イタリアのヴェネツィアを過ぎてさらに1時間程東へ進むと、ほぼ隣国スロヴェニアとの国境沿いに行きつく。そこにトリエステがある。トリエステは、かつてオーストリア=ハンガリー帝国に支配されていた時代の文化や港町の持つ国際性が色濃く残る独特な街。アドリア海に面した貿易港を擁するため、経済上重要な拠点になっている。
そのトリエステで毎年開かれるファッションコンペティション「ITS(INTERNATIONAL TALENT SUPPORT)CONTEST」は、今年で24年目を迎えた。2002年、バルバラ・フランキンによって創設された「ITS」は単なるファッションデザイナーの登竜門にとどまらず、ファッションのアート的な側面やその文化的な役割について追求する姿勢を特徴としている。参加者は主に学生で、商業的な成功よりも新たな価値観の創造が重視される。「バレンシアガ」のデムナや「シャネル」のマチュー・ブレイジーら多くの才能を見出したことでも知られている。今回もファイナリストは10名。フランス、中国、英国、ベルギー、米国と国籍も様々だ。1万ユーロの賞金の他に、トリエステでの10日間のレジデンスでワークショップやメンタリングの共同体験を通じて、仲間意識を深めた。
「ITS CONTEST 2026」の授賞式。創設者のバルバラ・フランキン(中央)と10名のファイナリスト

10名のファイナリストの中から最優秀賞にあたる審査員特別賞に選ばれたベルギー出身のクロエ・レナーズ
彼ら10名の作品は、フランキンが館長を務める美術館ITS ARCADEMYにて展示されている。題名は「RISE & SHINE」。また、同館にて並行して企画された展覧会が「EXPOSURE」。レディー・ガガのスタイリストで知られるトム・イーレバウトが監修した。レディー・ガガ、ビヨンセ、ハリー・スタイルズなど、現代のスターたちが着用した衣装やアクセサリーを展示するに及んで、アイデアの構想からフィッティング、最終イメージに至るまでのスタイリングの過程を見せることで、その意味を問う、という展覧会である。作る側に立つファッションとイメージを伝達する側のファッション。ファッションデザイナーとスタイリストの協業が続きながらも、これまで見過ごされがちであったスタイリストの役割に注目。単なる服の選定者ではなく、イメージを構築するという立場のクリエイターであることを強調する視点から構成されている。謂わば、ファッションを「他から見られるメディア」として捉えた同展は、「ITS」の コンテストをさらに肉付けする、新しい試みである。
市内に掲示された「EXPOSURE」のポスター

スターたちの衣装がずらりと並ぶ「EXPOSURE」展の展示
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【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】©︎marie claire/text: Miyuki Yajima