1980年代以降、現代美術シーンをリードしてきたジェフ・クーンズ。現在、エスパス ルイ・ヴィトン20周年およびフォンダシオン ルイ・ヴィトンの「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラム10周年に際して、エスパス ルイ・ヴィトン大阪で個展が開催されている。開幕の折、クーンズ自身も来日し、エスパス ルイ・ヴィトン東京でエクスクルーシブなアーティスト・トークも実施した。
「PAINTINGS AND BANALITY」と題した本展は、初期の代表作から後期の絵画作品までを紹介し、創作の変遷をたどる。「Banality」とは「凡庸さ」。クーンズは、家庭用品やバルーン、バスケットボール、ポップカルチャーのアイコンなどをアートに昇華させてきた。美術史の引用などを介して、凡庸だとされるモチーフの価値を変え、ハイカルチャーと大衆文化の境界を揺るがしている。作品は時に議論を巻き起こし、2019年には彫刻作品《ラビット》(1986)が約100億円で落札されたことも話題を呼んだ。
クーンズはアーティスト・トークで、自身がアートに導かれた道のりを振り返った。幼少期から絵を描くことが好きで、両親が「よく描けているね」と肩をポンと叩いてくれたことが原体験となったと語る。美術大学で初めて美術史の授業を受けた日に、大きな学びを得たという。
「アートにおいて、哲学や神学、階級など、人間のあらゆる分野が結びついていると気づいたのです。それは人生を変えるような経験でした。以来、朝目覚めるたびにわくわくして、アーティストとして人間として、よりよくなっていけると感じるようになりました」

成長の過程で、自分が何者かを考え、自分の存在を受け入れていった。やがて目線は自らの外へと向かっていく。
「ヒエラルキーのようなもの、自分を小さく感じさせるものを取り除こうとするなかで、あることに気づきます。本来、“判断”など存在しないのだと。文化は判断を下しません。判断をしているのは私たち自身であり、社会です」

クーンズはものの価値についてこう話す。
「世界にあるもの、人生にあるものはすべて、私たちに力を与えるために存在します。つながりを通して私たちを支え、私たちが人生により大きな意味を見いだすためにそこにあるのです」

本展ではキャリアを象徴するシリーズから厳選された7作品が観られる。それらは鑑賞者に向ける鏡となり、ものの価値や普遍的な概念について問いかけるだろう。
「制作はいつも直感的なプロセスで進めてきました。ただ自分の興味を追いかけるということです。真に関心を向けた時、周囲にどれほど膨大な情報があふれているかに気づきます。たとえば、ハチドリに興味を持つとします。すると、至るところにハチドリのイメージがあふれている。たとえばどこかに羽のような形や、玉虫色の輝きを見つけるかもしれない。自分の腕が身体の外側に伸びている様子を、鳥の翼のように感じるかもしれない。興味に集中すると、それはあなたを“普遍的な言葉”へとつないでいきます」

ジェフ・クーンズ
1995年、アメリカ・ペンシルバニア州生まれ。ニューヨーク近代美術館で職員として働いた後、ウォール街で商品先物取引のブローカーに転身。1980年にニューヨークで初めての個展を開催。世界各地の美術館に作品が収蔵されている。巨大なスタジオ兼ファクトリーを設立し、数十人の従業員と制作するスタイルも注目される。
ジェフ・クーンズ展「PAINTINGS AND BANALITY - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
大阪市中央区心斎橋筋 2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5階
会期:7月5日(日)まで
開館時間:12:00 - 20:00 休館日はルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準じる
入場無料
お問い合わせ先:0120-00-1854
https://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/Osaka

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©︎marie claire/text: Saya Tsukahara