──玄がいるシーンはパッと光が差すような明るさもありました。是枝組に参加して得た手応えは?
作品に出演できたという事実が大きいです。同時に、いま、手応えがあったと語るのはうそのような気がしています。例えばしっかりと演技指導を受けたというようなエピソードがあるなら、それが挙げられるかもしれないけど。自由に演じられる現場を経験した重みは、後から実感しそうです。

──天国にいる人とヒューマノイドとして会えるとしたら、その選択をしますか?
僕は作りたくないかも。
──なぜですか?
胸に秘めた思いを伝えられたとしても、それはあくまでヒューマノイドという“箱”に対してで、大切な人には届きません。生成AIは過去以上のものは生み出せないですし、そうなると、自分自身で納得するしかない。だとしたら、僕だけの記憶として抱えておきたいです。
──自身が揺れてしまうからでしょうか?
うーん。なんか、取り返しのつかないことになりそうで。ヒューマノイドがそばにいると過去に止まったままで未来に向かえない気がしています。
──ヒューマノイドよりも、いま、目の前にいる大切な人との関係を育みたい?
そうですね。あとはこれから出会う人との縁も大事にしたい。って、言いつつも、いざ現実になったら喪失感に耐えきれず、速攻でオーダーしてるかもしれないですけれど(笑)。
──自分を“癒やす”という視点では、ヒューマノイドの力を借りるのも一つの手段ではないでしょうか。
あー、たしかにそれはありますね。健介たちのようになれれば理想的ですけれど、僕は違いそう。ヒューマノイドの存在によって、自分がどうなるかわからないのが怖いです。
──本作には喪失、過去、未来、家族、AIといったように「何かと接続する」というテーマも根底に流れているようにも感じました。寛一郎さんご自身がいま「接続してみたい」と思うものはありますか?
なんだろう……。過去ではないし、未来も違う……。ありきたりかもしれませんが「自分自身」との「接続」ですかね。喧騒(けんそう)の中に身を置いていると、つい、心の中にある感情を置き去りにしてしまいます。でも、本当はどうしたいのか。何をしたくないのか。そんな声を聞き続けたい。
──「自分との接続」はどうやって行っていますか?
散歩とドライブですね。この二つは頭を空っぽにできるから。そうして、ようやく自分に意識を向けられます。
──その時間を確保するのが、いまは、なかなか難しい?
そうですね。実のところ設けたいとも思っていませんでした。そうやって考える隙間がないのは、幸せなことなんですよね。でも、これからは定期的に「接続」する時間も大切にしたいです。
photo: Tomoko Hagimoto / text: Mako Matsuoka / stylist: Dai Ishii / hair: Tsubasa / make: Tomohiro Muramatsu
映画『箱の中の羊』
出演:綾瀬はるか、大悟(千鳥)、桒木里夢(ルビ:くわきりむ)、清野菜名、寛一郎、柊木陽太、角田晃広、野呂佳代、星野真里、中島歩、余貴美子、田中泯
監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:坂東祐大
製作:フジテレビジョン、ギャガ、東宝、AOI Pro.
配給:東宝 ギャガ
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