鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」【世界で最も売れた絵葉書はパリのあの建物】
2022.8.2
2022.8.2
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絵葉書というものが市民権を獲得したのは、それから20年近くたった1889年のこと。この年、パリで開催された万国博覧会を記念して、日刊紙「フィガロ」がリボニー描くところのエッフェル塔の絵葉書を30万部刷ったのが流行の始まりとされている。
写真絵葉書第1号は、マルセイユの業者が作ったもので、以後ありとあらゆるジャンルの写真絵葉書が製作された。とくにエロチックな写真絵葉書はパリ土産として喜ばれた。現在では、この世紀末からベル・エポックにかけて大量に発行された写真絵葉書が熱烈なコレクションの対象となり、毎年、何回かパリで絵葉書市が開催されている。
日本とフランスのちがいでおもしろいのは、フランスにならった日本の官製葉書が今日まで生き延びているのに対し、フランスで葉書といえば即、絵葉書を意味するようになってしまっている点だろう。ただし、フランスでも官製葉書はまだ存在してはいて、郵便局で買うこともできるが、この官製葉書は絵葉書の場合と同じ料金の切手を貼らなければならないので、利用する人はあまりいないようだ。
では、これまでに世界中でもっともよく売れた絵葉書の絵柄は何かというと、これが、やはりというか意外というかエッフェル塔である。1889年以来50億枚以上というからすごい。絵葉書はエッフェル塔に始まり、エッフェル塔に終わるということなのだろうか。
【グリの追伸】シャルトリューって、みんな同じような灰色なので、識別の手がかりは耳の形と髭の生え際の違いだそうです。わかるかな?
text&photos by Shigeru Kashima
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鹿島茂
かしましげる 1949年横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。リンクを
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