Installation view, CERTAINLY TOKYO, Tokyo, 2026. Courtesy Serakai Studio. Photo: Kei Miyajima
香港・東京・バンコクに拠点を構え、アートや建築、デザイン、ファッションを軸に活動するカルチュラル・ラボ「セラカイ・スタジオ」。今年3月に香港でコンテンポラリー・サロン「GOLD」をオープンした彼らが、海外で初となるポップアップ展示「CERTAINLY TOKYO」を表参道で開催している。
この展覧会は、作品を展示するだけではなく、街に人々が集える開かれた場所をつくり、東京でどんな出会いが生まれるのかを模索する場でもあるとか。
Sierra ,0084669,Courtesy Estudio Santiago Sierra展覧会の着想源となったのは、アメリカの作曲家、ラ・モンテ・ヤングが1960年に発表した《Composition 1960 #10》。「直線を引き、それに従え」というシンプルな指示から出発し、大竹伸朗やサンティアゴ・シエラら9組のアーティストが、それぞれの視点で“予測できないこと”の面白さを表現している。
展示を案内してもらったあとキュレトリアル・ディレクターを務めるトビアス・バーガーさんと、デベロッパーでもある共同創設者のベンジャミン・チャさんに話を聞いた。
Installation view, CERTAINLY TOKYO, Tokyo, 2026. Courtesy Serakai Studio. Photo: Kei Miyajima
──まず、この空間について教えてください。
トビアス アートを見るにはギャラリーへ入るのが当たり前ですが、この展示は外からでも見ることができます。中に入らなくても、「何だろう」と足を止めてもらえたらいい。僕たちはここにいて、誰にでも開かれた存在でありたいと思っています。
──ポップアップという形を選んだ理由は?
トビアス これは僕たちにとって一つの実験なんです。香港には300平方メートルほどのサロンがありますが、東京でも同じようなことができるのか試してみたい。この街で活動し、人と出会い、一緒に何かをやってみることが、東京を理解する一番の近道だと思っています。僕は「不確かさ」は悪いことではないと思っている。やってみなければ分からないし、その先に新しい発見があります。展覧会も同じです。
──香港を飛び出し、初の海外プロジェクトの場として、東京を選んだ理由を教えてください。
トビアス 東京は、アートだけではなく、建築や工芸、ファッション、音楽など、あらゆるクリエイティブが自然につながっている街です。青山や原宿、キャットストリートを歩いているだけでも刺激があります。ブランドも建築も、この街でしか体験できないものが多くあります。
ベンジャミン 私たちは二人とも東京で長く仕事をしてきたので、20年来の友人や、近しいコミュニティもあります。香港やソウル、台北など、アジアの都市同士のつながりが以前より密になっている今、東京はその中心の一つだと感じています。だからこそ、最初の場所には東京を選びました。
Peter Robinson / Dog, 2026 / Courtesy of the artist and Coastal Signs
──東京のアートシーンをどう見ていますか。
トビアス 素晴らしいアーティストもギャラリーもあります。一方で、若い作家が挑戦できる実験的なスペースは、以前より少なくなった印象がある。だからこそ僕たちも、この街で何かできないか考えました。この先どうなるかはまだ分からないし、完成した答えがあるわけではないですが、この展覧会も、そのための第一歩になればいいと思っています。
──「サロン」という考え方を東京でどう育てていきたいですか。
ベンジャミン 「サロン」という言葉は、ヨーロッパで生まれたものですが、東京ではすでに自然に受け入れられています。アートだけではなく、デザインや建築、音楽など、さまざまな分野の人が集まり、自由に話ができる場所。その土壌は東京にもあると思います。
トビアス この場所もそうですが、もっと街に開かれた存在でありたい。24時間ライトをつけたままにしているのも、そのためです。たまたま通りかかった人が立ち止まり、作品を見てくれる。それだけでも十分なんです。
──ベンジャミンさんは「文化」をどのように捉えていますか?
ベンジャミン 私は文化をとても重要だと考えています。日本で建築家や施工会社、デベロッパーの方々と仕事をするなかで、品質へのこだわりや細部への配慮、さらに職人の仕事に対する姿勢に何度も感銘を受けました。そうした文化への深い理解があってこそ、街の価値を長く育てていけるのだと思います。
Shinro Ohtake / Poster-Original Work for JUKE/19, 1981 ©Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
「CERTAINLY TOKYO」は答えを提示する展覧会ではない。東京という街で人と出会い、何が生まれるのか。その答えは、彼ら自身にもまだ分からない。この場所からどんなつながりが生まれていくのか。セラカイ・スタジオの次の一歩に期待したい。
text: Tomoko Kawakami
「CERTAINLY TOKYO」
会場:Path Omotesando(東京都渋谷区神宮前5-6-5)
会期:2026年9月30日まで(予定)
開館時間:15:00〜18:00
休館日:月〜木
入場:無料
instagram:@serakai_studio