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デジタルを駆使して複製された名画にアウラは宿るのか? その虚実を山形県米沢市で体感する【what to do】

手前が尾形光琳の「風神雷神図屏風」。左奥が「群鶴図屏風」(フリーア美術館が原本所有)、その右隣にちらりと見えるのが「松島図屏風」。右側に映っているのが「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」(大英博物館が原本所有)(撮影・高橋直彦)

何か面白いことが起きていないか、知的好奇心にあふれる『マリ・クレール』フォロワーのためのインヴィテーション。それが”what to do”。その時々の旬のトピックを取り上げて紹介する。今回は複製品。「何だ、ニセモノか」と敬遠するなかれ。最新のデジタル技術を駆使して、プロでも見分けが付かない精巧な複製が可能になっている。ベンヤミンの言うところの「アウラ」とやらも帯びかねない出来。恐れ多い国宝の屏風絵などにもガラスで隔てられず間近に観られ、展示会場で名作の前だけに蝟集する善男善女の後頭部にうんざりすることもない。海外で門外不出となっている美術作品に気軽に接することができるのも魅力だ。

8月下旬、福島市に取材へ行ったついでに、山形新幹線に乗って「上杉の城下町」、米沢へ足を伸ばした。福島駅から30分ほど北上。目的地は米沢市上杉博物館。米沢城址で、上杉謙信を祀った上杉神社に隣接している。何と言っても「お宝」は狩野永徳作の六曲一双の「上杉本洛中洛外図屏風」(1565)。30年ほど前、同館で年に何度かのご開帳で実物を拝見したことがあるが、照度を落としたガラスケースの前は黒山の人だかり。おまけに京の街と郊外を俯瞰した屏風絵には2500人近い人が描き込まれて、じっくり観ていると何時間あっても足りない。早々に諦めて館外に出て、近くの食堂で米沢牛のステーキを地場の赤ワインで流し込み、憂さを晴らしたことがあった。

Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。個人的な好みは「納涼図屏風」。トーハクで何度か実物を観ているが、元々鈍感なので今回の展示作品と見分けがつかない。こんな老後を送りたい! 他の屏風に比べると小ぶりなので、いっそのこと手許に置いておけないかと妄想したりもするのだが……。

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