「ロジェ ヴィヴィエ」が発表したピエス ユニーク コレクション「アトリエ アニマリエ」。実験精神と卓越したサヴォアフェールを融合させ、バッグとシューズを生み出す背景と哲学を、デザイナーの言葉から解き明かす。
トスカーナの靴職人の家庭で育ち、19歳になった頃にはシューズデザイナーに必要なノウハウをすでに身につけていたというゲラルド・フェローニ。「プラダ」等で経験を積み、ファッションへの情熱が“シューズデザイナー”として実を結んだという。
「デザイナーは世の中で起きていることを“代弁”する存在」だという彼は、さまざまなインスピレーションを、デザインや色、装飾、フォルムへと昇華する。「自然界の有機的なモチーフを引用しますが、現実とかけ離れた色彩、羽根やスパンコール、ストーンの組み合わせによる“意外性”で現代的な要素を加えています。一方で、オペラや映画から得た、物語性、身体が自然と動き出すようなエモーションも大切。それらが与えてくれる感情をデザインに込めています」。数ある彼の好きな作品の中でも特にお気に入りが、オペラはロッシーニの『シンデレラ』、映画は『永遠に美しく…』(1992)だというのも頷ける。
一点もののコレクション「アトリエ アニマリエ」では、量産とは異なる価値を追求する。「何百万個も複製されることのない、世界で一つだけ存在するオブジェクトに取り組みたかったんです。改めて職人たちと向き合い、スケッチを持って工房に行き、何度も試作を重ねて完成させます。一点ものの面白さは、制作のプロセスが極めて直接的で自由なこと。私が触れて作り上げたバッグが、そのまま顧客のみなさまのワードローブに届く。だからこそ純粋に作ることに集中できるんです」
PARADIS NOIR(パラディ・ノワール) サテン地に黒いクリスタルが輝く幻想的なアニマリエ作品。輪郭を縁取っているのは羽根。着想源は、1987年にパリ装飾美術館での展覧会のためにムッシュ ヴィヴィエがデザインしたシューズ。模様は自然界のものではなく、メゾンが想像した「マキア(斑点模様)」

PORTRAIT DU JAGUAR(ポートレ・デュ・ジャガー) ムッシュ ヴィヴィエが手がけたレオパード柄をイメージ。手書きで模様を描いた後、複数人の職人が刺繍を施した

TIGRESSE FOLLE(ティグレス・フォル) 鮮やかなフューシャのサテン地をベースに多色の刺繍とフリンジでタイガーを描いた作品。3作品、いずれも制作時間は70時間に及ぶ
ブランドの歴史をまとめた書籍の刊行についても尋ねてみた。「ロジェ・ヴィヴィエ本人は数多くのものを生み出し、ファッションを変革しました。また、ブランドが美しい過去を持ちながら今も息づき、未来へ続くことを新しい世代に伝えたい。こうした思いを伝えるために、本という媒体は最も重要な役割を果たしていると言えるでしょう」。このような本に自分が関われたことが誇らしいと語った。
Rizzoli 社より刊行された書籍『Roger Vivier: Heritage and Imagination』。「アトリエ アニマリエ」と同時に発表された
関連情報【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】©︎marie claire/photos: ©Roger Vivier / interview & text: Aika Kawada
Profile
ゲラルド・フェローニ

「ロジェ ヴィヴィエ」クリエイティブ・ディレクター
イタリア出身。幼少期から靴づくりに親しみ、「ヘルムート・ラング」「ミュウミュウ」「プラダ」「ディオール」を経て、2018年に「ロジェ ヴィヴィエ」のクリエイティブ・ディレクターに就任。独自の視点で装飾性と色彩を用い、現代的なエレガンスを表現する。