韓国で観客動員260万人を記録、社会現象を巻き起こしたラブストーリー『サヨナラの引力』が、7月3日(金)より日本全国で公開される。本作で初めて本格的な恋愛映画の主人公を演じたのが、俳優としてだけでなく脚本家、監督、編集者としても活動するク・ギョファンだ。来日した先日、本作への思いとクリエイターとしての哲学を語ってくれた。

『サヨナラの引力』の主人公は、ゲーム作家を夢見る不器用だけれど誠実な青年・ウノ(ク・ギョファン)。物語は2008年の夏、長距離バスの中でジョンウォン(ムン・ガヨン)と出会う場面から始まる。

ウノを形づくるうえで大きな役割を果たしたのが、キム・ドヨン監督の演出だった。『82年生まれ、キム・ジヨン』で長編映画監督デビューを果たしたキム監督は、もともと俳優出身。俳優の感覚を深く理解する演出スタイルは、ク・ギョファンにとっても新鮮だったという。
「フレームの中で俳優が自由に動けるようサポートしてくれました。決まった動線があっても、その日の現場の雰囲気で俳優が自分の感情に合う動線で動けるよう、僕らの提案を積極的に取り入れてくれた。現場の偶然というギフトを、俳優たちに与えてくれる監督です」
ムン・ガヨンと監督を交えた撮影前のリハーサル中に生まれたセリフも多く、韓国で“ムン・クーカップル”の愛称で親しまれた二人の息の合った演技は、こうした積み重ねの中で育まれていった。
また、監督という存在そのものについて、「監督それぞれの世界が存在していて、自分という俳優がその世界に投入される。作品ごとに、その監督の世界に遊びに行くような気持ちなんです」とも語った。
ーー「まるで二人と恋をし、別れを経験したかのよう」「胸が締めつけられるほどリアルな恋愛」、そんな口コミが韓国中に広がり、本作は公開2週目から逆転1位、3週連続首位という異例のロングランヒットを記録した。『私の頭の中の消しゴム』や『別れる決心』を超える260万人動員という数字について、ク・ギョファンはこう分析する。
「誰もが恋愛の経験を持っているから、自分のストーリーをこの映画に重ねられる。その経験を与えてくれる映画だからだと思います」
観る人が登場人物たちに自らの記憶を重ねてしまう理由については、「その人物が画面に登場する前にどんな恋愛を経験してきたかを想像しながら演じることで、人物の奥行きが生まれてくるから」だと語る。
キャラクターの背景までていねいに積み上げる。だからこそ、ウノとジョンウォンの関係はどこか観客自身の記憶のように感じられるのだろう。
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この映画が問い続けるキーワードがある。それが「もしもあの時……」。ク・ギョファン自身にも「もしもあの時……」と思い出すことはあるのか尋ねた。
「あまり考えないタイプなんです。そのときそのときに全力を尽くして、後悔がないよう必死にもがく。タイムマシンに乗ってある特定の時期に戻れたとしても、きっと同じ選択をすると思います」
そう答えた。しかし続けて語ったのは、印象的な言葉だった。
「ただ、映画編集者としても活動しているので、『もしも』は編集の中で解消しているんです。編集を終えた後に『もしもこうしてみたら』と思って戻ったり、別の編集を試したりする。映画を制作する中では、『もしも』をたくさん使います」
俳優だけでなく、脚本や監督、編集まで手がける彼だからこそ、ウノの姿をよりリアルに体現できたのかもしれない。
日本公開を前に高揚感に満ちたク・ギョファンは、日本の観客へメッセージを寄せた。
「観客のみなさんに会えることは、俳優としてとても光栄です。今、僕は日本のみなさんにラブレターを送って、劇場でお待ちしているような気持ちです。映画が終わってエンドクレジットが流れると、それぞれの感想があると思います。誰もが恋愛を経験している。だから、それぞれのストーリーをこの映画に重ねてみてほしいです」
初めての恋、忘れられない別れ、あの頃には戻れないとわかっていながらも心のどこかで問い続けてきたこと。誰もが胸の奥に持っているそんな記憶に、この映画はそっと触れてくる。あなた自身のストーリーを重ねながら、ぜひ劇場で体験してほしい。
text: Tomoko Komiyama
映画『サヨナラの引力』
7月3日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
監督:キム・ドヨン『82 年生まれ、キム・ジヨン』
出演:ク・ギョファン、ムン・ガヨン
2025 年/韓国/韓国語・英語/115 分/ユニビジウム/5.1ch/カラー・モノクロ / 原題:만약에 우리 / 英題:ONCE WE WERE US / 字幕翻訳:福留友子
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
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