ジョン・フォード関連の上映会パンフレットや雑誌類。ぼけてしまっているが、左端が今回の上映会のチラシ。パート1の上映作品の写真と短い口上の入った保存版!(撮影・高橋直彦)
そして今回、開催されるフォードのレトロスペクティブである。上映する作品を選んだのは蓮實さん。スクリーンに投射された映像の細部より、その社会的背景を饒舌に解説したり、筋立てを重視する貧相なファスト映画なるものが社会問題になったりする中、フォードの作品が多彩な細部に満ちあふれていることを、蓮實さんの批評を通して教えられた。フィルムセンターの上映会のパンフレットにも「フォードと投げること」というタイトルの論考を寄せていて、当時、細部に眼を凝らすことで作品が艶めかしく立ち上がってくることをスクリーン越しに実体験した。

そうした蓮實さんのフォードに関する論考をまとめた『ジョン・フォード論』が7月下旬に文藝春秋より発売されたのを記念して、彼のセレクションによる上映会なのだから面白くないはずがない。『ジョン・フォード論』の「とりあえずのあとがき」の中で「フォードに関する決定版的な著作」を執筆中だというソ連軍の将校のエピソードを引きつつ、蓮實さんも似た出来事を「ふと口にしてみたいなどと不遜なことをいいたい気がしないでもない」と記しているように圧倒的に充実した内容で、全編「映画のような書物」なのだ。本を読み終わると、映画で描かれる艶やかな毛並みの馬や大地にそびえる大樹、登場人物が無造作に行う「投げる」という身振り、そして荒野に翻る白いエプロンといった細部の豊かな変奏から目が離せなくなるはずだ。この本を参照しながら作品を観るか、作品を観てから自らの動体視力を同書で確認するかはお任せするが、いずれにしても今回の上映会には必携の書物である。

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