなどが圧倒的に多いのです。一方、「エーグル」は特に客層を絞り込まず、雨の日に着る服など、プロダクトデザインに近いという点でも違います。
──今回のカプセルコレクションでは、エーグルの全体像やイメージを崩すことなく、「神は細部に宿る」といった感じで、ちょっとしたところに桑田さんらしさが表現されているように思いますが。でしゃばってデザインをする必要がないと思いました。今のお客様も満足して商品を買っているので、より満足度をあげるために、サラダで例えればドレッシング的要素が強いのかなと思います。ドレッシングを加えることによって、サラダが一層おいしくなる感じです。
──こうしたバランスにさじ加減があるのでしょうか?僕はさじ加減ってものが大得意なんです。「SETCHU」がそう。日本とフランスの文化が交差する中で、そのバランスがまさにさじ加減。「エーグル」の場合、ブランドそのものにフランスというプラスアルファのヘリテージがついています。だから、「ALL ABOUT A(Aのすべて)」で、エーグルを象徴するAのタグを真田ひもで作ったり、Aラインを取り入れたりしました。遠くから見てもAラインでエーグルとわかるようになっています。
──ほかにこだわった点は?フィット感です。プレタポルテなので、全員の体形に合わせるのは難しいですが、フィットの技術を生かしました。無駄なシームラインは一切入っていません。また、アームホールや袖の幅、そして機能性も含めて、実際にグリーンランドで着用してテストしました。自分で着てみて、「重ね着をしたらこういうふうに着ることになるから、こういうジャケットはもう少し大きいほうがいい」など、細かい点をチェックしました。見栄えも重要ですので、自分の両親を想像して、彼らが着ても若すぎずかっこよく見えるか、とか逆に若い人たちを想像したりもしました。
4月に京都で開催されたイベントでは、桑田さんは「AIGLE×SETCHU」の服を着て釣りを楽しんだ
ほかに、「エーグル」では使わないと言われたシャイニーな生地を、Aラインを強調するのに使いました。ただ、サステナブルでありたいと思い、環境に負荷がかからず、一緒に働く人たちの仕事時間も増やさないことを心がけ、常に売れている色の布を使いましょう、とみんなに伝えました。
デザインは僕にとって子どもみたいなもの。時代が変わってもコカ・コーラが存在し、多くの人に愛されるように、僕の作ったものが残って、将来にわたって使ってもらえるといいなと思っています。
text: Izumi Miyachi (The Yomiuri Shimbun)
Profile
桑田悟史
1983年、京都府生まれ。高校卒業後に、ビームスで働き、21歳で渡英。サヴィルロウの「ハンツマン(HUNTSMAN)」などでテーラリングを学びながら、「セントラル・セント・マーチンズ」に通い、ガレス ピュー、ジバンシィ、Ye(カニエ・ウェスト)のオフィスなどで経験を積む。2020年に自身のブランド「SETCHU」をスタート。2023年、LVMHプライズのグランプリを受賞。