自分の感覚を信じて進む
──穂志さんが思うホラーの魅力は?
難しいですねぇ(笑)。実はホラー映画にほとんど触れてきておらず、長所を語るほどの知識も持ち合わせていません……。撮影に入る前にデイヴから、『チェンジリング』(2008)、『赤い影』(1973)、それから『永遠のこどもたち』(2007)の3作品を観るように言われました。いずれもごく普通に生きる人の日常の延長にあるできごとが描かれていて、心の深部に迫ってくるものがありましたね。本作でホラーの世界に入り込み、俳優として感じたことがあります。恐怖の要因は怪物や超常現象ではなく、むしろ人間ドラマにこそあるのだと思いました。
──そう感じた作品では、霊媒師・愛里を演じています。役を演じるうえで大変だった点は?苦労は……特にないかもしれません。デイヴがディテールを作り込んでくれていたので、魂が見えるのが当たり前だという感覚を抱けたんです。ただ、それでも途中で迷いが生じる瞬間もありました。その都度、疑問を投げかけてイメージを共有してもらっていましたね。彼の頭の中がのぞけたような気がして楽しかったです。
──劇中では「この世に執着を残したまま旅立つと、霊だけが残る」と説明する一幕が印象的でした。この作品は“執着”という感情がひとつのテーマにもなっているように感じます。穂志さんご自身が、いま大切にしている“こだわり”はありますか?自分の感性や感覚をもう一度信じることです。愛里として生きていた間は、世界観が明確な人たちが側にいたのもあって、研ぎ澄まされている感じがありました。そこから離れて過ごすうちにどんどんぼやけていき、ときめかないものも「好き」と口にしていたほど。そんななか、世界最大級の複合型コンベンション&フェスティバル「サウス・バイ・サウスウエスト 2026」でのワールドプレミアで再会したデイヴのブレない姿を目の当たりにして、ハッとなったんです。
──揺さぶられたんですね。そうですね。自分軸をしっかりと持つ姿と信念に共感したのを思い出したんです。その直前の私は、本音としては受け入れられないものでも一旦は「好き」と言ってみて、視野を広げてみようというフェーズにありました。でも、それを続けるうちに心から求めるものが分からなくなっていた。今、振り返ると、この状態は私にとっての恐怖体験かもしれません。“輪郭”や“境界線”をゆがめてまで迎合する理由はなかったんですよね。
──信頼のおけるクリエイターとの交流によって“輪郭”がくっきりしてきたいま、表現者としてどんな道を歩んでいきたいですか?志を共にできる人たちとものづくりをしていきたいです。それを判断できるようになるには直感を磨く必要があるので、いろんな経験を積みたいです。
──交流と経験で感受性を高めていく?そうですねぇ……、あ、待って、雑談が始まっちゃう(笑)。
──どうぞ!最近ゆっくり歩くようにしています。行動から感情を作るという演技のテクニックを応用させているんですけれど、スピードを落とすと穏やかな気持ちになれるんです。そうすると周囲を見渡す余裕ができ、視界が開ける感覚がありました。お金をかけて何かを経験するより、のんびり散歩をするという些細(ささい)な動きこそが糧となり、創造力を育むのではないかと思っています。とはいえ、つい3日前に始めたばかりなので(笑)。これからどんなふうに変わるかを見つめていきたいです。

photo: Tomoko Hagimoto text:Mako Matsuoka
映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』
© 2025 Signal181, Inc. All rights reserved.
配給: TOHO NEXT
https://neverafterdark.toho-movie.jp/
ヘアメイク:渡嘉敷愛子
スタイリスト:髙山エリ
ドレス¥30800、パンツ¥30800(共にコトハヨコザワ/オン・トーキョー ショールーム)
ヴィンテージのリング[左手]¥11000 [右手]¥8690(共にフィズ)
パンプス¥58300(カチム) ※全て税込価格
【問い合わせ先】
•オン・トーキョー ショールーム 03-6427-1640
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