映画『箱の中の羊』 寛一郎が語る、“喪失”と“接続”

Culture

2026.05.29

映画『箱の中の羊』 寛一郎が語る、“喪失”と“接続”

幼いわが子に先立たれて、2年。喪失感を抱えて生きる夫婦は、息子の姿をしたヒューマノイドを迎え入れる。是枝裕和監督が日本映画としては8年ぶりに脚本も手掛け、79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品された映画『箱の中の羊』は、大切な人を失った悲しみと、未来へ進もうとする人々を描く。そんな2人をそっと支える役柄を演じた寛一郎さんに、本作の魅力をたずねた。

Index

ヒューマノイドにも人間と同じ態度で接する

俳優の芝居を信頼する是枝監督の演出とは

自分自身との「接続」を大事にしたい



ヒューマノイドにも人間と同じ態度で接する


──まずは『箱の中の羊』への出演が決まった時の感想を教えていただけますか。

驚きましたねぇ。まさか自分が是枝裕和監督の作品に出る日がくるとは。主演を務めた千鳥の大悟さんの後輩役という貴重な体験ができるのも、うれしかったです。そばにいられるだけで幸せでした。
 
──寛一郎さんが演じた日高玄は甲本健介(大悟)が経営する工務店の従業員で野球仲間でもありました。ご自身では、どんな人物だと捉えていたのでしょうか?

フラットな人ですね。ヒューマノイドか人間かを意識せずに接する。その姿勢を体現するのが、彼の役割だと感じていました。

──張り詰めた日常を送る健介にとって、玄と過ごす時間は、“呼吸ができるひととき”にも見えました。

だとしたら、本望です。複雑な感情や事情が絡み合うなかで、玄は「誰も悪くないじゃないですか」と事実をさらっと言える。彼は物事を必要以上に深く捉えないし、かといって、寄り添う力が欠けているわけでもない。いつでも自然体なんですよ。

──大悟さんとはどんなふうに関係性を築かれたのですか?

カメラが回っていないところでも、よくしゃべっていましたね。広島での撮影で空き時間に大悟さんに「いま、何を考えています?」と聞いたんです。そしたら「番組のネタを探してんねん」と、打ち明けてくれました。そういう何げない会話を続けるうちに、自然と距離が縮まっていった気がします。



俳優の芝居を信頼する是枝監督の演出とは


──是枝監督とはどのようなコミュニケーションを重ねて、撮影に臨まれたのでしょうか?

まず、玄のバックグラウンドを丁寧に説明してくださいました。天涯孤独の彼は工務店で働く前は美容師だったそう。前職の名残として冒頭は金髪、後半ではパーマをかけています。ヘアスタイルに関しては僕もアイデアを出し、個性を際立たせました。ただ、「設定はそこまで意識せずに演じてほしい」とも言われました。


──印象に残っている演出は?

是枝監督は役者を自由にさせてくださいます。大悟さんとの初日で「好きにやってみて」とバトンを渡されました。でも、それって、一番難しい。俳優って、ある種“楽譜”に沿って演じるものなので、譜面が白紙になると途端に緊張します。

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