熱心な園芸家でもあったモネは、美しい自邸の庭を「私の最高傑作」と呼んだ。刻々と表情を変える水面と反射は、「睡蓮」シリーズをはじめ、数々の名作を生むインスピレーションの源となった
自然のなかを移ろう光と影。その一瞬の「印象」を鮮やかな色彩で描いた印象派の画家たち。その中心にいたのが、クロード・モネだ。なかでも「睡蓮」の連作は、今なお世界中の人々を魅了し続ける代表作。その傑作の源泉となったのが、フランス・ジヴェルニーにある自邸の庭である。水面に映る空や雲。風にそよぐ柳。季節ごとに咲き移る花々。モネが生涯をかけて愛した風景だ。
その庭の美しさを体感できるもうひとつの場所が、高知県の「北川村『モネの庭』マルモッタン」だ。本場の景観を受け継ぎ、その名を冠することを認められた世界で唯一の庭である。
誕生のきっかけは、村おこしのため「モネの庭」を造りたいと願った職員たちの情熱だった。縁もゆかりもない本家へ幾度も足を運び、理解を求め続けた。その熱意が実を結び、ジヴェルニーと同じ小さな村であることやモネの精神に寄り添う姿勢が評価され、数ある計画の中から北川村が選ばれた。そして、ジヴェルニーの庭園長らと交流を重ねながら庭は整えられ、2000年に開園した。
ここでは、まるで名画のなかへ迷い込んだような感覚に包まれる。モネの世界を思わせる風景が、目の前に広がるからだ。この庭には、北川村の気候風土が育む独自の魅力もある。モネが夢見た青い睡蓮や、地中海の光と色彩をイメージした「ボルディゲラの庭」など、彼が憧れた景観が、時と場所を超えて形となっている。
美しさを支えているのは、日々庭と向き合うガーデナーたち。本家の監修のもと、モネの精神を追い続けている。現在進められているリニューアルも、その高い志の延長線上にあるもの。「水の庭」の柳や遊歩道にも手が加えられ、さらなる完成度を目指しているという。
庭園スタッフは単なる再現にとどまらず、モネの色彩感覚を研究し、その感性を今に伝えている。日本文化に深い関心を寄せていたモネが、もしこの庭を訪れたなら、水面に映る空の色に足を止め、風に揺れる花々を見つめながら、静かに筆を執ったかもしれない。
人と自然が響きあう風景の中で、私たちはいまも、モネが見つめ続けた光と色彩に出会うことができる。
北川村は高知県東部の山と森に抱かれた小さな村。面積の約95%を森林が占め、日本有数のゆずの産地としても知られる。また、源泉100%の温泉や、坂本龍馬の盟友として知られる幕末の志士・中岡慎太郎ゆかりの史跡も点在。深い緑と清流に恵まれた里山には、ゆるやかな時間が流れている。北川村「モネの庭」 マルモッタンを訪ねたなら、ぜひ一日、この村に身を置いてみたい。庭の美しさだけでなく、土地の静けさや豊かな自然が、旅の余韻をいっそう深いものにしてくれるはずだ。
フランスとは気候風土の異なる土地でモネの精神を生かしながら高知の自然と融合した庭を目指しています。今年12月から翌2月の冬期休園中に行われる「水の庭」のリニューアルでは、睡蓮を間近でご覧いただけるよう、園路の構成を見直して池との距離を近づけるほか、柳の植え替えなども行う予定です。
北川村「モネの庭」マルモッタン
住所:高知県安芸郡北川村野友甲1100番地
tel:0887-32-1233
入園料:一般1000円、小中学生500円、小学生未満無料
開園時間:9:00 ~17:00(最終入園16:30)
休園日:6月~10月の第1・第3水曜日 12月1日~2月末
公式サイト:https://www.kjmonet.jp/
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