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'美波'

美波

映画『MINAMATA』のジョニー・デップ相手役に抜擢、女優・美波とは?

女優、アーティストとして活躍をみせる美波が、映画『MINAMATA―ミナマタ―』でジョニー・デップの相手役に大抜擢され話題に。これまでに経験したことのない新境地を開いた。

映画好きの父の影響で役者を目指し、2000年に映画『バトル・ロワイアル』(深作欣二監督)でスクリーンデビューを果たす。2005年に野田秀樹演出の舞台「贋作・罪と罰」、2007年に蜷川幸雄演出舞台「エレンディラ」、蜷川実花監督の映画『さくらん』などに出演。2021年7月には帝国ホテルプラザにて個展を開催。現在は東京、パリ、ロサンゼルスを拠点に日、仏、英のトリリンガルを生かし国内外の様々な映画に出演している。そんな美波が、日本の四大公害病のひとつ「水俣病」をテーマにした映画『MINAMATA―ミナマタ―』(9月23日全国公開)でジョニー・デップ演じるユージンの妻役に抜擢された。

彼女がどうのようにして、ヒロイン役を手にしたのか?撮影中の秘話やフランスでの生活、自身のアート活動について語ってもらった。

(c) Larry Horricks

映画『MINAMATA―ミナマタ―』は日本の四大公害病のひとつを題材とする、社会的メッセージの強い作品です。ヒロイン役のオーディションを受けてみていかがでしたか?

ハードルが高い作品だと感じました。日本の公害病「水俣病」という大きな題材が映画化されるということやヒロイン役だということなど、色々な要素が詰まっていて正直、「ワォ!」って感じましたね。何度も何度もオーデイションを受けたけど、私のフランス語なまりの英語を監督が気に入ってくれなかったりして、なかなか決まらず・・・・。私はパリに滞在していたので、監督が住むイギリスへ行き、お芝居を見せたりして、ようやく決まりました。

ヒロイン役に決まった時は嬉しかったのでは?

それが、半分半分で(笑)。正直、大変なんじゃないかという思いの方が強かったですね。オーディションに受かってもちろん嬉しかったけど、受かるまでがすごく大変だったから。でも、演じきる覚悟はありました。

(c) Larry Horricks

オーディションに受かって、すぐに撮影地であるセルビアに飛んだとか?

そう。オーディションに受かってすぐに、心の準備をする間も無くセルビアで撮影に入ると言われて。これは大きな船に乗ったな、もう引き返せないから「進むしかない」という気持ちでした(笑)。

(c) Larry Horricks

役作りで苦労したことは?

100パーセント英語ですね。撮影に入る前まで、フランス語なまりが取れなくて英語を上手く喋れなかったから、監督がよく私を選んでくれたと思います。でも、後で私が演じたアイリーンさんご本人から、「全然フランス語なまりを感じなかったわ」と仰っていただいて、その時は、すごく嬉しかったですね。また、実在するアイリーンを演じるわけですから、ご本人に似せたほうがいいのか、どういう距離感を持てばいいのか、役に対してアプローチの方法をどうすればいいのか、考えました。それで、出た答えが、この映画は「水俣病」のこと、ジャーナリズムのこと、環境問題のことなどを世界に向けて発信する映画。だから、私の使命は、世界的なカメラマンを日本に連れてきて、水俣で起きている事実を世界に伝える“架け橋”。そこに集中しようと思いました。

(c) Larry Horricks

アイリーンさんからアドバイスはありましたか?

なかったです。というのも、アイリーンさんが撮影地のセルビアに来られた時には、撮影がすでに始まっていました。時間が無かったにせよ、私はある程度、役を作り上げていたので、ご本人に会うことで、違いを感じたりして迷うのではないかと思って、あえて距離を持ちました。アイリーンさんに撮影の後にお会いしたのですが、ご本人は当時と何も変わっていないんじゃないかな?と思うんです。本当に真っ直ぐに突き進むエネルギッシュな方でした。裏表もなくて、とても好きです。

(c) Larry Horricks

撮影中のジョニー・デップさんはどんな方でしたか?印象に残っているエピソードは?

素晴らしい方でした。本当に優しくて、みんなに愛があって、そして全員に愛されていて。時々、何て言うんだろう、子供っぽいところもあって。私は、自分の役のアイリーンの目線で、そんなジョニーの姿を可愛いなと思って見ていました。仕事とか、お芝居について2人で話せる時間もいっぱいありました。私が何をしても全部受け止めてくださって。後先考えず自由に芝居ができて、1番いい状態にしてくださった。それから、私は実在のユージンに会ったことはないのですが、演技する中でユージンとアイリーンふたりの化学反応みたいなものを感じて、それがすごく贅沢な時間でした。

撮影地でのリフレッシュ方法は?

撮影が結構ハードだったので、お休みの日は寝てました(笑)。そんなに外に出歩いたりはしなかったかな。ちょっとだけ、動物園に行ったり、モンテネグロでは地中海の美味しいご飯を食べたり。私はすごく旅が好きで、訪れた国の朝の市場へ行くのが恒例なんです。なので、撮影地でもマルシェに行ったりしました。でもやっぱりリフレッシュはマッサージと、温かいお風呂に入ることが一番です!(笑)

映画『MINAMATA―ミナマタ―』を通して感じたことは?

この映画の素晴らしいところは、エンターテインメントとしてちゃんと成立しているところですね。社会問題、環境問題などのメッセージを発信しながら、ジョニー・デップがプロデューサーと主演を務めることで、エンターテインメントとしても成立していると思います。世界中にいるジョニー・デップファンにも、水俣で起こった「水俣病」という公害病を通して、日本を見てもらうきっかけにもなっている。

(c) Larry Horricks

最初は、「どうして日本の問題なのに日本人が作らないの?」と思ったりしました。だけど本当は逆で、海外の方に日本の問題を取り上げて作ってもらうのは、それだけ距離が近くなったということですよね。もう、これは私たちだけの問題じゃないよって。だからと言って、日本を悪く描いている訳ではないし、「水俣病」の問題だけに収まっていない作品です。今起きているコロナによるパンデミックとか、様々な問題にフィットする映画だと思います。この作品で、「情熱をもって訴える人間」の美しさを感じました。

(c) Larry Horricks

すごく印象に残っているのは、水俣病患者の智子をお風呂に入れるシーン。実際にユージンが撮った写真と、そのお風呂のシーンの映画の映像がそっくりなんです。撮影中に現場にいたので、思わず鳥肌が立ちました。ユージンというカメラマンは、「静」と「動」の、「静」を引き出す人で、そこにある「影」をちゃんと映し出す人なんだと、あの時思いました。この写真を撮影するまでのプロセスも、映画を通して知ってもらえるのがいいですね。

(c) Larry Horricks

フランスでの生活から影響を受けることはありますか?

小さい頃からフランスに行くことはあっても、住んだことがなくて。住み始めたのが2014年からなんです。フランスって自由で、みんな自分らしく生きていて、とにかく「自己肯定感がすごい!」。フランスに住み始めてやっと、「自分が好きで何が悪いの?」って言えるようになった(笑)。思っていることを言葉に出して、ディスカッションして発信していく文化の国なので、自分の意思を丁寧に噛み砕いて伝えられるように鍛えられたかな(笑)。自分自身でいる事に居心地が良くなったし、楽になりました。

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女優の仕事以外で、アート活動を始めたきっかけは?

役者って、監督が求めていることを叶えるように努力する仕事なので、自分でゼロから作り上げることはできないんです。表現をすることが好きな私にとっては、真っさらなキャンバスに絵を描くことが心の拠り所になっています。高校を卒業してすぐに絵を描き始めたんですが、最初はイメージしている絵が全然描けなかったんです。独学なので時間がかかったんですが、少しずつ技術も身に付いてきて、イメージする絵が描けるようになってくると、どんどん絵を描くことが好きになってきた。「自己肯定感」がぐっと上がりました(笑)。今は、自分の表現に限界を持たずに描いていきたいなと思っています。演じる上でも限界を決めずに取り組んでいきたいです。

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インタビュー中は笑顔と笑い声に包まれて、終始ハッピーオーラ全開の美波。「自己肯定感」をアップさせたフランスでの生活、そして、演じることだけに留まらず自身を表現し続けるアート活動など、常に前向きで豊かな経験が、彼女の魅力をいっそう引き立てているのかもしれない。今、世界を舞台に、大きく飛躍する美波から目が離せない。

映画『MINAMATA』 9月23日(木・祝)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開
製作:ジョニー・デップ 監督:アンドリュー・レヴィタス 脚本:デヴィッド・ケスラー
原案:写真集「MINAMATA」W.ユージン・スミス、アイリーンM.スミス(著)
出演:ジョニー・デップ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、 and ビル・ナイ 音楽:坂本龍一 © 2020 MINAMATA FILM, LLC

公式サイト:longride.jp/minamata/

プロフィール 美波(Minami) 1986年9月22日、東京都生まれ。日本人の母とフランス人の父を持つ。 『リービング・ラスベガス』を手掛けたマイク・フィギス監督の新作『マザー・タング(原題) / Mother Tongue』の出演が決まっている。


Interview: Riko Obayashi & Miyuki Kikuchi / text: Miyuki Kikuchi

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