イタリア・フィレンツェのシニョーリア広場に1337年に建てられた歴史的建造物、メルカンツィア宮殿内にあるパラッツォ グッチにて、アーティスティック・ディレクターであるデムナのキュレーションによる新たなエキシビション「Gucci Storia」が開催されている。
本エキシビションのコンセプトは、「美術館の中の美術館」。それぞれに異なる世界観をもつ空間が連なり、訪れる人々を多層的な体験へと導く構成になっている。展示室は、ファーストフロア(2階)とセカンドフロア(3階)を合わせた計9ルーム。各空間には独自の雰囲気とリズムが息づき、空間と物語の移ろいを通じて、「グッチ」が持つ多様なアイデンティティを体現している。

最先端の画像生成技術と伝統的な織物芸術の融合によるタペストリーが、「グッチ」の105年にわたる歴史を象徴的に描き出している。タペストリーは四つのシーンで構成されており、ロンドンのホテル ザ・サヴォイでポーターとして働いていたブランド創設者 グッチオ・グッチの若かりし姿から、歴代のクリエイティブ・ディレクターたちの独自の美学と伝統の継承、そして「グッチ」の未来を形づくるデムナの姿へと続いている。

伝統的な肖像画ギャラリーの形式が取り入れられた空間に、「Gucci: La Famiglia」のヴィジュアルが展示されている。アーカイブと視覚的コードに対するデムナの継続的な探求に基づくこれらのヴィジュアルには、スプレッツァトゥーラ(イタリア流のエフォートレスなエレガンス)と洗練されたセンシュアリティが息づき、血縁を超えた家族として表現された人物たちの個性やたたずまいが、グッチの本質を浮かび上がらせている。
ポートレートを撮影したのは、写真家のキャサリン・オピー。Gucciness(グッチらしさ)を形づくる、多様な側面を映し出している。
蓄積・分類・観察によって構成される、自然史博物館の資料庫に着想を得た展示室。数々の引き出しの中には、テニスバッグやシェービングキット、スカーフなど、「グッチ」が生み出してきた独創的なアイテムが、ユニークなオブジェとともに収められている。
まるでタイムカプセルのようなこの展示室は、創造のインスピレーションが静かに息づく秘密の場所を想起させ、あえて規則性を持たせずに並べられた品々が、「グッチ」の美学の広がりを表現している。
デムナによる「グッチ」のヴィジョンを映像で紹介するシネマルーム。コレクションの映像やショートフィルムが、順次上映されている。映画館を思わせる空間は深い赤のカラーで統一されており、重厚なベルベットカーテンが配されている。
デムナが撮影した「Generation Gucci」広告キャンペーンのヴィジュアルによるインスタレーションを展開。「グッチ」の105年にわたる歴史を彩ってきたコードを表現しながら、過去・現在・未来が交錯するブランドの世界観を描き出している。また、デムナによる初のファッションショー「Gucci Primavera」開催に先立ってつづられたデムナ本人の手紙が展示されるなど、彼のブランドに対するヴィジョンの一端を垣間見ることができる。
異なる時代と美学、伝統と革新が対話するようなこの展示室は、二つの空間で構成されている。洗練された技術と先進的なイノベーションを結びつけながら、「グッチ」の伝統から成る創造性や、ものづくりの営みの進化を示している。
一つ目の空間は、ブランド創設初期の職人たちを想起させる造りになっている。往年の道具類が無造作に置かれた作業台が設置され、壁面に配された棚には、「グッチ バンブー 1947」「グッチ ジャッキー 1961」「グッチ ホースビット 1955」ハンドバッグといったアイコニックなアイテムが、その誕生の軌跡をたどるかのように並んでいる。二つ目の空間は、現代的なラボラトリーを思わせるスペースに、素材の強度や耐久性をテストするロボットアームなどが配置され、フィレンツェ近郊にある製品の研究・開発拠点 「Gucci ArtLab」を象徴する革新的な技術が紹介されている。
「グッチ」のウェアをまとったマネキンが、時の中に浮遊するかのようにたたずんでいる。ウェアのディテールまで間近に見ることができるように、視線の高さに合わせて展示されており、60年に及ぶその歴史と美学を物語っている。
ブランドの神話は、目に見えるものや語られるものだけでなく、隠されたことや、噂(うわさ)としてささやかれるものによっても紡がれていく。ここでは、その知られざる一瞬を綿密に再現することで、多くの謎を投げかけている。
1980年代を彷彿(ほうふつ)とさせるインテリアで飾られたこの展示室は、オフィスの格式とリビングルームのような親密さを併せ持ち、かつてニューヨーク店の上階に存在した伝説的な場所「Galleria Gucci」の面影を宿している。限られた顧客のみが招かれた「Galleria Gucci」は、アート、カルチャー、そして究極のラグジュアリー体験が融合した招待制のショップ。希少なアイテムや一点物が用意されていたほか、顧客たちにはゴールドの鍵が渡されたと言われている。
来場者は、グッチオ・グッチの肖像や「グッチ クレスト」といった物語の断片を目にしながら、「グッチ」についてのゴシップ、憶測、数々の逸話に思いを巡らせ、神話、記憶、そしてミステリーが交差する空間を体験することができる。
最後に行き着くのは、白に包まれた幻想的なアルコーヴ。中央には、柱状の謎めいたオブジェが来場者へのオラクル(神託)としてたたずみ、インタラクティブなインターフェースを通じて、「グッチ」について、そして自身についての思索を促す3種類のメッセージを提示している。古代の儀式を想起させながらも遊び心あふれる体験が、「パラッツォ グッチ」を巡る旅の最後を飾っている。
photos: Gucci
text: Tomoe Tamura
まるで歩く芸術作品!【メットガラ2026】圧巻のレッドカーペットルック14選
2枚目狙いは装いにニュアンスを添える柄シャツ
「パラッツォ グッチ」
住所:Piazza della Signoria 10 Florence, Italy
営業時間:10:00〜19:00まで(イタリア現地時間・毎日開館) 最終入館は18:30
公式サイト:https://www.gucci.com/jp/ja/nst/palazzo-gucci