華麗なハイジュエリーウォッチから超複雑時計まで、幅広く充実したコレクションを誇る「ブルガリ」。その時計デザインを統括するファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニが来日し、“セルペンティ”“モネーテ”など名品ウォッチ誕生のビハインド・ザ・シーンを語ってくれた。現在の最新トレンドとは、そしてブルガリ家のストーリーとは。
──このところメンズウォッチはサイズが小さくなり、レディスは大きくなりつつあります。ジェンダーレス化のトレンドは時計界にも及んでいますね。
トレンドではなく、もはや文化です。メンズの“オクト”ウォッチを身に着けたいという女性は少なくありませんし、“セルペンティ”を試してみたいという男性からのリクエストも増えています。レッドカーペットで男性セレブリティが“セルペンティ トゥボガス”を着けたこともあります。紳士たちがディナーの際にジュエリーを身に着けるのも、ひとつのスタイルのあり方となっています。
時計“セルペンティ デア シークレット ハイエンドウォッチ”[ホワイトゴールド×ダイヤモンド×エメラルド、ケース径14mm、手巻き]参考商品(ブルガリ/ブルガリ・ジャパン)
──“セルペンティ”を男性が、ですか?
ええ。昔、ロンドンで見かけたのが、“セルペンティ”のジュエリーウォッチを試着している2人の若い紳士でした。彼らは蛇のヘッド部分を開けたり閉めたりしながら「なんて美しいんだろう!」と歓声を上げていました。それで、男性のための“セルペンティ”があってもいいのかもしれないな、と気づいたのです。10年ほど前のことでした。
結局のところ、蛇は普遍的なシンボルであり、隠された意味や歴史をはらんだミステリアスなモチーフなのであって、男性向けでも女性向けでもありませんよね。だから思い込みやルールなど捨てて、着けたいなら自由に着けて楽しめばいいのです。
〈上から〉ブレスレット“トゥボガス”[ステンレスティール×イエローゴールド]¥521,400 時計“セルペンティ トゥボガス スタッズ カプセル”[ステンレスティール×イエローゴールド×ダイヤモンド×マザーオブパール、ケース径35mm、クォーツ]¥2,398,000(ブルガリ/ブルガリ・ジャパン)
──新作“セルペンティ トゥボガス スタッズ カプセル”は、ゴールドのスタッズが印象的です。
創業者の孫、ジャンニ・ブルガリが1970年代にデザインしたコレクションの再解釈です。ジャンニはゴールドとスティールを組み合わせた先駆者で、スタッズをあしらった“トゥボガス”のチョーカーをデザインしました。とがったスタッズはアグレッシブな印象を与えるパンクなモチーフですよね。
ですが彼は、そんな常識を完全に覆してみせたのです。ゴールドとスティール、パワーと優雅さ、男性的なものと女性的なものをリンクさせる鍵が、スタッズでした。この魅惑的な70年代スタイルを現代の時計に落とし込むアイデアは、コロナ禍以前から頭にありましたが、機が熟してついに実現に至ったわけです。
古代コインに刻まれているのはローマ皇帝カラカラの横顔。シークレットウォッチ“マグリア ミラネーゼ モネーテ”[ピンクゴールド×イエローゴールド×ダイヤモンド×マザーオブパール、手巻き]参考商品(ブルガリ/ブルガリ・ジャパン)
──現在は多くのラグジュアリーメゾンがアーカイブを振り返り、かつての名品を現代風にアレンジしています。
過去と現在の融合はデザインの最もチャレンジングな部分です。単なるコピー&ペーストではなく、ブランドの魅力を「再発見」しなければならないのですから。例えば“モネーテ”は古典と現代性が見事に融合していますが、これはジャンニ・ブルガリとその弟ニコラの情熱から生まれたジュエリーです。ニコラ・ブルガリは世界的な古代コインのコレクターで、そこからジャンニがコインをあしらった壮麗なジュエリーを生み出しました。
“マグリア ミラネーゼ モネーテ”に搭載された世界最小クラスの丸型手巻きムーブメント“BVP100 ピコリッシモ”と、希少な古代コイン
──その名品“モネーテ”を時計にしたコレクションはコレクター垂涎(すいぜん)の的になっています。
“モネーテ”ウォッチ誕生のきっかけは、ある顧客の依頼です。コインを使った時計がほしい、との注文でした。そこでパオロ・ブルガリ(ジャンニの弟、ニコラの兄)に意見を求めたところ、「ファブリツィオ、コインを文字盤のカバーにしたらどうだい」といわれてハッとしました。いいアイデアです。そしてブルガリ家のルートで紀元前の古代コインを手に入れ、コインのカバーが開閉するウォッチを完成させました。コンスタンティヌス大帝が彫られたコインでした。
──古代コインは価格が高騰し、極めて入手困難と聞いていますが……。
その通り。もはや国立博物館にあってもおかしくないような美術遺産ですからね。モナ・リザを腕に着けるようなものです。イタリアでは文化庁への申請が必要ですし、貴重なコインを傷つけないようにするための非常にデリケートな細工も要求されるのです。
極小の自動巻きムーブメント“BVS100 レディ ソロテンポ”を搭載。時計“トゥボガス マンシェット”[イエローゴールド×ダイヤモンド×スペサルタイトガーネット×シトリン×ルベライト×ペリドット×アメシスト×ブルートパーズ、ケース径16mm、自動巻き]参考商品(ブルガリ/ブルガリ・ジャパン)
──「ブルガリ」ではハイジュエリーウォッチにも機械式ムーブメントを入れています。そこまでこだわる理由は? クォーツではだめなのですか?
ハイジュエリーウォッチこそ、機械式ムーブメントを入れるべきでしょう。ガラディナーに出席するために金庫を開け、いざ時計を着けようと思ったら電池が切れていた。もう日も暮れているから電池交換もできない。さあどうします? 機械式ならそんなことは起きません。
今、最も重要なトレンドのひとつとして、女性の機械式時計の愛好家が増えていることが挙げられます。とりわけ日本のコレクターの中には、この分野の深い知識を持った女性が増えていることを実感しています。ハイジュエリーウォッチのための極小機械式ムーブメントはとても希少であり、私たちの誇りなのです。
text: Keiko Homma
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ブルガリ・ジャパン tel. 0120-030-142
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