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宮城と沖縄。高度経済成長期の高揚を地方の視点で振り返る【what to do】

「欲望の昭和」展で再現された男子学生の部屋。子供の頃、友人の家へ遊びに行って、ビールケースのベッドがあり、少しだけうらやましい気がしたことを思い出した(撮影・高橋直彦)

知的好奇心にあふれる『マリ・クレール』フォロワーのためのインヴィテーション。それが”what to do”。その時々の参観すべきトピックを取り上げて紹介する。今回は、戦後地方の高揚感について。とりわけ消費文化が花開いた高度経済成長期に注目したい。これまでも、東京五輪や大阪万博などを通して、大都市の視点で、当時の熱気が語られる機会は多かったが、地方はどうだったのか? そうした疑問に答える優れた企画展が宮城と沖縄で開かれている。

この夏、東北をふらりと旅して、街で面白そうな企画展のポスターを見かけた。JR仙台駅から東北本線で約14分、国府多賀城駅に隣接する東北歴史博物館(宮城県多賀城市)で開かれている「欲望の昭和~戦後日本と若者たち~」展。懐かしい雰囲気をわかりやすく強調したポスタービジュアルから、企画会社の持ち込んだレトロ系の催事ではないかと少し不安になったが、杞憂だった。

戦後の生活を彩った様々な家電やオーディオ機器類なども豊富に展示されている

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地方の視点で消費文化を丹念に紹介

タイトルで「戦後日本」と広く構えているが、実際の展示は「東北」や「仙台」にも焦点を当て、「地元」の視点で戦後の消費文化を丹念に紹介してあり、見応えがある。例えば、1970年に開催された大阪万博に先立って、67年に仙台市で開かれた「東北大博覧会」を紹介。在日米軍のキャンプ跡地が会場で、テーマは「未来をつくる科学と産業」。観客動員目標を最低80万、最高100万と想定したが、実際には127万人が訪れた。会場の写真からも、経済成長期の仙台の熱気が伝わってくる。

東北大博覧会の写真。大阪万博以前では、地方博覧会の中で最大規模だったという(撮影・高橋直彦)

さらに地元放送局の開局資料や、地元ラジオ局の深夜放送に寄せられたリスナーからのはがきなども展示してあり、見ていて飽きない。82年に大宮-盛岡間で開業した東北新幹線についてもコーナーを設け、当時の記念入場券や湯飲みなどを通して、その盛り上がりを感じられる。仙台駅周辺に相次いでオープンした百貨店などの商業施設についても紹介。地元百貨店のチラシや新聞広告なども見ていて楽しい。

東北新幹線の開業によって、首都圏がより身近な地域になった(撮影・高橋直彦)

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Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。1970年、小学校1年生の時に大阪万博を見に行って、鼻血が出るほど興奮した記憶がある。周囲の人気は今ひとつだったが、個人的に好きだったのがソ連館。その時の例えようもない楽しさから、75年の沖縄海洋博への参観も親にねだったが、叶わなかった。今回、沖縄で海洋博がらみの展示を観ていて、その時の切ない思いがかすかに甦ってきた。

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