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宮城と沖縄。高度経済成長期の高揚を地方の視点で振り返る【what to do】

雑多なモノを通して浮かび上がる「昭和の欲望」

圧巻は、80年代の男子学生のものと思われる個室の再現。ビールケースを並べて作ったベッドや壁に貼ったアイドルのポスター、そして洋楽のレコードジャケット。ベッドの枕元には男性誌もこっそりと忍ばせてある芸の細かさ! 恐らく、50代以上の人には懐かしく感じられるのではないか。当時を知らないスマホネイティブの世代も海外の風俗でも見ているような雰囲気で興味深そうに展示を見つめていた。確かに雑多なモノを通して、タイトルにもある「昭和の欲望」の有りようがダイレクトに伝わってくる。

仙台市内の喫茶店などに置かれていたマッチ箱のコレクション。そう言えば、子供の頃、マッチ箱を集めている大人が確かにいた(撮影・高橋直彦)

展示資料目録に掲載された点数は342。もっとも、「懐かしの映画ポスター」は目録では1点としてカウントされているが、実際には15点のポスターが展示され、参考展示品も多いことから実際の展示点数はさらに増えるはず。喫茶店のマッチや映画ビデオのジャケットなど、個人蔵のものも目立ち、よくこれだけ集めてきたものだと恐れ入る。「昭和期の生活文化資料は公的な機関によってアーカイブされていない場合が多い上、頼みの個人コレクションも東日本大震災の時に被災して、捨てられてしまったケースも多い」と企画を担当した同館学芸部主任研究員の渡邊直樹さんは話す。同展は9月11日まで。関心のある人は見逃すと後悔しかねないので、何とか機会を作って宮城へ急いでほしい。

Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。1970年、小学校1年生の時に大阪万博を見に行って、鼻血が出るほど興奮した記憶がある。周囲の人気は今ひとつだったが、個人的に好きだったのがソ連館。その時の例えようもない楽しさから、75年の沖縄海洋博への参観も親にねだったが、叶わなかった。今回、沖縄で海洋博がらみの展示を観ていて、その時の切ない思いがかすかに甦ってきた。

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